「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)

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第20話「渇望する王子、迫る影」

公爵邸。

重厚な扉の前に、慌ただしい足音と共に声が響いた。



「お、お待ちくださいませ、王子殿下!」



執事が制止する間もなく、王子フェルナンドは堂々と館に足を踏み入れる。



「ミレイ嬢はどこだ。すぐに会いたい」



その瞳は期待と高揚に燃えており、執事や使用人たちは顔を青ざめさせた。

急報を受けて駆けつけたマリーも険しい表情で王子の前に立ちふさがる。



「殿下、ミレイ様はまだご準備も――」

「構わぬ!私は王子だぞ?通さぬと言うか?」



強引な物言いに、執事とマリーは互いに視線を交わし、しぶしぶ身を引くしかなかった。



ミレイは落ち着かない気持ちで客間へと足を運ぶ。

王子をこのまま外に立たせるわけにもいかないし、何より――アレクセイ様が戻るまで無用な波風は立てたくなかったからだ。





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客間。

王子は椅子に腰掛けるなり、嬉しそうにミレイを見つめた。



「来てくれたのだな、ミレイ嬢……やはり、君は私の想いを受け入れてくれるのだろう?」



「……殿下」

ミレイは深く息を吸い込み、真っ直ぐに見つめ返す。



「申し訳ありません。私は殿下とは婚約できません」



その言葉に、王子の表情が固まる。



「な、に……?」



「私の心は――アレクセイ様にございます。殿下のお気持ちは光栄ですが、お応えすることはできません」



静かな声で告げると、フェルナンドの瞳が揺れた。

理解できないというように見開かれ、やがてその光がかすかに陰る。



「……どうしてだ。私は王子だぞ……。何でも与えられてきた。なのに……どうして君の心だけは、私のものにならない……」



かすれた声に、ミレイは胸が痛む。

愛を知らずに育った彼の孤独が、にじみ出ていた。



「殿下……」



「お願いだ、せめて今だけでも……私を拒まないでくれ!」



王子は立ち上がり、震える手をミレイへ伸ばす。

その瞳は焦燥と渇望に濁り、理性よりも切実な寂しさに支配されていた。



「殿下!おやめください!」

マリーが慌てて割り込み、執事も制止しようと駆け寄る。



だがフェルナンドは必死に首を振る。



「私は……ただ、温もりが欲しいだけなんだ!誰かに必要とされたいだけなんだ……!」



張り詰めた空気の中、ミレイは立ちすくむ。

胸の奥に走る不安と恐怖――そして切実な願いが、彼女の唇を震わせた。



「……アレクセイ様……!」



呼ぶように紡がれたその声は、館の外に駆け込んでくる蹄の音と重なり――



運命の嵐を告げるかのように、重苦しく響き渡った。





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