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僕とお姉さん
誘われるまま化粧へ
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「お化粧はしてこなかったのね。」
お姉さんが僕の顔に下地を整えながら話している。
「うん。僕、男の子だって言ってあるのに。
女の子の姿で出入りしたら怪しまれると思って。」
「私は構わないわよ。」
お姉さんはアッサリと僕の女装を気にしないつもりでいてくれているようだ。僕としてはこれから大学にも通うようになるのだから、そんな訳にはいかないのだけど。
「それに大学生でしょ? 通う学校も共学だし。
大学生になったら、女装癖もある男の子って受け入れられるわよ。」
「そういう心の広い人とかもいれば、毛嫌いする人だっているんだってば。」
「あら。君の女装趣味って、嫌いな人に遠慮するぐらいで隠しちゃうの?」
「う~ん。ご近所さんだってそこまで心が広いとは限らないよ。」
そううまくいくかな。こういうのってちょっとずつカミングアウトしていくもんじゃないのかな。僕はそう思ったが、お姉さんは僕の女装をいたく気に入ってくれているためか、とても僕の肩を持ってくれている。それは素直に嬉しいことだから。あとは僕が自分で何とかすればいいだろう。
「今のところは、僕が女装を披露するのはお姉さんの前だけでいいよ。」
「あら、言うようになったわね。」
僕の返答に、お姉さんは随分と嬉しそうだった。
「じゃあ、そろそろお化粧していくわよ。」
「う、うん。」
女の人がするお化粧。僕がしてもいいんだという、子供の頃に感じた、ちょっとした悪戯心と、女の人がする行為を僕がしてしまっているという何か不思議にドキドキした気持ちと、お姉さんが僕の顔に触れてくれているという行為に、いつの間にか僕は浸ってしまっていた。それは一人でそうする時にも気持ちは変わらなくて、その時の気持ちを思い返すようにしてしまうと、いけないことをしているというドキドキが止まらなくなっていた。僕ってそういう事にドキドキする人間だったんだと、自分の中の願望を知ってしまった気分にもなった。
「はい、まずはファンデーションからね。ちょっと厚めに塗ってみようか。」
「ん……っ。」
お姉さんが指先で僕の顔に触れる。リキッドタイプから塗っているから目の回りや頬、あごの回りと塗っていかれていくが、指先でなぞるように僕の顔に触れられる感触に、何かぞわぞわした気分になってしまう。
「うっ。」
唇の周囲をなぞられると、動悸がしてしまっていた。
「ごめんなさい、唇は厭だった?」
「そ、そんなことはないから続けて大丈夫……。くすぐったかっただけ。」
「ええ。」
「う……。」
今度はお化粧用のパフで頬や額を粉の方のファンデーションが付けられていく。
「あとは。コンシーラーで顔の見せたくないところを隠して。」
部分用ペンのようなもので僕の顔から浮き出てしまっていたシミなどまで綺麗に消えていった。
「お姉さん、随分本格的なんだけど。」
「だって、人の化粧って楽しいんだもん。」
お姉さんはアッサリ答えていたが、そういうものなんだろうか。
「その内、君にもお化粧、して欲しいな~。」
「う、うん。」
「二人で歩いて、お化粧用品とかも見回ってみない?」
「い、いいけど。」
お姉さんは随分と乗り気だった。僕も下心なしでお誘いに乗るくらいには興味はあるし、二人で行けば怪しまれなくなるかなという、やはり、女装に対する後ろめたさもあったが。
「はい、今度はアイライナーね。」
「うん。」
お姉さんが僕にしてくれる化粧も整ってくると、段々、僕も乗り気になってきた。結構単純なのである。
「最後は……口紅。」
「んっ。」
お姉さんが唇の先にだけ薄く塗った口紅にグロスを塗ろうとするが。
「せっかくだから、グリッターが入っているのにする?」
「そうだね。」
終わる頃には僕もスッカリ、化粧に夢中になっていた。
「はい、終わり。ブレストパウダーも付けておくわね。」
「うん。」
ここまでしてもナチュラルメイクの範疇になるのだから、女の人の化粧はとても時間がかかるのだろう。本当だったら更に付けまつげやマスカラもあるのだから。アイライナーだけでも目の周りはパッチリするのだけど。
「君の場合は、ちょっと切れ長でまつげも長いし。
アイライナーだけで目元をキリっとさせたわね。」
「そうなんだ。」
「うん。男の子に生まれてきたんだから。
女装でもキリっとさせられるときはそういうのも個性にしましょう。」
お姉さんの男の子を女の子のような姿にすることに対するこだわりを見てしまった。
「うん。綺麗よ。」
僕の目の前にある鏡台の鏡を見て、僕を見るようにお姉さんがいう。
「ありがとう。綺麗になれたんだ、僕。」
「君は最初から綺麗だったわよ。」
「う……。」
何やら気だるいような雰囲気になってきた。
「ねえ、キスしてもいい?」
「え?」
お姉さんにうっとりした表情で見られている。
お姉さんが僕の顔に下地を整えながら話している。
「うん。僕、男の子だって言ってあるのに。
女の子の姿で出入りしたら怪しまれると思って。」
「私は構わないわよ。」
お姉さんはアッサリと僕の女装を気にしないつもりでいてくれているようだ。僕としてはこれから大学にも通うようになるのだから、そんな訳にはいかないのだけど。
「それに大学生でしょ? 通う学校も共学だし。
大学生になったら、女装癖もある男の子って受け入れられるわよ。」
「そういう心の広い人とかもいれば、毛嫌いする人だっているんだってば。」
「あら。君の女装趣味って、嫌いな人に遠慮するぐらいで隠しちゃうの?」
「う~ん。ご近所さんだってそこまで心が広いとは限らないよ。」
そううまくいくかな。こういうのってちょっとずつカミングアウトしていくもんじゃないのかな。僕はそう思ったが、お姉さんは僕の女装をいたく気に入ってくれているためか、とても僕の肩を持ってくれている。それは素直に嬉しいことだから。あとは僕が自分で何とかすればいいだろう。
「今のところは、僕が女装を披露するのはお姉さんの前だけでいいよ。」
「あら、言うようになったわね。」
僕の返答に、お姉さんは随分と嬉しそうだった。
「じゃあ、そろそろお化粧していくわよ。」
「う、うん。」
女の人がするお化粧。僕がしてもいいんだという、子供の頃に感じた、ちょっとした悪戯心と、女の人がする行為を僕がしてしまっているという何か不思議にドキドキした気持ちと、お姉さんが僕の顔に触れてくれているという行為に、いつの間にか僕は浸ってしまっていた。それは一人でそうする時にも気持ちは変わらなくて、その時の気持ちを思い返すようにしてしまうと、いけないことをしているというドキドキが止まらなくなっていた。僕ってそういう事にドキドキする人間だったんだと、自分の中の願望を知ってしまった気分にもなった。
「はい、まずはファンデーションからね。ちょっと厚めに塗ってみようか。」
「ん……っ。」
お姉さんが指先で僕の顔に触れる。リキッドタイプから塗っているから目の回りや頬、あごの回りと塗っていかれていくが、指先でなぞるように僕の顔に触れられる感触に、何かぞわぞわした気分になってしまう。
「うっ。」
唇の周囲をなぞられると、動悸がしてしまっていた。
「ごめんなさい、唇は厭だった?」
「そ、そんなことはないから続けて大丈夫……。くすぐったかっただけ。」
「ええ。」
「う……。」
今度はお化粧用のパフで頬や額を粉の方のファンデーションが付けられていく。
「あとは。コンシーラーで顔の見せたくないところを隠して。」
部分用ペンのようなもので僕の顔から浮き出てしまっていたシミなどまで綺麗に消えていった。
「お姉さん、随分本格的なんだけど。」
「だって、人の化粧って楽しいんだもん。」
お姉さんはアッサリ答えていたが、そういうものなんだろうか。
「その内、君にもお化粧、して欲しいな~。」
「う、うん。」
「二人で歩いて、お化粧用品とかも見回ってみない?」
「い、いいけど。」
お姉さんは随分と乗り気だった。僕も下心なしでお誘いに乗るくらいには興味はあるし、二人で行けば怪しまれなくなるかなという、やはり、女装に対する後ろめたさもあったが。
「はい、今度はアイライナーね。」
「うん。」
お姉さんが僕にしてくれる化粧も整ってくると、段々、僕も乗り気になってきた。結構単純なのである。
「最後は……口紅。」
「んっ。」
お姉さんが唇の先にだけ薄く塗った口紅にグロスを塗ろうとするが。
「せっかくだから、グリッターが入っているのにする?」
「そうだね。」
終わる頃には僕もスッカリ、化粧に夢中になっていた。
「はい、終わり。ブレストパウダーも付けておくわね。」
「うん。」
ここまでしてもナチュラルメイクの範疇になるのだから、女の人の化粧はとても時間がかかるのだろう。本当だったら更に付けまつげやマスカラもあるのだから。アイライナーだけでも目の周りはパッチリするのだけど。
「君の場合は、ちょっと切れ長でまつげも長いし。
アイライナーだけで目元をキリっとさせたわね。」
「そうなんだ。」
「うん。男の子に生まれてきたんだから。
女装でもキリっとさせられるときはそういうのも個性にしましょう。」
お姉さんの男の子を女の子のような姿にすることに対するこだわりを見てしまった。
「うん。綺麗よ。」
僕の目の前にある鏡台の鏡を見て、僕を見るようにお姉さんがいう。
「ありがとう。綺麗になれたんだ、僕。」
「君は最初から綺麗だったわよ。」
「う……。」
何やら気だるいような雰囲気になってきた。
「ねえ、キスしてもいい?」
「え?」
お姉さんにうっとりした表情で見られている。
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