君と桜が咲く頃に

白石華

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君と桜が咲く頃に

街中はすでに桜一色

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 シャンシャンシャン、シャンシャンシャン。

 テナントの並ぶショッピングビルの中で、そこのビルのテーマソングが内装に合わせてかスタイリッシュであるもののアゲすぎず軽すぎず抜け感が程よくあってテンポが心地よいところで保たれたところで流れている。

「ねえ、ねえランラン。」

 俺、塚本蘭丸(つかもと らんまる)を呼んでいる。

「んー? リンリン、何?」
「桜の化粧水。ボトルで見つけちゃった。
 季節限定品だって。今は桜の咲く季節だからね。」

 リンリン、俺の彼女である、増林 鈴(ますばやし りん)が化粧水の入った瓶を片手で持ってチャプチャプ振って俺に見せる。

「何だよリンリン。今日はそれか?」
「そー。それ。」

 リンリンランランと呼び合うような。それが今の俺たちの関係。
 彼女とは結婚はしていないが。ここ、俺たちが働いているのはまた別の場所だが、都心から少し離れた郊外のベッドタウンで2LDKのマンションの部屋を借りて住んでいる。
 今、俺たちがいるのはその街の交通手段の一つの電車が停まる駅ビルの中にあるテナント。ボディケア用品を扱う店だ。下部にある在庫を置く引き出し以外は透明なプラスチックの棚と仕切りになった外観で、レジ近くの、店のロゴマーク「Drop of Fairy(妖精の雫)」を見せる部分のみが西洋のデザイン画で見るようなカラフルな花弁と黄色のツタがはびこる背景と蒼の書き始めと書き終わりがくるんくるんして背景のツタと同化している筆記体のアルファベットのロゴマークと現在のポップな可愛い印象にリデザインしたようなデザインになっていた。レジ奥の壁には設置された大型液晶画面で桜の散る映像が流れている。
 そう言えば、ビルの入り口部分のみの幅で、そこから見上げると一階から最上階まで張られた窓型液晶にも桜の散る光景の映像が映されていた。入るときのビルの光景もそうだが引いて遠くからビル全体を見渡したときのデジタルの映像は派手で見栄えがいい。これからビルに入ろうと思うと心が弾んでくる。
 話をボディケアショップに戻して、店員の衣装は現代的で、肘捲りがしやすそうな留め具のあるシャツと、動きやすそうなパンツと靴、温かみのある化粧をして、エプロンを身に付けている。今は俺たちが喋っているからか、店員が来る気配はない。デートの邪魔はしないということだろう。他の客の応対をしているようだ。

「いつもの。ボディ用化粧水って書いてあるし、量だって十分でしょ?」
「そうだな。買ってくのか?」
「うん。ランランに同意を得てからと思って。いい?」
「おっけー。」
「よしきた。買っちゃうね。」

 歯を見せてニッと悪戯っぽく笑い、いそいそとレジに向かって店員に声を掛ける俺の彼女。いつもの、と言うのは―
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