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ミアと本当の夫婦になったのだから、二人で過ごす時間があっても良いはずだ!
そう思うとクリストファーはムカムカしていた。

そう思うと激務で疲れ切っている国王からとった一週間のようにすぐに邪魔が入ってしまう。

「早く解決するしなければ一生このままだ…」
クリストファーは決意した。
ミルアージュと幸せな時間を過ごすために今回は徹底的に潰すと。

少しくらい暴君となってもミアから責められる事はないだろう。


領主から情報はもう得られない。
ならば第三部隊のスパイを炙り出すしかない。

アルトとミアが絡むとやりにくい…
ミルアージュもアルトも第三部隊の誰かが今回の事件絡んでいるのはわかっているはずだ。

ミアは大丈夫と言ったがその言葉を鵜呑みにするのは危険だ。
戦争していた時でさえ敵の兵が死んだのも自分のせいだと責めるのだから。

ワインを渡す事ができたのはこの王城に入る前のはずだ。
領地からここへの移送中に渡したとしか考えられなかった。

王城内で裁判を控えた領主に会うにも物を持ち込むにも必ず二名以上で中身を調べる。
記録係も共にいる。

逃亡の恐れもあり、見張りも四人配置していた。
いくらなんでも4人ともキュラミールの手のものだとは考えにくい。
第三部隊は貴族からのいじめや差別でできた部署だ。

お金で動いていたらまだ良いが、自主的に協力したのではなく人質を取られているなら尚更厄介だ。
ミアが傷つく…

だが、ミアにバレずにこっそりなんて無理だろうな。

ハァーとため息しか出ない。

領主亡き今、キュラミールを潰すためにはそのスパイを引っ張り出すしかない。
真実がそこで明らかになってしまうのはできれば避けたい。

「国を混乱させてもキュラミールを先に潰しておけばよかった。」
クリストファーはブツブツと後悔を口にしていた。

「クリストファー様、いくら人払いをしているとはいえ、迂闊な発言は控えてください。」
部屋の中でクリストファーを待っていたアビーナルが冷たい視線を送った。

「心の声が漏れるくらい辛い立場なんだ、許せ。」
クリストファーはドカッとソファに座った。

「私が許す許さないの問題ではないでしょう?かのお方はこの国の重鎮ですよ、戯言では済まされません。わかりやすいキュラミール隊長とは違うのですよ。」
早馬で戻されたアビーナルは疲れがありありと出ていた。
だからなのかいつもより毒舌だ。

迂闊な発言も多く、すぐに表情に出る第二部隊キュラミール隊長はかのお方と呼ばれるキュラミール公爵の次男だ。

父であるキュラミール公爵は公爵領におり王城にいないにも関わらず、権力は王家すら抑えが効かないほど大きなものだった。

「避けては通れない道だ。これ以上ミアを苦しませるものはいらない。」

「対峙するという事ですか?」

「そうだ、いつまでも待てない。」
ミアと邪魔されず、イチャイチャする時間が欲しい。
真顔のクリストファーは心の中でそう思ったが、アビーナルにそれを言うとミアにチクられるため口には出して言わなかった。

「アビーナル、領地の問題もあるが、手伝ってくれるか?」

「…そのつもりで呼び戻したのでしょう?過労死したら妻とお腹の子は守ってくださいよ。」
アビーナルは不敬と言われても仕方がないくらい大きなため息をついた。

「ああ、もうすぐ生まれるのだったな。生まれたらたっぷり休みをやるからそれまでに終わらせるぞ。」

「はいはい、期待せずにたっぷりの休日を待っています。」
アビーナルは投げやりに答えた。

「アンロックに連絡をとりますか?」
真顔に戻したアビーナルはクリストファーに聞いた。

「ああ、早急に頼む。」
クリストファーも内容も聞かずに了承を伝えた。
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