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「いやーまさかあの時はこんな風になるなんて思ってもみませんでした。さすがアザイル様です、見通していたのですか?ミルアージュ様は本当に素晴らしいお方です。噂など信じてはいけませんねぇ。」
馬車の中でバールは書類に目を通しているアザイルに向かい上機嫌で声をかける。
ミルアージュに呼ばれ、ルーマン最大の商店の主であるアザイルはアンロックに馬車で向かっている途中だ。
「ミルアージュ様の才能はわかっていたが、ここまでは考えていなかった。」
アザイルはバールに応える。
ミルアージュから送られた書類はレンラグスとの特産の取引とその仲介をアザイルの商店でお願いしたいという旨の内容だった。
「あの悪評高い王太子妃にどうしてそこまでするのですか?巻き込まれればうちの評判も落ちます!いくべきではありません!」
バールはそう言ってミルアージュの依頼でアザイルが街の復興に向かおうとした際、一番強く反対していた部下だった。
だが、国境近くの領主との関係性が良くなり、他国との貿易がしやすくなるという商店のプラスの結果が出ると手のひらを返した。
レンラグスの貴重な石と薬草を取り扱えるようになるなんて、想像できないほど大きな取引が舞い込んだとはいえ、多忙のアザイルがすぐに動けるように手配できたのはバールのおかげだった。
「…あまり嬉しそうではありませんね?何か気になる点でもあるのですか?」
バールはアザイルの持っている書類を覗き込んで聞いた。
こんな大口の取引などもう二度とない。
それにも関わらずアザイルは浮かない表情で何度も書類に目を通していた。
「いや、嬉しいよ。ミルアージュ様の性格を考えれば、裏はないだろうし、たとえリスクがあったとしてもそれ以上に利益が大きいだろう。」
「ではなぜ、そんな浮かないお顔で書類を見ているのですか?」
「…」
アザイルはバールの質問に答えず、窓の外を見た。
何度、書類を見直してもミルアージュは王太子妃としてアザイルに依頼をしてきたのがわかってしまう。
ミルアージュ様はクリストファー様のところに戻った…
アザイルだってそうなるだろうとは思っていた。
だが、ひょっとしたらあのまま、別れてしまうのではないか。
そう密かに期待していたのだ。
いつそうなってもいいように…
ミルアージュを受け入れる準備もしていた。
アザイルは商店の主としてこんな大きな取引の依頼をされるくらいミルアージュに信頼されているのは正直嬉しい。
だが、それは商人としてのアザイルを求めただけ。
今から向かうアンロックにはミルアージュだけではなく、クリストファーがいる事も書いてあった。
二人が仲良くしている姿を想像するだけでアザイルの胸が痛む。
アザイル自身、自分がこれほどミルアージュに惚れ込んでいたのに気づいて驚いた。
人としてではなく一人の女性としてミルアージュを見ている。
その衝撃は大きかった。
そして自分は失恋をしたのだとはっきりわかってしまった。
アザイルはこれまで店を大きくする事だけを考え恋愛などしてこなかった。
女性との関わりなど時間の無駄でしかなかった。
それなのに…
あの街でミルアージュと共に過ごした日々はアザイルにとって楽しくて幸せな時間だった。
仕事の時間だけでは物足りず、理由をつけ声をかけるなど普段の自分からは考えられない行動に呆れてもいたが…
微笑みながら名を呼んでくれるミルアージュを思い返して胸が熱くなる。
あの時点でこの気持ちを自覚していたら何か違っていたのだろうか。
いや、王太子妃である以上変わらなかったか…
アザイルはミルアージュの笑顔を振り切るように首を横に小さく振り、もう一度書類に目を通した。
馬車の中でバールは書類に目を通しているアザイルに向かい上機嫌で声をかける。
ミルアージュに呼ばれ、ルーマン最大の商店の主であるアザイルはアンロックに馬車で向かっている途中だ。
「ミルアージュ様の才能はわかっていたが、ここまでは考えていなかった。」
アザイルはバールに応える。
ミルアージュから送られた書類はレンラグスとの特産の取引とその仲介をアザイルの商店でお願いしたいという旨の内容だった。
「あの悪評高い王太子妃にどうしてそこまでするのですか?巻き込まれればうちの評判も落ちます!いくべきではありません!」
バールはそう言ってミルアージュの依頼でアザイルが街の復興に向かおうとした際、一番強く反対していた部下だった。
だが、国境近くの領主との関係性が良くなり、他国との貿易がしやすくなるという商店のプラスの結果が出ると手のひらを返した。
レンラグスの貴重な石と薬草を取り扱えるようになるなんて、想像できないほど大きな取引が舞い込んだとはいえ、多忙のアザイルがすぐに動けるように手配できたのはバールのおかげだった。
「…あまり嬉しそうではありませんね?何か気になる点でもあるのですか?」
バールはアザイルの持っている書類を覗き込んで聞いた。
こんな大口の取引などもう二度とない。
それにも関わらずアザイルは浮かない表情で何度も書類に目を通していた。
「いや、嬉しいよ。ミルアージュ様の性格を考えれば、裏はないだろうし、たとえリスクがあったとしてもそれ以上に利益が大きいだろう。」
「ではなぜ、そんな浮かないお顔で書類を見ているのですか?」
「…」
アザイルはバールの質問に答えず、窓の外を見た。
何度、書類を見直してもミルアージュは王太子妃としてアザイルに依頼をしてきたのがわかってしまう。
ミルアージュ様はクリストファー様のところに戻った…
アザイルだってそうなるだろうとは思っていた。
だが、ひょっとしたらあのまま、別れてしまうのではないか。
そう密かに期待していたのだ。
いつそうなってもいいように…
ミルアージュを受け入れる準備もしていた。
アザイルは商店の主としてこんな大きな取引の依頼をされるくらいミルアージュに信頼されているのは正直嬉しい。
だが、それは商人としてのアザイルを求めただけ。
今から向かうアンロックにはミルアージュだけではなく、クリストファーがいる事も書いてあった。
二人が仲良くしている姿を想像するだけでアザイルの胸が痛む。
アザイル自身、自分がこれほどミルアージュに惚れ込んでいたのに気づいて驚いた。
人としてではなく一人の女性としてミルアージュを見ている。
その衝撃は大きかった。
そして自分は失恋をしたのだとはっきりわかってしまった。
アザイルはこれまで店を大きくする事だけを考え恋愛などしてこなかった。
女性との関わりなど時間の無駄でしかなかった。
それなのに…
あの街でミルアージュと共に過ごした日々はアザイルにとって楽しくて幸せな時間だった。
仕事の時間だけでは物足りず、理由をつけ声をかけるなど普段の自分からは考えられない行動に呆れてもいたが…
微笑みながら名を呼んでくれるミルアージュを思い返して胸が熱くなる。
あの時点でこの気持ちを自覚していたら何か違っていたのだろうか。
いや、王太子妃である以上変わらなかったか…
アザイルはミルアージュの笑顔を振り切るように首を横に小さく振り、もう一度書類に目を通した。
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