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【番外編⑥】コレット、舞踏会での変身~フェルナンドへの想い~
前日の騒動から一夜明け、コレットの住む伯爵邸に荷物が届いた。
開けてみると、そこには王子・フェルナンドの髪色に合わせた金色の刺繍と、瞳の色に合わせた緑色の美しいドレス、それに合う装飾品が入っていた。
喜びとともに、不安が胸をよぎる。
「こんな素敵なドレス、私には似合わないわ……」
迷いに迷ったコレットは、舞踏会当日、送られたドレスを纏いながら会場近くをそっと歩いていた。
一昨日から王子には会っていない。まだ気まずさが胸に残っており、どうしても勇気が出なかったのだ。
ドレス姿を近くの姿見でチラリと確認する。
髪型は自作。下手くそながらも精一杯オシャレをしたつもりだ。化粧はしていない。
軽めの新しいメガネをかけると、少しは可愛らしい顔立ちが見える程度。しかし全体としては、まだ自分には似合っていない気がして落ち込む。
その時、先日の令嬢たちが通りかかり、再びコレットを取り囲み、冷たい視線と口々の批判を浴びせた。
「まぁ、貴方こんな所へ何か用なの?」
「見て、この子、王子の色のドレスを着ているわ」
「鏡をご覧になって?」
涙をこらえるコレット。
すると、鋭い声が空気を切り裂くように響いた。
「ちょっと、あなた達。なにをなさっているの?」
コレットと令嬢たちは一斉にその声の方を見る。
そこにはアルデリア王国の公爵家夫人、ミレイが立っていた。
美しく、不快な顔で、毅然と令嬢たちを睨みつける。
「あなた達、寄ってたかって何をしているの?恥を知りなさい!」
ミレイの声に令嬢たちは頭を下げ、顔を青ざめながら退散した。
コレットは息を呑み、ミレイを見上げた。
(なんてお美しい方……。噂で聞いたことがある……あぁ、この方がフェルナンド様の想っていた方なのね。やっぱり、私なんかじゃ……)
ミレイは柔らかな声でコレットに問いかける。
「あなた、大丈夫?」
思わず顔を赤くしながらコレットは答えた。
「だ、大丈夫です。助けていただきありがとうございます……。やっぱり、私には不釣り合いな場所でした」
その言葉を聞いたミレイは少し眉をひそめた。
「なぜ?」
「えっと……私、ドレスも似合っていませんし、お化粧も髪型もこんなですし……」
ミレイはしばらく考え込むように目を細め、やがて微笑む。
「時間はある?少し、こちらへ来てごらんなさい」
戸惑いながらもコレットはミレイの手に導かれ、城の休憩スペースへ向かう。
そこには化粧台があり、ミレイは近くにいた使用人に的確に指示を出した。
「私の化粧道具を持ってきて。髪はハーフアップにまとめ、少しおくれ毛を出してあげて」
使用人が道具を持ってくると、ミレイは優しく声をかけながらコレットの髪を整え、メイクを施す。
「貴方、とても綺麗よ。やり方を知らないだけ。ドレスも、ちゃんと似合っているわ」
その言葉に、コレットは驚きと少しの戸惑いを覚える。
ミレイの手際に従い髪をまとめ、薄化粧を施されるうちに、鏡に映った自分はまるで別人のようだった。
亜麻色の髪はゆったりとハーフアップにまとめられ、顔立ちは薄化粧で儚げな妖精のように整っている。
思わず息を呑むコレット。
「……わ、私……こんな……」
ミレイは微笑みながら頷く。
「これが、貴方の本当の美しさよ。ただ、それを知らなかっただけ」
胸に嬉しさと誇らしさが湧き上がる。
初めて、自分が舞踏会に足を踏み入れる勇気を少しだけ持てそうな気がした――。
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