「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)

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第21話「アレクセイ様の胸で震えるミレイ──王子、完全に戦意喪失」

公爵邸の客間。



館内の空気は緊張で張り詰め、王子フェルナンドの焦燥と渇望が室内を震わせていた。



そのとき、重厚な扉が静かに開き、漆黒の影が滑り込む。



「――フェルナンド殿下、何をなさっているのですか」



低く、しかし揺るぎない声。言葉以上に存在そのものが威圧となり、王子の体が思わず硬直する。

アレクセイ様が現れた。落ち着いた理知的な瞳が、王子を射抜く。



「アレクセイ様……!」

恐怖と安堵が入り混じったミレイの声に、アレクセイ様は静かに振り返る。



王子が手を伸ばそうとした瞬間、アレクセイ様は一歩踏み出す。

歩くたびに館内の空気が揺れ、王子の心臓は跳ね上がった。



「ミレイは、貴公のものではない」



その言葉は穏やかだが揺るがず、王子の目から希望の光を奪った。



ミレイは恐怖に震えながら、アレクセイ様に抱きつく。

「アレクセイ様……怖かったよぉ~」



アレクセイ様はわずかに眉を下げ、優しく背中を撫でる。

「よしよし。ミレイ、もう大丈夫だ」



そのまま、微かに体を揺らしながら、抱きつかれたミレイをそっとよちよちとあやす。

ミレイの不安はみるみる溶け、胸の奥に温かい安心が広がっていく。



その光景を目にした王子フェルナンドの表情は、信じられないほど大きく歪む。



「あ……あの……理知的で落ち着いたアレクセイが……!

そして……あの大人びたミレイが……抱きついて――甘えている……!?」



言葉を失い、王子は立ち尽くす。渇望していた温もりを手に入れられず、さらに目の前で二人の幸福そうな姿を見せつけられ、戦意は完全に消えた。



「……俺には……どうしても……手が届かない……」

かすれた声に焦燥も威圧もなく、ただ圧倒される少年のような弱さだけが残る。



アレクセイ様はミレイを抱きしめたまま、静かに、しかし圧倒的な視線で王子を見据える。

「ご理解いただけましたか、フェルナンド殿下。どうか、これ以上迷惑をおかけなさいませんように」



丁寧な言葉遣いと威圧感に、王子は深く頭を下げるしかなかった。



ミレイは安心しきってアレクセイ様に抱きつき、柔らかく温かい幸福に包まれる。

アレクセイ様は優しく背中を撫で、軽く揺らしてよちよちするその手に、ミレイは思わず顔を埋めた。



──公爵邸の客間は、戦慄の嵐が過ぎ去り、静かで甘い安息の時間を取り戻したのだった。





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