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「3カ国同盟はこれで成立とする。」
レンドランドがそう宣言し、レンドランド、クリストファー、ブランはそれぞれの国の代表として書類にサインした。
本来なら大々的に国を挙げて調印するような大きな同盟のはずだ。
それなのにアンロックが用意した部屋は目立たない会議室で、各国の王族とそれぞれの臣下が数名しかいない寂しい調印となった。
それでもレンラグス、ルーマンからの使者の顔にも安堵の表情が浮かんでいる。
この3カ国同盟が公式に発表されれば、世界の勢力図が一変にひっくり返るだろう。
アンロックはもちろん、ルーマン、レンラグス共に国力が下がっているとはいっても世界からみれば大国なのだから。
「くくっ、同盟の動きが早すぎてレーグルトも察知できていないぞ。気づいた時の反応が楽しみだ。」
クリストファーは意地悪く笑った。
「それにしても次の日に来いなんてお前も無茶苦茶だ。」
ブランは疲労感を隠せないまま、苦笑いした。
「当たり前だ、無駄な時間は使いたくない。無理するだけの成果はあっただろう?」
クリストファーはニヤリとブランに笑いかけた。
ブランは真顔で頷いた。
「ああ、こんな提案をされるなんて思ってもいなかったから、なんと言ったらいいか…本当にありがとう。」
ブランはクリストファーに頭を下げた。
「礼を言うならレンドランド王とミアに言え。発案はレンドランド王だ。私は反対だったんだ。」
プイッとクリストファーは顔を背けた。
「お前も相変わらずだな。」
ブランは残念そうな目でクリストファーをみた。
ルーマンにとってもこの3カ国同盟は大きな意味のあるものだ。
それに反対するなんて国益など何も考えていない。
ブランもミルアージュをチラッと見た。
クリストファーが反対をするのなら原因はミルアージュだろう。
「レンドランド王と話せと言ってくれたミルアージュにも感謝している。だが、大丈夫か?今回の同盟の要だが…」
「大丈夫かはわからないが、ミアは同意している。ミアの存在がなかったとしても同盟は結べた筈なのに。」
「ああ、だが、ミルアージュの存在により同盟が強固なものとなる。なんたって全ての国の王族であり、不公平感は生まれにくいだろう。」
同盟主を誰とするか…
ミルアージュがいなければ、アンロックのレンドランドがそれを担う事になっただろう。
だが、ルーマン、レンラグスから見れば、レンドランドがアンロックに有利に動いていると反発される可能性がある。
特にレンラグスは国交すらなかった国だ、事を進めるのが難しい場面も多く出てくることが予測される。
レンラグスで人気の高かった元王女カミーラの娘であり、アンロック王女でルーマン王太子妃のミルアージュがそれを担えば、反発はある程度抑えられるだろう。
「レンドランド王は穏健派だと聞いていたが、ミルアージュに権力を譲るなんて思いもしなかった。アンロックでの立場は大丈夫か?」
「さあな、何とかするだろう。ミアへの償いのつもりだろうが、余計な事をする。」
ギリギリとクリストファーは拳を握る。
「悪評の事か?ずっとレンドランド王が罠に嵌めたと思っていた。違ったんだな。」
仲良く話しているレンドランドとミルアージュを見つめながらブランはふぅとため息をついた。
「…ミアにそれ言うと半殺しにされるぞ。ミアはレンドランド王を大切にしているからな。」
そう言いながらもブランを心配している訳ではない。
ミルアージュを不快にしたくないというクリストファーの思いは態度にありありとでており、ブランにも伝わっていた。
「ああ、わかっている。アンロックへの復讐を持ちかけた時に経験した。あの時のミルアージュは本当に怖かった。」
「だろうな、今生きているだけで儲けものだ。本当にアンロックに攻め入るつもりだったのか?」
「…あの当時はアンロックにかなり恨まれていたし、レンラグスを滅ぼすつもりだと思っていたんだ。レンラグスがアンロックへの行いを考えれば当たり前だけどな。」
ブランは自分の父親の愚かさを嫌悪していた。
だが、アンロックへの仕打ちを考えるとよくアンロックがレンラグスを攻めいるのは当然の流れだった。
アンロックの成長は著しい。
小国だったアンロックが世界トップレベルの大国になるのは間違いなかった。
国内が落ち着けば、レンラグスに目が向く。
レンラグスにしかない石や草はアンロックにとっても必要なもの。
何より今までの恨み。
両方が目的が達成できる状況となれば、手を出さないような馬鹿な奴はいない。
レンラグスの滅亡。そのシナリオしかブランには見えなかった。
それならば…今まだ安定していず長期の戦争ができないアンロックとなら早めに終結させる為の条約を結べるかもしれない。
レンラグスの滅亡を避けられる道を導き出せるかもしれない。
ブランはそれしか考えられなくなっていた。
だから、アンロックに冷遇されていたミルアージュに目をつけた。
なのに…復讐を持ちかけた時に言われたミルアージュの言葉はブランに衝撃を与えた。
「私は王族として恥じる行為はしない。過去に何があったとしても今、レンラグスがアンロックの脅威とならなければ攻めることはない。」
復讐の為に国を売らないと意思の強い瞳ではっきりと言われた。
そして、レンラグスが何もしなければアンロックはレンラグスに手を出す事もないという脅迫を受けた。
だが、ミルアージュのその脅迫はレンラグスの存続を保証してくれたような安心感を与えた。
実際、アンロックにブランがミルアージュにした提案が伝わる事はなく、レンラグスはアンロックに滅ぼされる事もなかった。
あの時、ブランの中でミルアージュという存在の認識が変わった瞬間だった。
レンドランドがそう宣言し、レンドランド、クリストファー、ブランはそれぞれの国の代表として書類にサインした。
本来なら大々的に国を挙げて調印するような大きな同盟のはずだ。
それなのにアンロックが用意した部屋は目立たない会議室で、各国の王族とそれぞれの臣下が数名しかいない寂しい調印となった。
それでもレンラグス、ルーマンからの使者の顔にも安堵の表情が浮かんでいる。
この3カ国同盟が公式に発表されれば、世界の勢力図が一変にひっくり返るだろう。
アンロックはもちろん、ルーマン、レンラグス共に国力が下がっているとはいっても世界からみれば大国なのだから。
「くくっ、同盟の動きが早すぎてレーグルトも察知できていないぞ。気づいた時の反応が楽しみだ。」
クリストファーは意地悪く笑った。
「それにしても次の日に来いなんてお前も無茶苦茶だ。」
ブランは疲労感を隠せないまま、苦笑いした。
「当たり前だ、無駄な時間は使いたくない。無理するだけの成果はあっただろう?」
クリストファーはニヤリとブランに笑いかけた。
ブランは真顔で頷いた。
「ああ、こんな提案をされるなんて思ってもいなかったから、なんと言ったらいいか…本当にありがとう。」
ブランはクリストファーに頭を下げた。
「礼を言うならレンドランド王とミアに言え。発案はレンドランド王だ。私は反対だったんだ。」
プイッとクリストファーは顔を背けた。
「お前も相変わらずだな。」
ブランは残念そうな目でクリストファーをみた。
ルーマンにとってもこの3カ国同盟は大きな意味のあるものだ。
それに反対するなんて国益など何も考えていない。
ブランもミルアージュをチラッと見た。
クリストファーが反対をするのなら原因はミルアージュだろう。
「レンドランド王と話せと言ってくれたミルアージュにも感謝している。だが、大丈夫か?今回の同盟の要だが…」
「大丈夫かはわからないが、ミアは同意している。ミアの存在がなかったとしても同盟は結べた筈なのに。」
「ああ、だが、ミルアージュの存在により同盟が強固なものとなる。なんたって全ての国の王族であり、不公平感は生まれにくいだろう。」
同盟主を誰とするか…
ミルアージュがいなければ、アンロックのレンドランドがそれを担う事になっただろう。
だが、ルーマン、レンラグスから見れば、レンドランドがアンロックに有利に動いていると反発される可能性がある。
特にレンラグスは国交すらなかった国だ、事を進めるのが難しい場面も多く出てくることが予測される。
レンラグスで人気の高かった元王女カミーラの娘であり、アンロック王女でルーマン王太子妃のミルアージュがそれを担えば、反発はある程度抑えられるだろう。
「レンドランド王は穏健派だと聞いていたが、ミルアージュに権力を譲るなんて思いもしなかった。アンロックでの立場は大丈夫か?」
「さあな、何とかするだろう。ミアへの償いのつもりだろうが、余計な事をする。」
ギリギリとクリストファーは拳を握る。
「悪評の事か?ずっとレンドランド王が罠に嵌めたと思っていた。違ったんだな。」
仲良く話しているレンドランドとミルアージュを見つめながらブランはふぅとため息をついた。
「…ミアにそれ言うと半殺しにされるぞ。ミアはレンドランド王を大切にしているからな。」
そう言いながらもブランを心配している訳ではない。
ミルアージュを不快にしたくないというクリストファーの思いは態度にありありとでており、ブランにも伝わっていた。
「ああ、わかっている。アンロックへの復讐を持ちかけた時に経験した。あの時のミルアージュは本当に怖かった。」
「だろうな、今生きているだけで儲けものだ。本当にアンロックに攻め入るつもりだったのか?」
「…あの当時はアンロックにかなり恨まれていたし、レンラグスを滅ぼすつもりだと思っていたんだ。レンラグスがアンロックへの行いを考えれば当たり前だけどな。」
ブランは自分の父親の愚かさを嫌悪していた。
だが、アンロックへの仕打ちを考えるとよくアンロックがレンラグスを攻めいるのは当然の流れだった。
アンロックの成長は著しい。
小国だったアンロックが世界トップレベルの大国になるのは間違いなかった。
国内が落ち着けば、レンラグスに目が向く。
レンラグスにしかない石や草はアンロックにとっても必要なもの。
何より今までの恨み。
両方が目的が達成できる状況となれば、手を出さないような馬鹿な奴はいない。
レンラグスの滅亡。そのシナリオしかブランには見えなかった。
それならば…今まだ安定していず長期の戦争ができないアンロックとなら早めに終結させる為の条約を結べるかもしれない。
レンラグスの滅亡を避けられる道を導き出せるかもしれない。
ブランはそれしか考えられなくなっていた。
だから、アンロックに冷遇されていたミルアージュに目をつけた。
なのに…復讐を持ちかけた時に言われたミルアージュの言葉はブランに衝撃を与えた。
「私は王族として恥じる行為はしない。過去に何があったとしても今、レンラグスがアンロックの脅威とならなければ攻めることはない。」
復讐の為に国を売らないと意思の強い瞳ではっきりと言われた。
そして、レンラグスが何もしなければアンロックはレンラグスに手を出す事もないという脅迫を受けた。
だが、ミルアージュのその脅迫はレンラグスの存続を保証してくれたような安心感を与えた。
実際、アンロックにブランがミルアージュにした提案が伝わる事はなく、レンラグスはアンロックに滅ぼされる事もなかった。
あの時、ブランの中でミルアージュという存在の認識が変わった瞬間だった。
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