8 / 34
第8話「私の愛し子が異世界に落ちてきた日~アレクセイ公爵視点~」
光の中から落ちてきた彼女――ミレイ。
抱き止めた瞬間、胸の奥を撃ち抜かれたように息が詰まった。
驚きと恐怖に揺れる体。震える手足。怯えた瞳。
ただの転移者にすぎぬはずなのに――。
……無関心では、いられなかった。
---
館に着くと、使用人たちが慌ただしく準備を始める。私は低く命じた。
「風呂を用意しろ。丁重にもてなせ」
一斉に頭を下げて散っていく使用人たち。その間、彼女は戸惑いがちに私を見上げてくる。
「そ、そんな……わざわざ……」
「汚れたままでは眠れんだろう」
冷ややかな声音のはずだ。だが胸の内は、なぜか温かくざわめいていた。
---
浴室で侍女に支度を整えられ、柔らかな寝間着姿で戻ってきた彼女。
食卓の前に座らせると、思わず椅子を引いてやっていた。
「食べろ」
差し出したスープを戸惑いながら受け取る彼女。
掠れるような声で「……はむ」と口を開けた姿に、胸が強く打たれる。
――可愛い。
そんな言葉が喉元までこみ上げ、必死に飲み下す。
ただの庇護対象だ。特別な感情など抱いてはならない。
そう言い聞かせながらも、理性は揺らいでいく。
---
一晩、彼女を寝台に休ませ、私はその傍らに腰を下ろした。
怯えぬよう、手を包み、額にかかる髪をそっと払う。
「怖がるな」
そう囁きながら、自分の方こそ心を乱されていた。
眠る彼女は、まるで天使のように儚く、美しい。
――側に置きたくてたまらない。
――いや、それは保護のためだ。そうでなければならない。
---
翌朝。
彼女が目を覚まし、躊躇いながらも口を開いた。
「……あの、私、女神ルミエールさまに会いました。そこで、“あなたは愛し子だ”って……そう告げられて」
そう言うと、彼女は胸元に手を添え、少しだけ寝間着を開いた。
そこには淡い光を宿した印が浮かんでいる。
「これが、その証なんです」
――あまりにも唐突で、私は息を呑み、顔が熱くなるのを感じた。
必死に視線を逸らし、咳払いで誤魔化す。
「わ、わかった! すぐに胸元を閉じなさい!」
自分でも驚くほど、声が掠れていた。
だが胸に灯っていた直感が、真実であったことを確信する。
――やはり、君は……。
---
その後、王城へ。謁見の間には壮麗な王、若き王妃、そして王子が控えていた。
私は王へ報告する。
「こちらは女神ルミエールさまに選ばれし“愛し子”です。胸元に、その証もございます。……確認は女性使用人に任せました」
ミレイは一歩進み出て、落ち着いた声で名乗った。
「佐神ミレイと申します」
王子が熱い視線を注ぐ。
だが彼女の瞳は、私だけを追っているように見えてしまう。
……愚かだ。思い上がるな。
それでも胸の奥で、不遜な喜びが膨らんでいく。
---
王子は保護を申し出た。
だがミレイは迷わず、私の側にいることを望んだ。
理性が告げる。
――その方が彼女にとって安全だ。王族の庇護を受けた方が良い。
感情が叫ぶ。
――渡したくない。手放せるはずがない。
私は微かに笑みを浮かべ、静かにうなずいた。
「……そうか」
その瞬間、胸の葛藤は霧のように溶けていった。
やはり、私の愛し子は――私の側にいるべきだ。
---
抱き止めた瞬間、胸の奥を撃ち抜かれたように息が詰まった。
驚きと恐怖に揺れる体。震える手足。怯えた瞳。
ただの転移者にすぎぬはずなのに――。
……無関心では、いられなかった。
---
館に着くと、使用人たちが慌ただしく準備を始める。私は低く命じた。
「風呂を用意しろ。丁重にもてなせ」
一斉に頭を下げて散っていく使用人たち。その間、彼女は戸惑いがちに私を見上げてくる。
「そ、そんな……わざわざ……」
「汚れたままでは眠れんだろう」
冷ややかな声音のはずだ。だが胸の内は、なぜか温かくざわめいていた。
---
浴室で侍女に支度を整えられ、柔らかな寝間着姿で戻ってきた彼女。
食卓の前に座らせると、思わず椅子を引いてやっていた。
「食べろ」
差し出したスープを戸惑いながら受け取る彼女。
掠れるような声で「……はむ」と口を開けた姿に、胸が強く打たれる。
――可愛い。
そんな言葉が喉元までこみ上げ、必死に飲み下す。
ただの庇護対象だ。特別な感情など抱いてはならない。
そう言い聞かせながらも、理性は揺らいでいく。
---
一晩、彼女を寝台に休ませ、私はその傍らに腰を下ろした。
怯えぬよう、手を包み、額にかかる髪をそっと払う。
「怖がるな」
そう囁きながら、自分の方こそ心を乱されていた。
眠る彼女は、まるで天使のように儚く、美しい。
――側に置きたくてたまらない。
――いや、それは保護のためだ。そうでなければならない。
---
翌朝。
彼女が目を覚まし、躊躇いながらも口を開いた。
「……あの、私、女神ルミエールさまに会いました。そこで、“あなたは愛し子だ”って……そう告げられて」
そう言うと、彼女は胸元に手を添え、少しだけ寝間着を開いた。
そこには淡い光を宿した印が浮かんでいる。
「これが、その証なんです」
――あまりにも唐突で、私は息を呑み、顔が熱くなるのを感じた。
必死に視線を逸らし、咳払いで誤魔化す。
「わ、わかった! すぐに胸元を閉じなさい!」
自分でも驚くほど、声が掠れていた。
だが胸に灯っていた直感が、真実であったことを確信する。
――やはり、君は……。
---
その後、王城へ。謁見の間には壮麗な王、若き王妃、そして王子が控えていた。
私は王へ報告する。
「こちらは女神ルミエールさまに選ばれし“愛し子”です。胸元に、その証もございます。……確認は女性使用人に任せました」
ミレイは一歩進み出て、落ち着いた声で名乗った。
「佐神ミレイと申します」
王子が熱い視線を注ぐ。
だが彼女の瞳は、私だけを追っているように見えてしまう。
……愚かだ。思い上がるな。
それでも胸の奥で、不遜な喜びが膨らんでいく。
---
王子は保護を申し出た。
だがミレイは迷わず、私の側にいることを望んだ。
理性が告げる。
――その方が彼女にとって安全だ。王族の庇護を受けた方が良い。
感情が叫ぶ。
――渡したくない。手放せるはずがない。
私は微かに笑みを浮かべ、静かにうなずいた。
「……そうか」
その瞬間、胸の葛藤は霧のように溶けていった。
やはり、私の愛し子は――私の側にいるべきだ。
---
あなたにおすすめの小説
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
落ちて拾われて売られて買われた私
ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。
最終的には溺愛になる予定です。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。