未央記〜運命の姫は消滅する〜

涼-りょう‐

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悪夢と危機

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「私の思いを無下にするなんて、本当に氷の心しか持っていないのですね」


女の声
そなたは誰だ
姿が見えぬ


「あなたはそうやって、人の心も、命も、思いも、簡単に壊す。…ご自分のしたことに、何の気持ちも浮かばないのですか…?」


…何を言っている
他人がどうなろうとも、私には関係のないことだろう
そなたは形式上は私の婚約者ゆえ、それなりに丁重に接している
それの何が悪いのだ


「ふふ…。お分かりではないのですね。無情というのは、人を、大切な人を傷付けるもの。あなたなら、分かるはずですよ…」


……うるさい、消えろ


「未央様!未央様!!」

「ん…」


目を開けると、侍女が私の顔をのぞいていた


「目を覚まされましたか。良かったです」

「なぜそなたがここに。入っていいとは言っておらぬはずだが」

「呼びかけてもお返事が無かったので独断で入りました。それに未央様が険しい顔をなさっていたので、悪夢を見ているのかと心配だったのです」


悪夢…?
さっきのは夢、だったのか


「心配は要らぬ、問題ない」

「ですがお辛そうです」

「…問題ないと言っているだろう。着替える、手伝え」

「…はい」


服を着る
侍女から朝餉を受け取って食べる


「外を歩く」

「はい。珒卿殿には…」

「伝えるな。自由に歩かせろ」

「かしこまりました」


朝餉を食べ終え、外に出る
しばらく歩き、あの店の前に着く
歩く足を止め、女子と食べた麺を思い出す


「深児様のことを?」

「違う、退屈になったら一人で来ようと思っただけだ」

「…深児様のことを気にかけておられる証拠ですよ、きっと。何も思わない方ならば、この店の前で足を止めることはありませんから」


私が、あの女子を気にかけている?
…なぜ、気にかける必要があるというのか


「馬鹿なことを言うでないわ。私は消滅のことだけを気にかけている。あの女子が何をしようと、私の消滅の事実は変わらぬ」

「未央様は消滅のこと以外は頭に無いのですね」

「そなたがあの女子を離すなと言うからだぞ、仕方なくそれを守っているだけだ」

「守って頂いているのは嬉しいです、やはり未央様はお優しいですね」

「誰が優しい」

「未央様ですよ?」

「笑わせるな」

「ふふ」


…全く、何を言っているのか
私が優しいなど、あり得るものか


「そこのお嬢さん」

「…」


呼ばれた方を見ると、ゴマをすりにでも来たような人間が立っていた


「お嬢さんに見てほしいものがある、来てくれないか」

「未央様」

「…よい、行こうではないか」

「…どうぞ、こちらです」


案内に付いていくと、小さい家に着いた
すると侍女の声が聞こえなくなり、後ろを向くが、消えていた


「…そうか。やはり私を狙っていたか」


「ふふ。流石、穆公爵のご令嬢だな。こうなっても冷静か」

「好きにすればいい」

「すまねえな、恨むなら父親を恨め。父親のせいでこうなるんだから」


…あやつは父親などではない
人間でさえ思っていない
人の面を被った鬼、だ
そんな奴の血が流れていると考えただけで吐き気がする


「望みはあやつの命か」

「ああ。…ふっ、令嬢なら父親を父上だとか父だとか呼ぶんじゃねえの。あやつって、父親とも思っていないようだな」

「母を捨てた愚かな鬼だ」

「ふっ。一緒に来てもらおうか。ここじゃあ、すぐ見つかるだろうからな」


目の前の男に連れられ、馬車で移動することになった
…目を覚ましたら必ず夜月に行って珒卿に助けを求めること
それくらいのこと、侍女は分かっているだろう
私の侍女ならば、分かっていて当然のこと


「安心しろ、お前に危害を加えるつもりはない。だがあんたの父親次第では、約束できないぞ」

「言ったはずだ。…好きにすればいい」


男がニヤリと笑う
どのようなことをされても構わぬ
消滅に一歩近づくのだから
こうなってはあの女子も、抗えるまい
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