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【番外編①】失恋王子のひそやかな時間 〜図書館での出会い〜
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宮廷は、王子フェルナンドにとって息が詰まる場所だった。
華やかなドレスに身を包んだ令嬢たちは、笑顔の裏で王子を取り囲み、媚びるような言葉をささやく。
「王子様、今晩お暇でしょうか?」
「ご一緒にお茶でも…」
日々、同じような声が耳に届くたび、胸の奥が重くなる。
ミレイとアレクセイの結婚式で祝福を告げたあの日の温かさは残っていたが、宮廷での“歓迎”はただ疲れを増すだけだった。
――もう、誰にも構われずに静かに過ごしたい。
そう思った王子は、王城附属の図書館へ足を向けた。
高い本棚に囲まれ、古書の匂いが漂う落ち着いた空間。ここなら少しは心を休められる――。
ふと視線に映ったのは、茶色の地味なドレスに身を包んだ少女だった。厚い黒縁のメガネに、おさげ髪。手には本を抱えている。
「……えっ……!?」
少女は驚きのあまり一歩後ずさりしたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「……いらっしゃいませ。司書のコレットです」
頭を下げながら名乗る姿は、丁寧で自然に心を落ち着かせるものだった。
「……フェルナンドだ。突然来てしまってすまない」
コレットは、しばらく考えてから静かに尋ねた。
「……どうしてこちらに?お城ではお元気そうではなかったように見えましたが」
王子は肩を少し落とすだけで答えなかった。
彼はまだ、誰にも心を開こうとは思えなかったのだ。
静かな沈黙の後、コレットは小さな声で「……大変でしたね」と呟き、つい王子の肩に手を置いた。
それだけのことだったのに、王子は不意に心の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。
まだ恋心ではない。好意でもない。
ただ、この人は自分の気持ちを無理に求めず、そっと受け止めてくれる――そんな感覚だけだった。
――この場所なら、少しだけ自分を取り戻せそうだ――
図書館の静けさと古書の匂いに包まれ、王子は小さく息を吐いた。
そして心の奥で、何かが少しずつ動き始めていることを感じていた。
---
(後書き)
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
フェルナンド王子が静かに心を落ち着けられる場所として選んだ図書館。
コレットという存在が、彼にとってどんな意味を持つのか――それはこれから少しずつ明らかになります。
読者の皆さまも、どうぞこの二人の時間をゆっくり見守ってくださいね。
第2話では、コレットのキャラクターがさらに見えてきますので、お楽しみに✨
華やかなドレスに身を包んだ令嬢たちは、笑顔の裏で王子を取り囲み、媚びるような言葉をささやく。
「王子様、今晩お暇でしょうか?」
「ご一緒にお茶でも…」
日々、同じような声が耳に届くたび、胸の奥が重くなる。
ミレイとアレクセイの結婚式で祝福を告げたあの日の温かさは残っていたが、宮廷での“歓迎”はただ疲れを増すだけだった。
――もう、誰にも構われずに静かに過ごしたい。
そう思った王子は、王城附属の図書館へ足を向けた。
高い本棚に囲まれ、古書の匂いが漂う落ち着いた空間。ここなら少しは心を休められる――。
ふと視線に映ったのは、茶色の地味なドレスに身を包んだ少女だった。厚い黒縁のメガネに、おさげ髪。手には本を抱えている。
「……えっ……!?」
少女は驚きのあまり一歩後ずさりしたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「……いらっしゃいませ。司書のコレットです」
頭を下げながら名乗る姿は、丁寧で自然に心を落ち着かせるものだった。
「……フェルナンドだ。突然来てしまってすまない」
コレットは、しばらく考えてから静かに尋ねた。
「……どうしてこちらに?お城ではお元気そうではなかったように見えましたが」
王子は肩を少し落とすだけで答えなかった。
彼はまだ、誰にも心を開こうとは思えなかったのだ。
静かな沈黙の後、コレットは小さな声で「……大変でしたね」と呟き、つい王子の肩に手を置いた。
それだけのことだったのに、王子は不意に心の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。
まだ恋心ではない。好意でもない。
ただ、この人は自分の気持ちを無理に求めず、そっと受け止めてくれる――そんな感覚だけだった。
――この場所なら、少しだけ自分を取り戻せそうだ――
図書館の静けさと古書の匂いに包まれ、王子は小さく息を吐いた。
そして心の奥で、何かが少しずつ動き始めていることを感じていた。
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(後書き)
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
フェルナンド王子が静かに心を落ち着けられる場所として選んだ図書館。
コレットという存在が、彼にとってどんな意味を持つのか――それはこれから少しずつ明らかになります。
読者の皆さまも、どうぞこの二人の時間をゆっくり見守ってくださいね。
第2話では、コレットのキャラクターがさらに見えてきますので、お楽しみに✨
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