わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「領主様、少し失礼します。」
ミルアージュは領主に一礼をした後、近づいた。

まだメイドはミルアージュを怪しんでいるのがわかるくらいにミルアージュの動きを見つめていた。

おかしな行動をとればすぐに止められるように。

領主の呼吸は浅くて早かったが、呼吸している事にミルアージュはホッと胸をなでおろす。

そのまま、領主の手を握った。

領主の指先は冷たくなっている。
ミルアージュは手首に3本の指を当て脈をとる。

かなり遅い‥でも血圧はまだ維持できてるわ。

でも瞳孔も散大気味だし、痛みにも反応しない‥

閉じている瞼を開いたり、皮膚をつねるとメイドがミルアージュに飛びかかって来たが、間一髪のところで執事が止めた。

「今あなた方に説明しながら診察する時間がないの。ごめんなさい。」

「いえ、こちらこそ、申し訳ありません。お医者様の診察を遮るようなマネをして。」

執事はミルアージュの動きを見て本物の医者だと判断した。
そして医者であるミルアージュがとても難しい顔をしている事にも気づいていた。

そう、もう領主は限界だった。

今日は状況確認だけのつもりだった。
場合によっては解毒剤を少し使って王城からの救出を待ちたかった。

クリストファーもミルアージュも今はこの領に視察や調査に来たわけではない。
あくまで旅行なのだ。

怪しいだけでは動けない。
そんな勝手なことをすれば王族といえど、自治権を認める貴族たちからの反発は避けられない。

だが、今にも命の灯火が消えそうな領主にはまた今度という時間はない‥

ミルアージュは覚悟を決めるしかなかった。

「マカラック様、まだお力は残っていますか?」

「‥内容によるな。領主は運べないぞ。」
意識がない、しかも神聖力を使用したこともない領主はマカラックと一緒に瞬間移動ができないと首を横に振った。

「わかっています。一度宿に戻り、クリスを連れて来てもらえませんか?私はここに残ります。」

マカラックはミルアージュの言葉を理解するとすぐに表情が青ざめる。

「‥ミルアージュ殿だけを残して戻るなんて自殺行為だ。クリストファー殿の本性を知っただろう。」

ここにもついて来たがっていたクリストファーを置いてきただけでも殺気を出していた。
それなのに、命より大切なミルアージュを牢の中に残して来たと知ったらマカラックだってタダでは済まない。

1000年以上生きているマカラックですら、クリストファーの本性を恐れていた。

「大丈夫ですよ。私はここでできるだけ命を繋ぎます。それにここに私が残れば、クリスの行動は早くなりますから。」
ミルアージュはマカラックにニコリと笑う。

「‥似たもの夫婦だな。さっきのあれを見てそれを利用するなんてミルアージュ殿もクリストファー殿と同類だよ。」

「ふふっ、そう言われると照れますね。ありがとうございます。」

マカラックは嫌味を言っただけ。
照れながらお礼を言われるとは思っていなかった。

「‥はぁぁ。」
マカラックは頭を下げて大きなため息を漏らした。

「わかったよ、クリストファー殿を連れてくる。正面突破させるのか、それともここに直接来るのかどちらがいい?」

「できれば慎重に進めてもらいたいですが、クリスの性格なら正面突破するでしょうね。」

「ミルアージュ殿だってクリストファー殿が怒るとわかっているじゃないか‥」

「すいません。」

怒り心頭のクリストファーを2人とも想像できた。
いや、想像じゃない。

これから起こる事実だ。
それがわかっているだけにクリストファーのところに向かうマカラックの足どりは重かった。
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