わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「あぁぁぁ!何でこうなるんだ!」
クリストファーは大きなため息をつきながら項垂れる。

クリストファーが座っているテーブルの正面でルンバードがお茶を飲んでいる。

「後悔は自室でしてくれません?私も決して暇人ではないんですよ?」
ルンバードは冷たい視線をクリストファーに送る。

「自室にはミアがいるんだ。あぁ、こうなるなら部屋は別々にしておけばよかった。」

自分がどうしても同室がいいと押し切ったくせに…
ルンバードの視線はさらに冷ややかなものになった。

「どうして、頑なにうそを拒むのですか?」
ルンバードだって嘘がいい事だとは思っていない。
だが、嘘をつく事によりスムーズに事が進むこともある。
傷つけあう事を避けられる。

それなのにあれほどミルアージュを大切にするクリストファーがあえて傷つけ合う方を選ぶのか、どうしても理解できなかった。

「ミアは誰よりも状況理解も人の表情を読むのもうまい。」

「…そうですね。」

「そんなミアが私の嘘を見抜いた時のあなたもかとつぶやいた時の失望した表情が忘れられない。」

ミルアージュの為についた嘘だった。
だが、それでミルアージュが大きく傷ついたのだ。

クリストファーは一度だけ嘘をついた時のミルアージュの表情を思い出し、ブルッと震えた。

まぁ、その後無視られ続けたのも堪えたが、その時のミルアージュの表情をクリストファーは一生忘れないだろう。

「あなたもか?他にもミルアージュ様に嘘をつく人がいたのですか?いつの話ですか?」

「…アンロックにいた頃だ。ミアを取り巻く全てが嘘で固められていただろう?」

「嘘などついていません!」

「…前王もそなた達も前王の体調を偽り、レンドランドを立てるふりをして心の中ではミアを王にと望んでいた。」

「前王はミルアージュ様を気遣っていたのです。私たちはレンドランド様以外を王になど望んだ事もありません。」

「騙す事が気遣いか?ミアが何も知らずに後から全てを知るのは気遣いだったのか?それならミアの心情をもっとフォローするべきだっただろう?」

「それは…」

「それに…本当にミアがアンロックの女王になって欲しいと思わなかったと断言できるのか?」

「…はい。」

「それが嘘だろう。顔に出ている。レンドランドが悪い訳じゃないが、ミアの有能さを知っているものなら望まないはずがない。お前達は皆、優秀な臣下だからな。」

「…」

「私の元に嫁ぐのが決まっていて、私という存在に安心していたのだろう?ミアに罪悪感を持たずにアンロックから追い出せるのだから。」

「そんな訳ありません!ミルアージュ様を追い出したいなんて思った事もありません!」

ルンバードが怒鳴りながらクリストファーの言葉を否定する。

クリストファーはルンバードを鼻で笑った。
「では、ミアに引き続き政務を任せたのか?レンドランドもいるのに?あいつ以上の業績を残すのに?それとも全ての政務から外すつもりだったのか?」

「それは…」
ミルアージュ程、優秀な者は今のアンロックにはいない。
そうルンバードも断言できた。

だからミルアージュがアンロックにいれば、ミルアージュを頼ってしまっていたのは明白だった。

「お前達が嘘で全てをかためてたのをミアは知っていた。知っていた上で知らないふりをしていただけだ。お前達を責めない様に心の内側に押し込めてな。」

クリストファーの言葉にルンバードはショックを受けた。

全部を知っていた?
その上で何も言わなかったのか?

レンドランド様があのまま、亡くなっていたら…
色々と後悔はするだろうが、国を心配した事はなかった。
ミルアージュ様さえいれば、問題なかったから…
レンドランドへの忠誠もミルアージュをスペア扱いしていた事に対しても不敬過ぎる。

屈託なく笑うミルアージュをルンバードは思い出していた。
あれは本当に笑っていたのだろうか?

「本当に勝手だな…。ミアが国を捨てることを誰よりも願っていた私も人の事は言えないがな。」

その望みを隠す事なくミアに伝えてきた。
ルーマン王太子妃になる選択があるのだと。
選んで欲しいと縋った。

だが…

誰よりもアンロックを大切にしていたミアにとって王家の醜態となる追放よりもルーマン王太子妃の方がよいに決まっている。
自分のためではなく、義弟の為になる選択。

「ミアに選ばせるフリをして選べない選択を迫る私はミアにどんな風に映っていたのだろうな?」

ルンバードが思い悩んでいるのを見ながらクリストファーはボソリと呟いた。
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