わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

文字の大きさ
173 / 252

173

しおりを挟む
「3カ国同盟はこれで成立とする。」
レンドランドがそう宣言し、レンドランド、クリストファー、ブランはそれぞれの国の代表として書類にサインした。

本来なら大々的に国を挙げて調印するような大きな同盟のはずだ。

それなのにアンロックが用意した部屋は目立たない会議室で、各国の王族とそれぞれの臣下が数名しかいない寂しい調印となった。

それでもレンラグス、ルーマンからの使者の顔にも安堵の表情が浮かんでいる。

この3カ国同盟が公式に発表されれば、世界の勢力図が一変にひっくり返るだろう。

アンロックはもちろん、ルーマン、レンラグス共に国力が下がっているとはいっても世界からみれば大国なのだから。

「くくっ、同盟の動きが早すぎてレーグルトも察知できていないぞ。気づいた時の反応が楽しみだ。」
クリストファーは意地悪く笑った。

「それにしても次の日に来いなんてお前も無茶苦茶だ。」
ブランは疲労感を隠せないまま、苦笑いした。

「当たり前だ、無駄な時間は使いたくない。無理するだけの成果はあっただろう?」
クリストファーはニヤリとブランに笑いかけた。

ブランは真顔で頷いた。

「ああ、こんな提案をされるなんて思ってもいなかったから、なんと言ったらいいか…本当にありがとう。」

ブランはクリストファーに頭を下げた。

「礼を言うならレンドランド王とミアに言え。発案はレンドランド王だ。私は反対だったんだ。」

プイッとクリストファーは顔を背けた。

「お前も相変わらずだな。」
ブランは残念そうな目でクリストファーをみた。

ルーマンにとってもこの3カ国同盟は大きな意味のあるものだ。
それに反対するなんて国益など何も考えていない。

ブランもミルアージュをチラッと見た。

クリストファーが反対をするのなら原因はミルアージュだろう。

「レンドランド王と話せと言ってくれたミルアージュにも感謝している。だが、大丈夫か?今回の同盟の要だが…」

「大丈夫かはわからないが、ミアは同意している。ミアの存在がなかったとしても同盟は結べた筈なのに。」

「ああ、だが、ミルアージュの存在により同盟が強固なものとなる。なんたって全ての国の王族であり、不公平感は生まれにくいだろう。」

同盟主を誰とするか…

ミルアージュがいなければ、アンロックのレンドランドがそれを担う事になっただろう。

だが、ルーマン、レンラグスから見れば、レンドランドがアンロックに有利に動いていると反発される可能性がある。
特にレンラグスは国交すらなかった国だ、事を進めるのが難しい場面も多く出てくることが予測される。

レンラグスで人気の高かった元王女カミーラの娘であり、アンロック王女でルーマン王太子妃のミルアージュがそれを担えば、反発はある程度抑えられるだろう。

「レンドランド王は穏健派だと聞いていたが、ミルアージュに権力を譲るなんて思いもしなかった。アンロックでの立場は大丈夫か?」

「さあな、何とかするだろう。ミアへの償いのつもりだろうが、余計な事をする。」
ギリギリとクリストファーは拳を握る。

「悪評の事か?ずっとレンドランド王が罠に嵌めたと思っていた。違ったんだな。」
仲良く話しているレンドランドとミルアージュを見つめながらブランはふぅとため息をついた。

「…ミアにそれ言うと半殺しにされるぞ。ミアはレンドランド王を大切にしているからな。」
そう言いながらもブランを心配している訳ではない。
ミルアージュを不快にしたくないというクリストファーの思いは態度にありありとでており、ブランにも伝わっていた。

「ああ、わかっている。アンロックへの復讐を持ちかけた時に経験した。あの時のミルアージュは本当に怖かった。」

「だろうな、今生きているだけで儲けものだ。本当にアンロックに攻め入るつもりだったのか?」

「…あの当時はアンロックにかなり恨まれていたし、レンラグスを滅ぼすつもりだと思っていたんだ。レンラグスがアンロックへの行いを考えれば当たり前だけどな。」





ブランは自分の父親の愚かさを嫌悪していた。
だが、アンロックへの仕打ちを考えるとよくアンロックがレンラグスを攻めいるのは当然の流れだった。

アンロックの成長は著しい。
小国だったアンロックが世界トップレベルの大国になるのは間違いなかった。

国内が落ち着けば、レンラグスに目が向く。
レンラグスにしかない石や草はアンロックにとっても必要なもの。
何より今までの恨み。

両方が目的が達成できる状況となれば、手を出さないような馬鹿な奴はいない。

レンラグスの滅亡。そのシナリオしかブランには見えなかった。

それならば…今まだ安定していず長期の戦争ができないアンロックとなら早めに終結させる為の条約を結べるかもしれない。
レンラグスの滅亡を避けられる道を導き出せるかもしれない。

ブランはそれしか考えられなくなっていた。

だから、アンロックに冷遇されていたミルアージュに目をつけた。

なのに…復讐を持ちかけた時に言われたミルアージュの言葉はブランに衝撃を与えた。


「私は王族として恥じる行為はしない。過去に何があったとしても今、レンラグスがアンロックの脅威とならなければ攻めることはない。」

復讐の為に国を売らないと意思の強い瞳ではっきりと言われた。

そして、レンラグスが何もしなければアンロックはレンラグスに手を出す事もないという脅迫を受けた。

だが、ミルアージュのその脅迫はレンラグスの存続を保証してくれたような安心感を与えた。

実際、アンロックにブランがミルアージュにした提案が伝わる事はなく、レンラグスはアンロックに滅ぼされる事もなかった。

あの時、ブランの中でミルアージュという存在の認識が変わった瞬間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...