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「ねぇ、私に何か隠していない?」
ミルアージュはアビーナルをジッと見つめながら聞く。
「何のことですか?いつも通りでしょう。」
アビーナルは無表情で答える。
「クリスもアルトもなんかぎこちないのよね…私に隠れて何かコソコソしてるわ。」
ミルアージュは万年筆をクルクルと回しながら拗ねた顔をした。
クリスだけならともかくアルトまで自分に隠し事をしている。
ミルアージュは嫌な予感がしていた。
「まぁ、アルトは無条件にあなたの味方ですからね。隠れて動かれるのは気持ち良いものではないでしょうね。ですが、今はクリストファー様の隊の隊長です。全てをミルアージュ様が把握するのは難しいと思います。」
アビーナルは書類に目を通しながら答える。
「そんな事はわかっているわ。」
そう、ミルアージュについて回るのではなく、アルトがクリストファーの命令に従っているのならば良い事のはずだ。
だけど…腑に落ちない。
動きが怪しい。
ミルアージュはさらにアビーナルを睨みつける様に見つめる。
知っている事があるのなら話せと目で圧をかける。
アビーナルはハァと小さくため息をついた。
アルトは前の様に態度が表情に出る事はなくなっていた。
いや、今では冷血漢と怖がられる存在だ。
軍部トップに立つ為にあえてそうしているようだ。
昔の様な甘えや愚痴も口にしない。
ミルアージュ様に嫌われたくない。
また置いていかれたくない。
頼れる存在になりたい。
その思いが強いのだろう。
だが、そんなアルトもミルアージュ様の前では感情が出やすい。
クリストファー様と同じく嘘がつけず、ソワソワした様子がすぐに想像できた。
そう、クリストファー様とアルトは似ている。
ミルアージュ様が消えた後のアルトは敵認定したかの様に睨みつけ、クリストファー様の命令に従わなくなった。
隊長の任を解かれても不思議ではないその状況でもクリストファーはアルトを外す事はなかった。
アルト以外に適任者がいないのも事実だったが、クリストファー様自身もアルトの仕打ちは当たり前だと受け入れている様子だった。
執着とも言えるアルトのミルアージュ様への敬愛。
アビーナルは自分と全く違うが、アルトの真っ直ぐな性格を好んでいた。
自分にない熱い情熱。
「ミルアージュ様、アルトをどうするつもりですか?」
「アルトは…」
ミルアージュは珍しく言葉を詰まらせた。
このままでは、アルトをこれ以上の役職につける事が難しい。
だが…軍部で誰よりも優秀で信頼できるアルトを外すなんてミルアージュには考えられなかった。
黙っているミルアージュを見てアビーナルはクスリと笑う。
「あなたがそうやってアルトを考えるだけで、あの男は満足しますよ。」
アルトの想いが何なのか。
それはアビーナルにはわからない。
だが、それがどんな想いだろうとアルトがミルアージュに仕える以上の事を考えないだろう。
たとえ、自分の想いに蓋をすることになっても。
アビーナルはそう確信していた。
「それだけではダメよ。私は彼の上官にはなれないのだから。」
シュンとするミルアージュに向かい、アビーナルはミルアージュに微笑んだ。
「そちらは問題ありません。」
ミルアージュは怪訝そうにアビーナルを見た。
ミルアージュはアビーナルをジッと見つめながら聞く。
「何のことですか?いつも通りでしょう。」
アビーナルは無表情で答える。
「クリスもアルトもなんかぎこちないのよね…私に隠れて何かコソコソしてるわ。」
ミルアージュは万年筆をクルクルと回しながら拗ねた顔をした。
クリスだけならともかくアルトまで自分に隠し事をしている。
ミルアージュは嫌な予感がしていた。
「まぁ、アルトは無条件にあなたの味方ですからね。隠れて動かれるのは気持ち良いものではないでしょうね。ですが、今はクリストファー様の隊の隊長です。全てをミルアージュ様が把握するのは難しいと思います。」
アビーナルは書類に目を通しながら答える。
「そんな事はわかっているわ。」
そう、ミルアージュについて回るのではなく、アルトがクリストファーの命令に従っているのならば良い事のはずだ。
だけど…腑に落ちない。
動きが怪しい。
ミルアージュはさらにアビーナルを睨みつける様に見つめる。
知っている事があるのなら話せと目で圧をかける。
アビーナルはハァと小さくため息をついた。
アルトは前の様に態度が表情に出る事はなくなっていた。
いや、今では冷血漢と怖がられる存在だ。
軍部トップに立つ為にあえてそうしているようだ。
昔の様な甘えや愚痴も口にしない。
ミルアージュ様に嫌われたくない。
また置いていかれたくない。
頼れる存在になりたい。
その思いが強いのだろう。
だが、そんなアルトもミルアージュ様の前では感情が出やすい。
クリストファー様と同じく嘘がつけず、ソワソワした様子がすぐに想像できた。
そう、クリストファー様とアルトは似ている。
ミルアージュ様が消えた後のアルトは敵認定したかの様に睨みつけ、クリストファー様の命令に従わなくなった。
隊長の任を解かれても不思議ではないその状況でもクリストファーはアルトを外す事はなかった。
アルト以外に適任者がいないのも事実だったが、クリストファー様自身もアルトの仕打ちは当たり前だと受け入れている様子だった。
執着とも言えるアルトのミルアージュ様への敬愛。
アビーナルは自分と全く違うが、アルトの真っ直ぐな性格を好んでいた。
自分にない熱い情熱。
「ミルアージュ様、アルトをどうするつもりですか?」
「アルトは…」
ミルアージュは珍しく言葉を詰まらせた。
このままでは、アルトをこれ以上の役職につける事が難しい。
だが…軍部で誰よりも優秀で信頼できるアルトを外すなんてミルアージュには考えられなかった。
黙っているミルアージュを見てアビーナルはクスリと笑う。
「あなたがそうやってアルトを考えるだけで、あの男は満足しますよ。」
アルトの想いが何なのか。
それはアビーナルにはわからない。
だが、それがどんな想いだろうとアルトがミルアージュに仕える以上の事を考えないだろう。
たとえ、自分の想いに蓋をすることになっても。
アビーナルはそう確信していた。
「それだけではダメよ。私は彼の上官にはなれないのだから。」
シュンとするミルアージュに向かい、アビーナルはミルアージュに微笑んだ。
「そちらは問題ありません。」
ミルアージュは怪訝そうにアビーナルを見た。
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