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【番外編】『公爵と初めてのお産~アリス誕生の甘々日記~』
ある日、ミレイはふとした瞬間に目眩を覚え、広間の椅子に崩れ落ちた。
「ミレイ!」
慌てて駆け寄ったアレクセイ公爵は、肩をしっかり支えながら低い声で言った。
「しっかりしろ。私がついている、大丈夫だ」
すぐに医師を呼び寄せ、診察を受けさせる。しばしの静寂ののち、医師はにこやかに口を開いた。
「……おめでとうございます。ご懐妊です」
その瞬間、ミレイは思わず口元を押さえ、頬を染めた。胸の奥が熱くなる。
だが隣でアレクセイ公爵は、普段の落ち着きを失ったように息を呑み、わずかに瞳を見開いた。
「……懐妊……か」
ゆっくりと呟いた彼の目から、ひと筋の涙が零れ落ちる。
いつも穏やかで冷静な彼の姿からは想像できないほど、感情の色があふれ出していた。
「アレクセイ様……?」
驚いたミレイとマリーが、同時に声を漏らす。
公爵は一瞬言葉を探すように唇を震わせ、そしてミレイの手を強く握った。
「……ミレイ。君が私に、こんな幸せを与えてくれるとは……。必ず君と子を守る。どんなことがあろうとも、私の全てを賭けて」
その真剣で熱を帯びた言葉に、ミレイの目からも涙があふれた。
「……私も、幸せです。アレクセイ様」
二人は抱き合い、胸がいっぱいになるほどの幸福を分かち合った。
屋敷に差し込む柔らかな陽光は、新たな命を宿した二人を祝福するかのように、静かに二人を包み込んでいた。
---
それからというもの、公爵の甘やかしはますます加速した。
ミレイが屋敷の中を移動する際は、必ず抱き上げられ、彼の逞しい腕の中で過ごすのが日常となった。
「アレクセイ様、歩けますから……」
「駄目だ。少しの負担もかけたくない」
そんなやり取りが繰り返され、ミレイは頬を赤らめるばかりだった。
とうとうマリーが眉をひそめて口を挟む。
「少しは落ち着きなさいませ、アレクセイ様。妊婦も多少は歩かなければ、出産のときにかえって辛いのですよ」
公爵は不満そうに口を閉ざし、しかし腕の中のミレイを見つめて、ようやくしぶしぶと彼女を床に降ろした。
「……わかった。だが無理は絶対にするな。私が見ていないときでも、だ」
「……はい、ありがとうございます。アレクセイ様」
安心しきった笑顔を見せるミレイに、公爵は小さく息を吐いた。
---
そしてついに、お腹の中の命が生まれようとする日が訪れた。
ミレイは陣痛に苦しみながらも、必死に声をあげて出産に挑んでいた。
「ミレイ!」
出産の部屋の前を、公爵は落ち着きなく歩き回っていた。
中から聞こえてくる叫び声に、胸が張り裂けそうになる。
「もう耐えられん、私も入る!」
勢いよく扉に手をかけた瞬間、使用人たちが慌てて公爵を押しとどめる。
「アレクセイ様、お控えください! ここは婦人たちにお任せを!」
「だが、ミレイが……!」
普段は冷静な彼が、子供のように感情をあらわにしていた。
その時、産声が響き渡った。
「おぎゃあ――!」
廊下にまで届いたその泣き声に、公爵の足が止まる。
肩を震わせ、目を伏せたまま、ゆっくりと呟いた。
「……生まれたのか……私の……子が」
やがて扉が開き、助産を終えた侍女が笑顔で告げる。
「元気な女の子ですよ。」
公爵は両手で顔を覆い、声にならない嗚咽を漏らした。
そして部屋に通されると、汗に濡れ疲れ果てたミレイと、彼女の腕に抱かれる小さな命を見つめ――
「……ミレイ。ありがとう。君と、我が娘を……私は生涯かけて守る」
ミレイは微笑みながら子を抱き寄せ、涙ぐむ公爵を見上げた。
「……アレクセイ様、私、本当に幸せです」
その言葉に公爵は深く頷き、母と子を包み込むようにそっと抱きしめた。
屋敷に満ちた産声と涙と笑みは、これ以上ない幸福の証だった。
---
(後書き)
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
公爵が感情を爆発させるのは珍しいですが、それだけミレイや新しい命を大切に思っている証拠です。
アリス誕生の瞬間、二人の「家族」としての物語が大きく動き出したのだと思います。
次回はまた別の甘々エピソードをお届けできればと思っていますので、ぜひお楽しみに✨
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