魔導兵器マギアーム

白石華

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魔導兵器マギアーム

酒場→宿屋、そして就眠

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「はーっ。魔力も沢山、貯まったし。ご飯が美味しい!」
「ならよかったです。」

 酒場兼レストランに着くと、俺自身も疲れ切っていたし飯にありつかせて貰う事になった。ここも火山灰と木に近い形のサボテンで作った調度品で整えられているな。俺は火山灰を固めて焼いたガラス質に近い陶器の器で、マーブルスノウから搾った汁で仕込まれた甘口の強めの酒を呑みながら、鴨に姿が近い鳥の肉を食べている。

「そういうのでいいの?」
「いえ。一度に食べ過ぎるとぐっすり寝てしまう。夜もあなたの護衛がある。夜は長いし眠気覚ましにチマチマつまんで腹ごなしはしますよ。」
「そっかー悪いね。」
「いえ。その代わり、あとで仮眠もさせてください。」
「うん。体力自慢は、今は無理だよね。」
「はい。」

 さっき俺はコリスさんに散々、吸い取られた後だった。それに、今の俺は、この人との依頼なら、長く続けさせてもらうためにも達成したい気分だった。手なんて抜けるはずがない。

「私は、明日の出発もあるから多めに食べさせてもらうかな。」
「食ってください。」

 この人はこの人で、相当、魔力と体力を貯め込んでおけそうだ。火山灰から作ったガラスの器で、マーブルスノウを千切った花びらがクラッシュした氷に混ざった口当たりの良さそうな発泡酒を呑みながら、キノコと山菜と塩漬けにした魚を煮込んだシチューと……固めのパンをかじっている。

「んーーーーっ、うまい!」
「俺もです。」

 普段は冒険用の携帯食と果物と酒と水しか摘まんでいないと、こういう料理がありがたい。

「少しぐらいなら向こうでもなんか料理しようかな。」
「塩漬けか燻製で山菜の煮込みならやれるんじゃないですかね。それなら味も整えなくていい。」
「うん。やってみよう!」

 水なら困らない国だからやれることだな。煮沸消毒はしないとだが、それなら素材も全部煮てしまえばいい。

「ほんと。川からも温泉が出ているし足湯もあるしオアシスもあるしで、ここは綺麗だよね。」
「はい。」
「冒険しながら観光もやれるから、ホントここは天国だよ~。」

 コリスさんは随分とここを気に入ってくれていた。普段はどういう所にいたんだろう。俺は夜食用の料理を包んで貰って、ここを後にした。

 ♦♦♦

「ん……おやすみなさい。」
「お休みです。」

 ベッドの手前に置いてあった、マジックアイテムの光球を消すと。僅かな残光で薄暗い部屋になる。

「俺はこっち……っと。」

 ドアの前に座ると、俺は足元に光球を置いて盾を背もたれ、正確には持っている側の肩をもたれさせて大剣を床に刃先を当てて持つ。宿屋には警備員もいるし防犯用のマジックアイテムの仕掛けもあるし、コリスさんが仕掛けた結界もある。が念には念をだ。でないとなんのための依頼か。

「ん……。」

 夜は静かで真っ暗だ。起きていても何もすることはないが何か起こった時のための待機というのはそういうものだろう。俺は意識をドアの外と窓の外に集中させて、夜が更けるまでそうしていた。
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