わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「おい、あれはいいのか?」
ブランは不機嫌に黙り込んでいるクリストファーに耳打ちをした。

「言い訳がないだろう。あいつはミアを口説いた奴だ。」

そう言い、拳をギューと握るクリストファーを見てブランは苦笑いをした。

こんなに我慢しているのにミルアージュの言う事は守るんだな…
ブランとしては今まで何をしても勝てなかったルーマン王太子のこんな様子を見るのは面白かった。

隣でそんな面白がられているとは知らないクリストファーはギリギリとミルアージュを見つめている。

ミルアージュが城を出てレーグルトとの国境の街でアザイルに口説かれていたのを忘れてはいない。
クリストファーはミルアージュに捨てられる恐怖に怯えていたその時にミルアージュから呼ばれてそばにいた奴だ。

そんな奴を許せるはずはない。
殺意をもつのだって当たり前だ。

それをしないのは罪悪感やら正義からではないのはクリストファー自身よくわかっている。

ミアが許さないから。
それだけの理由でアザイルが殺される事も商店が潰される事もないのだ。

ブランはそんなクリストファーをみて面白いと思う反面、同情もしていた。

二人の関係性を知らないブランでさえ、アザイルとミルアージュは気が置けない関係性である事がすぐにわかった。

ミルアージュは王族だ。

アザイルという商人はミルアージュが何者か知っている。

それなのにあの距離感はなんだろう。
親密というわけではないが、お互い砕けた物言いをし、意見を言い合う。

ビジネスパートナーとしてお互いを尊重し合える良い関係に見え、和やかな雰囲気だ。
隣で睨みつけている男さえいなければの話だが。
殺気がビンビンに出ているのをあの二人は無視しているのだろう。


「邪魔はしないでね。」
アザイルに会う前、やけにミルアージュがクリストファーに念押しをしていたのがブランも気になっていた。

だが、どうしてなのかはすぐにわかった。

ミルアージュも自覚があるということか…
面倒にならなかったらいいがな。

ブランにとってアザイルの提案してきた条件はミルアージュが出したものよりさらに条件の良いものだった。

こんな提案ができるのはアザイルの商店より他にはないと思われる。

クリストファーとアザイルを天秤にかけるまでもない。
アザイルに肩入れをする。
ブランはそう決めていた。

だからこそ、嫉妬し睨みつける目の前の男には悪いが、何が何でも止めるのが俺の役目。

ブランはその為に今、クリストファーの横にいるのだ。
レンドランド王も同じようなものだろう。
アンロックにとってもかなりの好条件だったのだから。
王族達をこんな風に使うなんてな…

商店の利益を落としてもクリストファーから自分達を守る盾を用意する。

クリストファーがやり込められているだけではなく、王族を駒のように使うアザイルには驚くばかりだ。

ミルアージュから認められるだけの事はある。
まぁ、それが一番気に食わないのだろうがな…

ミルアージュがアザイルと何か話した後、嬉しそうに笑い出した。

ミルアージュの言うことは絶対のクリストファーだが、怒り心頭で今にもアザイルに殴りかかりそうな勢いだ。

おいおい…

こんなまじ切れしてるクリストファーを止めたら生きてこの部屋出れるのか?
ミルアージュがもうそろそろアザイルから離れてくれるのを願うしかない。

これ以上は刺激しないでくれと言うのがブランの本音だった。






「ミルアージュ様、ここら辺りが限界ではないでしょうか?」
アザイルはミルアージュに耳打ちをする。

「そうね、じゃあ頼むわ。」
ミルアージュも殺気が強くなっているクリストファーをチラッとみた。

「このような大きな取引に参加させていただき、こちらとしても感謝しております。ですが、もう一つの依頼は何かご褒美があるのでしょうか?」
アザイルはニコリと笑った。

「フフッ、この取引がご褒美だと思ってはくれないのね。私にできる範囲のものなら準備するわ。考えておいて。」
ミルアージュは笑いながら答えた。
アザイルは優雅な物腰や話し方をしていても根は商人だと思った。
押すところ、引き際をよく知っている。

「はい、ありがとうございます。お忘れなきようにお願い致します。」
アザイルは深々とミルアージュに頭を下げてミルアージュから離れた。




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