242 / 252
242
しおりを挟む
クリストファーの表情を見ると本心である事がわかる。
「何を馬鹿な事を…」
普段は冷静なアビーナルから出るはずのない独り言が漏れる。
王太子に向かって無礼な発言に気づかないくらいアビーナルは混乱していた。
「ミルアージュ様は女性で、この国の方ではありません。」
「そうだな。」
クリストファーは興味がなさそうに返事をする。
そんなクリストファーの態度にアビーナルの苛立ちが増していた。
そんなアビーナルの表情を見たクリストファーはアビーナルに問いかける。
「この国に相応しい王は誰だ?アルトは答えなくていい。」
アルトの返事など聞かなくてもわかっているとばかりにアビーナルの返答のみを待った。
「…ミルアージュ様なら十分その素質はあるでしょう。いえ、誰よりも王としての素質があります。ですが、ここはルーマンです。クリストファー様は自分が王になり、ミルアージュ様を裏から支えるつもりだったでしょう?それではいけませんか?」
アビーナルが答える。
それが1番反発の少ない方法だ。
貴族の反発はクリストファーではなく、ミルアージュに向かう。
それだけは避けたい。
そうアビーナルは思っている。
そんなアビーナルの神経をクリストファーは逆撫でるように鼻で笑う。
「…それはお前自身の負担を減らしたいからか?貴族達を相手にするのは面倒だしな。」
「違います!これ以上ミルアージュ様を傷つけたくないのです!」
アビーナルの声は大きくなる。
「ミルアージュ様はこの国を何度も救ってくれました恩人です。ですが、その度に苦しむミルアージュ様を見てきました。もうこれ以上苦しめたくないのです。」
「そうだな。」
クリストファーはアビーナルの返答に同意する。
そう、ミルアージュの心情を優先するクリストファーがなぜ、このタイミングでこんな事を言い出すのか…
今まで黙っていた王が口を開いた。
「どうして、考えが変わった?」
「ミアにバレたからだ。」
「何がバレたんだ?」
今更…全部バレてるだろう。
王は呆れた様に聞く。
「私が世界滅亡させるかもしれないとな。」
クリストファーは世間話をする様に軽い口調で言った。
「はっ?世界滅亡?」
今までクリストファーに付き合わされて色々と苦湯を飲まされてきた王はクリストファーをわかったつもりになっていた。
そんな王だが、まさかクリストファーが世界滅亡も視野に入れていたなんて考えた事もなかった。
「ミアを幸せにする。それが私の生きる目的だ。だから、ミアを不幸にするものは滅びるべきだ。もし、ミアに何かあれば…この世界は必要ない。」
クリストファーは真顔だ。
「だからって!大体、世界はお前が滅ぼせる訳がない!」
耳が痛くなるくらい王の叫び声が部屋の中を響き渡る。
「あぁ、ミアにバレなければ冗談で終わらせられた。」
クリストファーの表情は硬い。
冗談ではないのか?
いくらクリストファーが優秀でも世界滅亡なんて出来るはずがない。
「何度も何度も頭の中では成功している。ミアも可能だと判断した。だが、その上で私と一緒にいてくれると言った。」
クリストファーは硬かった表情が緩み、惚気る様にうっとりと遠くを見ている。
「ミルアージュ妃が可能だと判断したのか?」
本当にそんな事が可能なのか?
部屋の中は静まり返る。
「あぁ、ミアに一生隠し通そうと思っていた。そんなのがバレれば、ミアは私を捨てると思ったが、そうはしなかった。ある条件をつけてな。」
「条件?」
ルーマン国王はこれ以上、クリストファーの話を聞きたくなかったが、聞くしかない現状に後悔していた。
クリストファーより劣ってもいい。
国を支えられる後継を育てておくべきだったと。
「ミアが亡くなれば、私もすぐにあとを追う。」
クリストファーは幸せそうに言うが、皆はドン引きしていた。
「いい加減にしろ!!」
ルーマンの事を何も考えいないクリストファーの言葉にルーマン国王は切れた。
「何を馬鹿な事を…」
普段は冷静なアビーナルから出るはずのない独り言が漏れる。
王太子に向かって無礼な発言に気づかないくらいアビーナルは混乱していた。
「ミルアージュ様は女性で、この国の方ではありません。」
「そうだな。」
クリストファーは興味がなさそうに返事をする。
そんなクリストファーの態度にアビーナルの苛立ちが増していた。
そんなアビーナルの表情を見たクリストファーはアビーナルに問いかける。
「この国に相応しい王は誰だ?アルトは答えなくていい。」
アルトの返事など聞かなくてもわかっているとばかりにアビーナルの返答のみを待った。
「…ミルアージュ様なら十分その素質はあるでしょう。いえ、誰よりも王としての素質があります。ですが、ここはルーマンです。クリストファー様は自分が王になり、ミルアージュ様を裏から支えるつもりだったでしょう?それではいけませんか?」
アビーナルが答える。
それが1番反発の少ない方法だ。
貴族の反発はクリストファーではなく、ミルアージュに向かう。
それだけは避けたい。
そうアビーナルは思っている。
そんなアビーナルの神経をクリストファーは逆撫でるように鼻で笑う。
「…それはお前自身の負担を減らしたいからか?貴族達を相手にするのは面倒だしな。」
「違います!これ以上ミルアージュ様を傷つけたくないのです!」
アビーナルの声は大きくなる。
「ミルアージュ様はこの国を何度も救ってくれました恩人です。ですが、その度に苦しむミルアージュ様を見てきました。もうこれ以上苦しめたくないのです。」
「そうだな。」
クリストファーはアビーナルの返答に同意する。
そう、ミルアージュの心情を優先するクリストファーがなぜ、このタイミングでこんな事を言い出すのか…
今まで黙っていた王が口を開いた。
「どうして、考えが変わった?」
「ミアにバレたからだ。」
「何がバレたんだ?」
今更…全部バレてるだろう。
王は呆れた様に聞く。
「私が世界滅亡させるかもしれないとな。」
クリストファーは世間話をする様に軽い口調で言った。
「はっ?世界滅亡?」
今までクリストファーに付き合わされて色々と苦湯を飲まされてきた王はクリストファーをわかったつもりになっていた。
そんな王だが、まさかクリストファーが世界滅亡も視野に入れていたなんて考えた事もなかった。
「ミアを幸せにする。それが私の生きる目的だ。だから、ミアを不幸にするものは滅びるべきだ。もし、ミアに何かあれば…この世界は必要ない。」
クリストファーは真顔だ。
「だからって!大体、世界はお前が滅ぼせる訳がない!」
耳が痛くなるくらい王の叫び声が部屋の中を響き渡る。
「あぁ、ミアにバレなければ冗談で終わらせられた。」
クリストファーの表情は硬い。
冗談ではないのか?
いくらクリストファーが優秀でも世界滅亡なんて出来るはずがない。
「何度も何度も頭の中では成功している。ミアも可能だと判断した。だが、その上で私と一緒にいてくれると言った。」
クリストファーは硬かった表情が緩み、惚気る様にうっとりと遠くを見ている。
「ミルアージュ妃が可能だと判断したのか?」
本当にそんな事が可能なのか?
部屋の中は静まり返る。
「あぁ、ミアに一生隠し通そうと思っていた。そんなのがバレれば、ミアは私を捨てると思ったが、そうはしなかった。ある条件をつけてな。」
「条件?」
ルーマン国王はこれ以上、クリストファーの話を聞きたくなかったが、聞くしかない現状に後悔していた。
クリストファーより劣ってもいい。
国を支えられる後継を育てておくべきだったと。
「ミアが亡くなれば、私もすぐにあとを追う。」
クリストファーは幸せそうに言うが、皆はドン引きしていた。
「いい加減にしろ!!」
ルーマンの事を何も考えいないクリストファーの言葉にルーマン国王は切れた。
1
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
嘘はあなたから教わりました
菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる