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ミルアージュが何を考えてその提案をしているのかわからない者たちは混乱していた。
ニコニコと笑うミルアージュに言葉を返す者はいない。
この同盟の立役者となるミルアージュに盾突いて自国の不利な状況に巻き込まれるだけは避けたいという思惑が見え隠れする。
ゴクリと唾を飲み、レンラグス大臣は口を開く。
「ミルアージュ妃様…それは我が国の問題ですので何とぞお許しください。」
大臣はミルアージュに深々と頭を下げる。
汗が流れるのを見るとかなり緊張しているのが皆に伝わっていた。
「そう、それがレンラグスの結論で良いのね。ブラン次期国王?」
ミルアージュの機嫌が悪くなったというように急に声が低くなった。
「ちなみにマリアの嫁ぎ先はどこが良いと考えている?」
ブランはミルアージュに聞いた。
ブランはわざとに難しい顔をしている。ミルアージュの意図は伝わっているようだ。
「フフッ、マリア王女と護衛のムランドが良いと思うのよね。年齢もちょうど良いくらいだわ。仲良かったもの。」
ミルアージュはブランにそう返した。
「それは…いくらなんでも身分差がありすぎます!」
大臣は慌ててブランの答える。
「あら?王族の会話に口を挟むような無礼者が国代表なんてどうなのかしら。」
ミルアージュはキッと大臣を睨みつけた。
ミルアージュの圧に耐えられる者などこの世に少ない。
クリストファーやアンロックの軍部大将ですら怯むのだ、こんな文官出身の大臣など問題外。
大臣は倒れそうなくらい真っ青になった。
「我が国の者の無礼を謝る。ただ護衛との結婚など前代未聞だ。ここでは決定はできない。国に持ち帰らせてくれ。」
ブランは困ったような顔をしながら大臣の前に立った。
「いいわよ。もしうまくいったなら、こちらから信用できる商人を派遣してあなたの国特産を販売できるルートと人の確保を約束する。まだ概算だけど、取引価格はこのくらいを考えていてレンドランド国王の了承は得ているわ。」
ミルアージュはまだ真っ青になっている大臣に書状を渡した。
その書状を見た大臣とブランは目を大きく見開いた。
「こんな金額になるなんて信じられない…」
ブランも声を漏らした。
レンラグスは内戦が続いた事もあり、国力は下がり民は明日の生活にも困窮していた。
目先の利益に囚われて販売ルートを開拓する余裕がなかったのだ。
ルーマン、アンロックとは正式に国交はなく、他国から来た商人に言い値で特産を販売していた。
レンラグスで取れる石や薬草はかなり需要が高いものだ。
かなり高価で売買される。
アンロックやルーマンに輸入される時にはレンラグスから出された時の何百倍もの価格に跳ね上がっていた。
内戦で危険エリアであったレンラグスとの取引は真っ当な商人はしない。
だからこそ、そんな無茶苦茶な取引が行われてきたのだった。
その書状に目を通した大臣はブランに目をやり、お互いの意思を確認した。
マリアを他国に嫁がせる恩恵よりもミルアージュの意向に添い、この取引を成功させる方が得策だとわかったから。
「マリアの件、了承しよう。他国の王族への嫁入りはさせないと約束をする。」
ブランはミルアージュの意に沿う事を約束した。
「そう、よかったわ。マリア王女は王族の器ではないもの。あんな可愛らしい方に王族としての苦労をかけるなんて忍びなかったのよ。」
ミルアージュを知らない大臣はその言葉を嫌味として受け取った。
だが、ブランの目に潤んでいた。
マリアが王族の器ではない…
これはブランもマリア自身もよくわかっている事。
自殺未遂を起こすほど追い詰められていた妹を救える道が開けた。
ブランは心の中でミルアージュに感謝するしかなかった。
ニコニコと笑うミルアージュに言葉を返す者はいない。
この同盟の立役者となるミルアージュに盾突いて自国の不利な状況に巻き込まれるだけは避けたいという思惑が見え隠れする。
ゴクリと唾を飲み、レンラグス大臣は口を開く。
「ミルアージュ妃様…それは我が国の問題ですので何とぞお許しください。」
大臣はミルアージュに深々と頭を下げる。
汗が流れるのを見るとかなり緊張しているのが皆に伝わっていた。
「そう、それがレンラグスの結論で良いのね。ブラン次期国王?」
ミルアージュの機嫌が悪くなったというように急に声が低くなった。
「ちなみにマリアの嫁ぎ先はどこが良いと考えている?」
ブランはミルアージュに聞いた。
ブランはわざとに難しい顔をしている。ミルアージュの意図は伝わっているようだ。
「フフッ、マリア王女と護衛のムランドが良いと思うのよね。年齢もちょうど良いくらいだわ。仲良かったもの。」
ミルアージュはブランにそう返した。
「それは…いくらなんでも身分差がありすぎます!」
大臣は慌ててブランの答える。
「あら?王族の会話に口を挟むような無礼者が国代表なんてどうなのかしら。」
ミルアージュはキッと大臣を睨みつけた。
ミルアージュの圧に耐えられる者などこの世に少ない。
クリストファーやアンロックの軍部大将ですら怯むのだ、こんな文官出身の大臣など問題外。
大臣は倒れそうなくらい真っ青になった。
「我が国の者の無礼を謝る。ただ護衛との結婚など前代未聞だ。ここでは決定はできない。国に持ち帰らせてくれ。」
ブランは困ったような顔をしながら大臣の前に立った。
「いいわよ。もしうまくいったなら、こちらから信用できる商人を派遣してあなたの国特産を販売できるルートと人の確保を約束する。まだ概算だけど、取引価格はこのくらいを考えていてレンドランド国王の了承は得ているわ。」
ミルアージュはまだ真っ青になっている大臣に書状を渡した。
その書状を見た大臣とブランは目を大きく見開いた。
「こんな金額になるなんて信じられない…」
ブランも声を漏らした。
レンラグスは内戦が続いた事もあり、国力は下がり民は明日の生活にも困窮していた。
目先の利益に囚われて販売ルートを開拓する余裕がなかったのだ。
ルーマン、アンロックとは正式に国交はなく、他国から来た商人に言い値で特産を販売していた。
レンラグスで取れる石や薬草はかなり需要が高いものだ。
かなり高価で売買される。
アンロックやルーマンに輸入される時にはレンラグスから出された時の何百倍もの価格に跳ね上がっていた。
内戦で危険エリアであったレンラグスとの取引は真っ当な商人はしない。
だからこそ、そんな無茶苦茶な取引が行われてきたのだった。
その書状に目を通した大臣はブランに目をやり、お互いの意思を確認した。
マリアを他国に嫁がせる恩恵よりもミルアージュの意向に添い、この取引を成功させる方が得策だとわかったから。
「マリアの件、了承しよう。他国の王族への嫁入りはさせないと約束をする。」
ブランはミルアージュの意に沿う事を約束した。
「そう、よかったわ。マリア王女は王族の器ではないもの。あんな可愛らしい方に王族としての苦労をかけるなんて忍びなかったのよ。」
ミルアージュを知らない大臣はその言葉を嫌味として受け取った。
だが、ブランの目に潤んでいた。
マリアが王族の器ではない…
これはブランもマリア自身もよくわかっている事。
自殺未遂を起こすほど追い詰められていた妹を救える道が開けた。
ブランは心の中でミルアージュに感謝するしかなかった。
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