「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)

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【番外編⑦】舞踏会での奇跡のプロポーズ♡


 ミレイに手を引かれ、コレットはついに会場の大広間へと足を踏み入れた。

 きらめくシャンデリアの光が反射し、宝石のような笑い声が飛び交う。華やかなドレスの令嬢たちと、燕尾服に身を包んだ紳士たち。その輪の中に立つだけで、場違いな気がして胸がきゅっと縮む。



 しかし、すぐに一人の男性がミレイの姿を見つけ、歩み寄ってきた。

 黒髪を後ろに撫でつけ、堂々とした風格を持つ――アルデリア王国公爵、アレクセイその人である。



「どこに行っていたんだい? 心配して探しに出ようとしていたところだよ」

 彼はミレイの手を取り、その瞳を愛おしげに細めた。傍目にも溢れるほどの慈愛が感じられ、見ているこちらが頬を赤らめそうなほど。



 コレットは(……まるで理想の夫婦。耳にする噂以上に、まさしく愛妻家なのね)と胸を打たれる。



 ミレイはにっこりと微笑み、「ごめんなさい、アレクセイ様♡ ちょっとお花を摘みに行っていたら、不快な場面に出くわしてしまって……。その時に、こちらのコレットさんと出会ったの」とコレットを紹介した。



 慌ててコレットは裾をつまみ、深くお辞儀をする。

「お、お初にお目にかかります。アール伯爵家の……コレットと申します」



 アレクセイは驚いたように目を細め、「ほう。君が……例の伯爵令嬢か。王子から君の話は聞いているよ」と言った。



「えっ……?」

 コレットは思わず顔を上げ、ぽかんとする。



「なぜここに? 王子と一緒ではないのかね?」



 その言葉に、ミレイが手を叩いて「あらまあ!」と声を上げる。

「あなた、まさか……この方が“あのコレット”なの? 私ったら気づかなかったわ!」



 事態を飲み込めず、コレットはただ目を瞬かせるばかり。

 アレクセイは申し訳なさそうに微笑み、「失礼。実は君のことを、甥であるフェルナンド王子から聞いていたのだ。今日は自ら迎えに行くと張り切っていたのだが……すれ違ってしまったようだね」



 ――すれ違い。そうだったのか……。

 胸の奥に、じんわりと温かさと切なさが広がっていく。



 そして、ずっと気になっていたことを勇気を振り絞って尋ねた。

「あの……フェルナンド様は、私のことを……なんとおっしゃっていたのですか?」



 アレクセイとミレイは互いに目を合わせ、からかうように微笑む。

「それは――本人に聞くべきではないかな?」



「本人……?」と振り返ったその瞬間。



「……はぁ、やっと見つけた」



 息を少し乱しながら、黄金の髪を揺らして立っていたのは――フェルナンド王子だった。



 彼はコレットを見つけると、安堵と喜びが混じったような表情を浮かべ、まっすぐに歩み寄ってくる。

「伯爵邸まで迎えに行ったのだが、もう出かけられたと聞いて……急いで来た。ドレスを着てくれたんだね。……本当に、素晴らしく美しい」



 その声は真剣で、耳に届くたび胸の奥が震える。

 フェルナンドは頬を赤らめ、しかし誇らしげに微笑んだ。

「コレット。君をエスコートする栄誉を、私にくれないだろうか?」



 差し出された手。

 会場の視線が一斉に集まり、鼓動がうるさいほどに高鳴る。

 それでもコレットは、おずおずと彼の手を取った。



 公爵夫妻が温かな眼差しで見守る中、楽団の音楽が鳴り響く。



「一曲、お相手願います」

 優雅にエスコートされ、ダンスが始まる。



「わ、私……あまり上手では……」

「大丈夫。全部、私に任せて」



 フェルナンドの導きに身を委ねると、不思議と足が自然に動き、旋律に溶け込んでいく。

 見つめ合う視線。彼の手の温もり。

 その全てが、まるで夢の中にいるようで――会場中の人々がうっとりと見惚れていた。



 曲が終わり、拍手が響く。

 しかしフェルナンドは、彼女の手を放さず言った。

「もう一曲……お願いしてもいいかな?」



「で、ですが……」

 2曲続けて踊るのは、婚約者かそれに近しい者の証。令嬢たちのざわめきが走る。



 けれどフェルナンドは真剣な眼差しで囁いた。

「お願いだ。私と、もう一度」



 その声音に抗えるはずもなく、コレットは頷いた。

 2曲目が始まり、会場は大きなどよめきに包まれる。



 ――これは、事実上の婚約宣言。

 令嬢たちの嫉妬の視線すら、もはや届かない。



 そして曲が終わると同時に、フェルナンドは侍従に合図をした。

 差し出されたのは、大きな赤薔薇の花束。



 フェルナンドは片膝をつき、その花束を捧げ持ちながら、熱を帯びた瞳でコレットを見上げる。



「コレット――心から君を愛している。どうか、私と結婚してほしい」



 会場中に衝撃の声が響く。令嬢たちが悲鳴を上げ、それでも誰一人、二人の間に割って入れる者はいなかった。



 夢にまで見た光景が、いま目の前で現実となっている。

 込み上げる涙が頬を伝い、それでも笑顔でコレットは答えた。



「……はい。私でよければ」



 その瞬間、公爵夫妻を筆頭に、会場は拍手喝采に包まれた。

 信じられない。けれど、確かに現実。

 コレットは胸いっぱいの幸福に包まれ、夢うつつのように立ち尽くしていた。





---



――そして、その光景を天界から見下ろす影がひとつ。



「やったぁ♡ こっちのカップルも上手くいったわ! 私ってば、やっぱり天才♪」

両手を叩きながら、女神ルミエールは満面の笑み。



「王子を図書館に導いて良かったわぁ。……ふふ、さて、次はどんな恋を覗き見しようかしら?」



恋を司る女神の悪戯は、今日も世界に小さな奇跡を運んでいた。

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