精霊都市の再開発事業

白石華

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第一章

着任式を行って

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「そんじゃ。カンパーイ。」
「「「乾杯!」」」

 従業員も全員、集まったところで乾杯をして、商店街で買ってきたオードブルをつついたのだが、これがうまい。

「へー。意外とというか、見た目が茶色かったり素材の色まんまなだったりなだけで。
 味が上品でうまいな。」

 見た目はよくあるオードブルなのだが、味の例えがなんというか……料亭で出してくるようなダシの利いたうまさだった。揚げ物も卵焼きもうまい。佃煮も濃いタレが掛かっているが身がふっくら炊けていてうまい。

「海産物とか、ここで獲れたのを出しているもんね。場所も元々は観光地だもん。」
「なるほどなー。」
「後は……まだ十分、旅館としてやっていける建物や割烹料理屋とかもあるらしいですよ。
 そういうのも確認していきましょう。」
「オーケー、ベルさん。この状態の町を一度みんなで回ってみるか。
 ガイドは町役場の人にアポ取って回らせて貰おうぜ。」

 サシガネとベルさんに教えて貰って俺は納得する。人を呼べる施設と、建物さえ再建築したら、また人が集まる伸びしろはあるって事か。

「さっきサシガネと話した時は……個々の建物を弄らせて貰うから。
 最初に霊社霊閣から始めようって言ったが……。それは外せないと思うし。
 その次は商店街かレジャー施設のどっちかがいいかな。」
「それなら商店街と駐車場を先に再建したらいいんじゃない。
 レジャー施設ってついでに来てくれる人たちにも期待するんでしょ?
 レジャーに来たのに商店街が再建されていないんじゃ来た人だってレジャーしかやんないわよ。」
「そうですね……それでもバーベキューとかキャンプ用の物があってもいいと思いますが。
 トンカさんの場合は再建築も進行が遅れるって事は無いと思いますし。
 先に商店街にしてしまっていいと思います。」
「よし来た! あるのは確か……商店街と、旅館と。水族館と博物館と美術館に図書館。公園。
 魚市場と産地直売場……それと、個人経営の大型ショッピングモールだな!
 レジャーに来た人が買い物と観光に寄りたそうなところは全部直すぞ!
 どういう感じに直して欲しいのかは町役場の人と打ち合わせ済みだが。
 俺たちも回って確認するか?」
「そこまでしちゃっていいの? 折角決まったのにこんがらからない?」
「その時は役場の人に確認して止めて貰おう。」
「そうねー。」

 俺の案に最後はサシガネも了解してくれた。善意でやった活動でこんがらかるってのは、委託側の現場あるあるだからな。

「あはははは! あたし、トンカ社長が自分の事、普段から脳筋ゴリラって言ってるのに。
 私の方が何言っているか全然、わかんなーい!」

 全く会話に入れなかったカンナが既に酔っぱらったように終わったところを見計らって陽気に騒いでいる。

「悪いな、カンナ。とりあえず現場でやってくれればいいよ。
 仕事の話しちまったからよ。着任式だから飲んでてくれればいいぜ、」
「うん! あのさー、社長。社長ってさー。いい人だよねー。」
「何だよいきなり。」

 どの脈絡でそう思ったのかサッパリだから何で言われたのか分からない戸惑いが先に来る。

「だってさ。現場ってさ、言われたことやってればいいし。
 言われた事と違っていたら文句言う立場じゃん。」
「それでいいんだぞ。俺がやっているのは、しようと思ってやれる事じゃない。
 予算と資源と納期があって。言われたことやんなかったら契約違反でこっちが被るんだよ。
 あくまで俺がこうやれるのは……あっという間に工事がやれて資源と納期とやり直しがきく。
 精霊建築士だからだ。」
「うん。でもさ。こういうのって。
 やりたくてもやれずに、間に挟まれて潰れちゃう人だっているんだよ。」
「まあ、そうだな。」
「あたしの親父がそうだったからさ。私は絶対に精霊建築士になるんだって決めたの。」
「お前んとこのとーちゃん、そうだったのか。」
「まあね。いい人って言うか。家族や友達からはいい人だって言われてても。
 仕事周りからは、あんまりいい印象なかった人だから。本人も持たなくなっちゃって。
 ガタイはいいから働けるし回して貰えるしで今はバイト、転々としているんだ。」
「魔法のスキルが無かったら精霊建築士にはなれねーからな。」
「うん……あたしも。精霊建築士になったら親父の事。また雇ってあげようと思って。
 だから社長、いっぱい教えてね。」
「ああ。いいんじゃねーか? やってみろよ!」

 俺はカンナに活を入れたが、つい肩まで叩いてしまいそうになって留まる。サシガネにも頭わしゃわしゃってやりそうになるが。よくよく思えばこういうの、女子しかいない社員の前でボディタッチの類に入るのではなかろうかと冷や汗ものである。

「どしたの、社長?」
「ああ、何でもない。どうも俺も昔かたぎなところがあってな。ってオイ。」
「うう……ぐすっ。カンナさん……。」
「何と立派な……よよよ。」

 サシガネとベルさんがカンナの話でもらい泣きしていた。

「だって! 今の話で泣かないやつがいる!? 私だって仕事やれていい人だって思われたいもん!
 対人恐怖症は伊達じゃないのよ!? どんだけハンデあるか知っている?」
「そうですね……事務仕事と対人受付もホント……ああ。話を聞いただけでどんな目に遭わされたか。
 大体予想が付きます……。」

 なんか、サシガネとベルさんの、これまでの仕事人生にぶっ差さったようだ。

「そうだな……仕事って仕事がやれるかどうかもだが、人間関係とか受注仕事とか。
 どんどんストレスが溜まっていく作業をこなしていくのもあるからな……。
 対人関係で一つ一つ、ショック受けていたら仕事なんて務まらないし。
 そういうのは向こうも了解してくれているからいいんだが……。
 俺もそういうの、いやでいやで仕方なかったから精霊建築士になったからな。」

 俺たちの仕事人生を振り返ってしまい。今の楽(努力の結果、そうなったんだけど)な状況に感謝しつつ、何か最後は。

「よーし、カンナさんを立派な精霊建築士にさせるけど。
 資材管理とか土地区画の確認とか、そういうのも勉強したくなったら教えるから!」
「ありがとー、サシガネさん。」
「私も……受付や電話応対など、接客業と人とのかかわりで何かやり方などあれば。」
「ああ。それも知っとく!」

 いかにカンナを立派な精霊建築士として他にもサブスキルを持たせられないかという話で盛り上がり……。

「そーれ、ワッショイ、わっしょい!」
「あはははは! きゃー!」

 なんか最後はカンナをみんなで胴上げしていた。ホント、なんでこうなったんだ……。

 ・・・・・・。

「ふー……風が気持ちいい~……。」
「お疲れ様、社長。」
「サシガネに社長って言われるようになったんだな。」
「そうだね、幼馴染だし、今まで名前で呼び合っていたもんね。」

 その後、みんなが酔いつぶれたところを見計らって屋上で涼んでいようかと思ったら。サシガネも付いてきた。

「私の事、ここで雇ってくれたもんね。」
「ああ。」
「対人恐怖症だって知ってて、私の事、雇ってくれて、仕事までやりやすいようにしてくれるの。
 世界中でもトンカだけだよ。」
「んー……金と力があればそうしたいって思っているやつはいると思うぜ。
 俺はそっち側に行けただけだ。」
「でも、本当にそうしてくれたのは、私にとってはトンカだけだから……。」
「何だよ、急に。まだカンナの話で引きずってんのか?」
「うん。そう……。」
「ショックな話は従業員間であっても引きずらない。これは仕事の鉄則だぜ。」
「分かっているけどさ。だけど……。」
「ん?」

 サシガネが俺の顔をじっと見る。

「こんな形で働けて、みんなとだってやっていけたらさ。
 きっと潰れなかった人だっていたんだろうなって思っちゃったの。」 
「それは。自営業やっている人だったら大体、心当たりはあるだろうな。」
「うん。トンカ……。」
「ああ。」
「ここでの仕事、絶対に成功させようね。」
「そうだな。ん……?」
 
 サシガネの顔が寄ってくる。

「ちゅ。」
「んんんんん!?」

 サシガネにいきなりキスされてしまった。

「あはははは! じゃーねー! ニブチンさん!」
「お、おい! ニブチンって何だよ!?
 あと俺が散々、我慢していたのにボディタッチ通り越してキスすんな!」
「我慢なんてしなくてよかったのに!」
「んなあああああ!?」

 いきなりサシガネにヒットアンドアウエイされて逃げられた俺は爆弾発言を言われ。

 どさっ。

「あ……っ。」

 追いかけてしまった俺はサシガネを屋上の出入り口で壁ドンしてしまう。

「あ……どうすんの。これから。」
「これからって、俺だってそこまで鈍くないからな。」
「うん……だってこれからトンカ。他の女の子とだって仲良くなっちゃうと思うし。
 私が最初じゃなかったら、厭だったの。」
「どんな理由だよ……。」
「それだけで十分だよ! 今までだって何もしてこなかったんだから。
 最初ぐらい私のいう事を聞け!」
「んだよ……全く……。俺だって。そこまで言われて乗り気にならない訳。ねーからな。」
「私だって、もっと早くこうして貰いたかったの! だけどもう……案の定。
 みんなと初日から仲良くなってんじゃん! これまた、私が我慢していたら。
 どんどんおいてかれるパターンでしょ!?」
「え。そうなの?」
「そうだよ! だから……最初は私にしてよ。」

 そんなうまい話あるかな……と思ったが、サシガネは真剣で。

「だったら、社宅に戻って。俺の部屋に来いよ。」
「うん……。」

 サシガネを俺の部屋に連れ込んでしまった。 
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