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トゥーリス、ログラーツ大戦編

33.魔物との遭遇

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エレミヤとギリウスが出会って夜が明けた。
野宿で二人で寝たのだが、肝心の、がない。
そう、人間が生きるために必要なだ。

「う~……。お腹空きました、ギリウスさん…。」

エレミヤが辛そうな声を出す。

「もうちょっと待ってろ。っていうか人に背負われといてなんだよそれは。」

とギリウスも辛そうにしながら言い返す。

「ちなみに俺も腹減った。」

と補足もした。

「ご飯ないんですか…?」

エレミヤがギリウスに聞く。
ギリウスは表情を変えずに

「ない!」

と痛恨の一言。

そう、食べ物がないのだ。
これは流石のエレミヤもやられている。
人間の食欲は最強をも下すらしい。 

ギリウスの返事を聞いたエレミヤは力を全身から抜き、ぐで~…とギリウスに背に干される形となった。

「お腹…空いた…。」

昨日から何も食べていなければそれはお腹空きますよね。 
当たり前ですよね。

「なんか食べ物とか落ちてないですか…?」
「うーん?食べ物?あ、来た。」
「来た?」

エレミヤはギリウスの指差す方向を見ると、明らかに猪っぽくない猪が居た。
猪なのに角が生えてるし、猪なのに目が赤い。

(突然変異?)

エレミヤははっきりとそう思ったのだが、エレミヤはギリウスに問う。

「…あれ、何です?」

エレミヤの率直な疑問にギリウスは答えてやる。 

「魔物。」

一言。 

「魔物?魔獣じゃないんですか?」
「はぁ?魔獣と魔物は別物だぞ。こんなことも知らんとは…。あんなところで一人でいたんだから冒険者だと思っていたんだが……。違うのか?」
「いえ。違いますよ…。それに、魔物かぁ。人間とばかり戦っていたから知らなかったなぁ。」
「え、今お前なんて言った?人間と……なんだ?」  
「いえ。なんでもないです。」

訝しがるギリウスにしれっと返事をして、エレミヤは何気なく軽く指を弾く。
まるでコインを投げるような仕草にギリウスは首を傾げる。

しかし、その意味はすぐに分かった。

魔物がドウと音を立てて倒れたのだ。
額に小さな風穴を開けて。
しかも、後ろの木を巻き込んだため、直立している木の幹の真ん中にも風穴が開いた。
そして……
その穴はどんどん連なっていき、時々動物の悲鳴が聞こえた。

「わぁい、お肉が増えましたね。」

無感動に淡々と喜ぶエレミヤにギリウスは目を瞬かせる。

「今、何をした?」
「ただ、指弾いただけですよ。」

エレミヤは今、極小の氷を弾いたのだ。
お腹が空きすぎて力が抑制できなかったらしい。

呆然としたギリウスは己の腹の虫が鳴く音で我に返った。

「お、おし!よくやったな、エレミヤ!」
「わぁい、それよりも調理して下さい。」
「は?おれ、料理なんぞ出来ないが?」
「は?」

エレミヤはまじまじとギリウスを眺めたあと、肩を落とした。

「兄弟揃って…」

しかし、その小さな呟き声はギリウスに聞こえることは無かった。

そしてエレミヤは立ち上がり、ギリウスを真正面から見、腰に手を当て、胸を張って言う。

「調理器具は持ってますか?」

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パチパチと焚き火が音をたてる。
それからエレミヤは動物の皮をはぎ、生肉を切って加工した。
その手際の良さにギリウスは感心したようにエレミヤの様子を眺めていた。

(ほぉ、上手いもんだなぁ。)

自分をまじまじと眺めているギリウスをエレミヤはちょこんと首を傾げて見る。

「なんですか?」

焚き火の上でギリウスの持っていたフライパンでその切った肉を炒め始めたエレミヤが言う。
香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

「ん、いや、なんも。」

エレミヤはふぅん、と呟いたあと、料理に没頭した。

「…せめてコンロがあればなぁ。」

と呟く。
たまにこっちに火の粉が飛び散ってきて熱い。

「全く、この世界は面倒くさい。」

エレミヤは飛んできた火の粉を自分の周りに纏わせた氷の冷気で凍らせた。

「うほ、うっまそ!」

エレミヤの作った料理を前にしてギリウスは興奮を隠せない様子だ。
それに、エレミヤはもう食べ始めている。

「おい。」
「ん?ひのうはらはひほらへへないほへおははすいてるんれす(昨日から何も食べてないのでお腹空いてるんです)。」
「飲み込んでから喋れよ…。」

呆れたように言いながらお肉にかぶりつくギリウスを見てエレミヤは微笑む。

(うわぁ…。こいつ、以外にきれいな顔してんな…。)

白い髪に氷のような青い瞳が彼の美貌を倍増させている。

ギリウスの視線に気づき、エレミヤは口の中の肉を飲み込み、口を開く。

「ギリウスさん?」

エレミヤは首を傾げた。

「いや…。ん、んまいな!よし、これからの道中、魔獣を狩りながら行こう!」
「はい!」

エレミヤはゆっくり立ち上がると、拳を突き上げた。

「師匠、待っててくださいねー!」

元気を取り戻したエレミヤにギリウスは笑う。

(やっぱ、子供は元気が一番だ。)

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「やぁ!」

エレミヤがギリウスから借りた剣で魔物を鬼神の様な勢いで狩っている。
最初はギリウスもエレミヤの凄い速さで振るわれる剣戟にポカーンとしていたが流石に5回目なのでもう慣れたらしい。
剣筋は全く見えないが。

そんな皮剥ぎ用のナイフを持ったギリウスの周りにはすでに加工され、持ち運べる状態の魔獣や動物達の皮が畳まれて置かれている。

「エレミヤぁー、もう持てないからいいぞー。」
「えー。もう全部倒しちゃいましたよー。」

確かに、エレミヤの周りには上半身と下半身がパッカリと分かれており、死んでいる魔獣しか居ない。

ギリウスはガックリと肩を落とし、その魔物も加工を始めた。

「ギリウスさん、戦ったり料理したりしないんですからこれぐらいはしてくださいよ。」

とエレミヤが不満そうに呟いた。

「だって、戦闘も料理も俺が入ったら邪魔だろ。」

エレミヤはうーん…と唸る。

「そうですかね?」

ギリウスは目を細め、

「俺とお前の戦闘能力の差は赤子と大人のそれだよ。全く、神様ってひどいねぇ。」

エレミヤも、こくこく頷く。

「確かにねぇ…。」
「いや、お前は神様の愛子だろ、逆に。」
「へ?」

エレミヤはパチクリと目を瞬かせ、素っ頓狂に言う。

そんなエレミヤにギリウスはため息をつく。

「ほら、早く行きますよ!あと五日間しかないですよ!僕もあなたも困るでしょう?」

とエレミヤが皮剥の手を止めているギリウスを急かす。

「はいはい…。」

ため息をつくが、実はこんな生活もいいのではないか、と感じているギリウスであった。
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