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トゥーリス、ログラーツ大戦編
34.エレミヤの正体の漏洩
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森に囲まれたある国の門前。
エレミヤはとても不貞腐れていた。
何故なら、エレミヤの目の前あふ国にはどう見てもトゥーリス王国ではなかったからだ。
「ここは?」
そうつっけんどんに聞くとギリウスは歯をキラリと輝かせ親指を自信満々に立てつつ、言う。
「ここはトゥーリス王国とログラーツ王国の中間地点にあるフォルスワーム帝国だ!」
そんなこと言われましても。
あと、あなたの兄と僕の師匠(同一人物)の葬儀まで4日しかないのですが。
「いや~…ここは美女が多いことで有名なんだよ…。一度来てみたかった…。」
ならあんた一人でいけ。
「ん?どうしたエレミヤ。男なら入るぞ。」
なら女でいいです。
はやく師匠のところに行かないと。
「うおーい!なんでエレミヤ、回れ右してんだー!」
エレミヤはイライラが抑えきれず、今まで心の中で言い返していたが、声に出してしまった。
「僕はトゥーリスへ行きますっ!この国には寄りません!」
ええ…。と片眉を落としたギリウス。
「大体、あなたの兄と僕の師匠の葬儀は四日後ですよ?!こんなところでのんびりしている暇はありません!」
「でもぉ…。エレミヤの傷をここで治そうと思ってぇ…。」
「屁理屈は聞き飽きましたよ!単に女性と戯れたいだけでしょうっ!」
「っぐ!!そ、そんなことはないぞ、だって…(ぼそぼそぼそ)。」
最後のところはなんて言ってるか全く分からなかった。
そしてギリウスは真剣な顔をしたと思いきや、エレミヤの耳に口を寄せた。
「最近、ログラーツの動きが活発なんだ。なにやら人探しをしているようでピリピリしてんだよ。それに、戦争の準備をしているらしいからな。観光客としてこの国に守ってもらおうも思ってな。」
「ログラーツが…。」
エレミヤは下を見た。
多分、自分のせいだろう。
しかし、それとこれとは話が違う。
一番弟子が師匠の葬儀に出ないとは野蛮にもほどがある。
それに、トゥーリス王国へ行けば、ジリアスの死因が分かるはずだ。
(まぁ、いざとなったら僕がすべてを背負えばいい。腹切りでも首吊でもドンと来いや!)
エレミヤはそう腹を決めた。
「最大二日。良いですね?」
エレミヤはギリウスにそう言った。
「あぁ。…もち…ろ……どわっ?!」
ギリウスの言葉が途切れたのは急に攻撃をされたせいだ。
ギリウスが慌てて体を横に動かさなければ、今頃ギリウスの首から上がなくなっていただろう。
ドスン、と重い音を立てギリウスが尻もちをつく。
そして投げられた剣はエレミヤの方に向かってくる。
エレミヤは半身を引き、飛んでくる剣の柄を握るとその剣を投げ返した。
そして一瞬見えた柄の色や形を記憶に反映させる。
「ニーガンさん…かな?」
エレミヤが森の方に呼びかける。
剣を投げた犯人はすぐに出てきた。
ニーガンは己に返された剣をエレミヤと同じようにとったらしく、もう手には剣が握られていた。
「流石ですね。」
とニーガンは言った。
エレミヤはギリウスの前に守るように立つ。
エレミヤは肩をすくめる。
「自慢話ではありませんが、これまで僕が攻撃の寸前までその気配に確信が持てなかったことはジュリバークさんとあなたしかいませんから。あと師匠。」
エレミヤは最後に忘れていたかのように付け足した。
ギリウスはというと、エレミヤの背中に隠れて息を呑んでいた。
(ニ…ニーガン…だと?!トゥーリス王国の異能力者筆頭…。「影梟」を宿し、透視や追跡など、夜行動することに適した、別名『暗殺者』。そんなすごいやつがなんでエレミヤのことを?!)
ニーガンはエレミヤに近づいていき、なんとそこで膝を折り、片膝を地につけた。
ギリウスは絶句し、エレミヤは、冷たく言い放つ。
「何がしたいのです?ニーガンさん。答え次第ではあなたをそこらの兵士のように氷漬けにしますから。」
それだけじゃない。
聞いての通り、ニーガンはエレミヤに向かって敬語で話しているのだ。
「はは。それはあんまりですな。」
苦笑いのニーガン。
「しかし、あなたの知っている通り、我が国は戦争と始めようとしております。どうかお帰りください。ルティーエス殿下。」
ギリウスはそこで初めてエレミヤの一つの顔を知った。
ルティーエス。
それはログラーツ王国の第四王子で「武」より「知」に長けていたもう亡くなったはずの王子。
見た目麗しく、心も澄み切っていたため、多くの乙女の憧れであったとか。
エレミヤはため息をつくとニーガンをジッと射止めるように見た。
「僕の正体を明かしてどうするのです?」
「少しは動揺するかな、と。」
「前から分かっていましたがあなた、正確悪いですよね。」
「ははははは。よく言われます。」
「じゃあ直したほうがいいですよ。僕が言わなくたってあなたが『トゥーリス王国の内通者』であることがバレてしまいますよ。」
「貴方様も性格がお悪い。ここで言ってしまわれているではありませんか。」
「おっと。」
エレミヤは、ニーガンがギリウスに向かって放った剣をギリウスの腰に帯びられている剣で受け止めた。
「いやぁ、危なかった!この人、僕の仲間なので死なれては困るんですよ。これからトゥーリスへ行こうとしているのに。」
「ですからログラーツへお戻りくださいと言っているのです。」
「嫌です。」
ニーガンは立ち上がり剣を切っ先に力を込めた。
二人は気軽に話しているように見えるが、その目は真剣そのものでお互いにせめぎ合っている。
エレミヤの持つ剣がキシキシと悲鳴を上げる。
エレミヤはそれを見るとその剣を投げた。ニーガンの剣も巻き込みながら。
ニーガンは己の剣が遠くへ飛んでいったのを見て口笛を鳴らした。
「異能力の戦いに持ち込みましたか。なるほど。そうなれば私はかないませんね。」
ニーガンは両手を上げた。
そんなニーガンにエレミヤは氷で作り出した剣を握る。
「なら、僕の質問に答えろ。師匠…。ジリアス・ガルゴスを殺したのは誰だ。」
エレミヤはニーガンにそう聞いた。
ギリウスはエレミヤを見る。
そしてジリアスと一番最後に会った四年前のことを思い出していた。
四年前、ギリウスはジリアスとお茶の間を設けていた。
「兄貴、最近楽しそうですね。」
とギリウスが言うと、ジリアスはちらりと庭を見た。
「んー?そうか?」
そこでは一人の白髪の少年が一人で木剣を握り、鍛錬をしていた。
彼はジリアスの弟子だという。
なるほど、なかなか筋がいい。
「あいつがいるからかな…。あいつ、俺が教えたことをどんどん吸収しやがる。恐ろしいくらいだぜ。」
「ふぅん…。」
「あいつには俺よりも重要な使命をその胸に抱いてる。この時はまだ来ねぇみたいだがな。だが、強くなってほしいなぁ…。」
首を傾げたギリウスにジリアスはニヤっと笑ってみせる。
その少年はジリアスとギリウスに目をくれず、ただ力強く木剣振り下ろしていた。
そんなガルゴスの庭で見た少年が目の前の十代半ばの少年に重なる。
「もう調べはついてるんだろ?ニーガン。」
エレミヤはニーガンに対してタメ口で問いかける。
ニーガンは少し躊躇った様子が見えた。
「…ティアラ王女殿下にございます。」
ティアラ。
エレミヤはその聞いたことのない名前に目を細めた。
「トゥーリスではなんと名乗ってた。」
エレミヤはきっぱりとそう問う。
ニーガンは目を泳がせる。
冷や汗がニーガンの頬に流れる。
エレミヤは口を開いた。
「言え。どうせ僕と親しい人だろ?それでなければお前が躊躇う必要はない。」
エレミヤは剣を握りしめる。
ニーガンはため息をつくと、ようやく口を開いた。
「ティナ。ティナ・ラウサークと名乗っておりました。」
エレミヤはようやく剣を消した。
そして背を向ける。
「行ってください。僕はもう疲れました。次、追いかけてきたら氷漬けにしますから。」
エレミヤはギリウスに手を貸してやる。
「…ごめんなさい…。」
エレミヤは下を向く。
ギリウスはそんなエレミヤの頭に手を乗せる。
「いいんだ。兄貴も、お前の気持ちに喜んでいると思うぞ。」
エレミヤはギリウスの腕をぎゅっと抱きしめ、悔しそうに顔を歪める。
「ありがとう…ございます…。」
エレミヤとギリウスはフォルスワーム帝国に入っていった。
エレミヤはとても不貞腐れていた。
何故なら、エレミヤの目の前あふ国にはどう見てもトゥーリス王国ではなかったからだ。
「ここは?」
そうつっけんどんに聞くとギリウスは歯をキラリと輝かせ親指を自信満々に立てつつ、言う。
「ここはトゥーリス王国とログラーツ王国の中間地点にあるフォルスワーム帝国だ!」
そんなこと言われましても。
あと、あなたの兄と僕の師匠(同一人物)の葬儀まで4日しかないのですが。
「いや~…ここは美女が多いことで有名なんだよ…。一度来てみたかった…。」
ならあんた一人でいけ。
「ん?どうしたエレミヤ。男なら入るぞ。」
なら女でいいです。
はやく師匠のところに行かないと。
「うおーい!なんでエレミヤ、回れ右してんだー!」
エレミヤはイライラが抑えきれず、今まで心の中で言い返していたが、声に出してしまった。
「僕はトゥーリスへ行きますっ!この国には寄りません!」
ええ…。と片眉を落としたギリウス。
「大体、あなたの兄と僕の師匠の葬儀は四日後ですよ?!こんなところでのんびりしている暇はありません!」
「でもぉ…。エレミヤの傷をここで治そうと思ってぇ…。」
「屁理屈は聞き飽きましたよ!単に女性と戯れたいだけでしょうっ!」
「っぐ!!そ、そんなことはないぞ、だって…(ぼそぼそぼそ)。」
最後のところはなんて言ってるか全く分からなかった。
そしてギリウスは真剣な顔をしたと思いきや、エレミヤの耳に口を寄せた。
「最近、ログラーツの動きが活発なんだ。なにやら人探しをしているようでピリピリしてんだよ。それに、戦争の準備をしているらしいからな。観光客としてこの国に守ってもらおうも思ってな。」
「ログラーツが…。」
エレミヤは下を見た。
多分、自分のせいだろう。
しかし、それとこれとは話が違う。
一番弟子が師匠の葬儀に出ないとは野蛮にもほどがある。
それに、トゥーリス王国へ行けば、ジリアスの死因が分かるはずだ。
(まぁ、いざとなったら僕がすべてを背負えばいい。腹切りでも首吊でもドンと来いや!)
エレミヤはそう腹を決めた。
「最大二日。良いですね?」
エレミヤはギリウスにそう言った。
「あぁ。…もち…ろ……どわっ?!」
ギリウスの言葉が途切れたのは急に攻撃をされたせいだ。
ギリウスが慌てて体を横に動かさなければ、今頃ギリウスの首から上がなくなっていただろう。
ドスン、と重い音を立てギリウスが尻もちをつく。
そして投げられた剣はエレミヤの方に向かってくる。
エレミヤは半身を引き、飛んでくる剣の柄を握るとその剣を投げ返した。
そして一瞬見えた柄の色や形を記憶に反映させる。
「ニーガンさん…かな?」
エレミヤが森の方に呼びかける。
剣を投げた犯人はすぐに出てきた。
ニーガンは己に返された剣をエレミヤと同じようにとったらしく、もう手には剣が握られていた。
「流石ですね。」
とニーガンは言った。
エレミヤはギリウスの前に守るように立つ。
エレミヤは肩をすくめる。
「自慢話ではありませんが、これまで僕が攻撃の寸前までその気配に確信が持てなかったことはジュリバークさんとあなたしかいませんから。あと師匠。」
エレミヤは最後に忘れていたかのように付け足した。
ギリウスはというと、エレミヤの背中に隠れて息を呑んでいた。
(ニ…ニーガン…だと?!トゥーリス王国の異能力者筆頭…。「影梟」を宿し、透視や追跡など、夜行動することに適した、別名『暗殺者』。そんなすごいやつがなんでエレミヤのことを?!)
ニーガンはエレミヤに近づいていき、なんとそこで膝を折り、片膝を地につけた。
ギリウスは絶句し、エレミヤは、冷たく言い放つ。
「何がしたいのです?ニーガンさん。答え次第ではあなたをそこらの兵士のように氷漬けにしますから。」
それだけじゃない。
聞いての通り、ニーガンはエレミヤに向かって敬語で話しているのだ。
「はは。それはあんまりですな。」
苦笑いのニーガン。
「しかし、あなたの知っている通り、我が国は戦争と始めようとしております。どうかお帰りください。ルティーエス殿下。」
ギリウスはそこで初めてエレミヤの一つの顔を知った。
ルティーエス。
それはログラーツ王国の第四王子で「武」より「知」に長けていたもう亡くなったはずの王子。
見た目麗しく、心も澄み切っていたため、多くの乙女の憧れであったとか。
エレミヤはため息をつくとニーガンをジッと射止めるように見た。
「僕の正体を明かしてどうするのです?」
「少しは動揺するかな、と。」
「前から分かっていましたがあなた、正確悪いですよね。」
「ははははは。よく言われます。」
「じゃあ直したほうがいいですよ。僕が言わなくたってあなたが『トゥーリス王国の内通者』であることがバレてしまいますよ。」
「貴方様も性格がお悪い。ここで言ってしまわれているではありませんか。」
「おっと。」
エレミヤは、ニーガンがギリウスに向かって放った剣をギリウスの腰に帯びられている剣で受け止めた。
「いやぁ、危なかった!この人、僕の仲間なので死なれては困るんですよ。これからトゥーリスへ行こうとしているのに。」
「ですからログラーツへお戻りくださいと言っているのです。」
「嫌です。」
ニーガンは立ち上がり剣を切っ先に力を込めた。
二人は気軽に話しているように見えるが、その目は真剣そのものでお互いにせめぎ合っている。
エレミヤの持つ剣がキシキシと悲鳴を上げる。
エレミヤはそれを見るとその剣を投げた。ニーガンの剣も巻き込みながら。
ニーガンは己の剣が遠くへ飛んでいったのを見て口笛を鳴らした。
「異能力の戦いに持ち込みましたか。なるほど。そうなれば私はかないませんね。」
ニーガンは両手を上げた。
そんなニーガンにエレミヤは氷で作り出した剣を握る。
「なら、僕の質問に答えろ。師匠…。ジリアス・ガルゴスを殺したのは誰だ。」
エレミヤはニーガンにそう聞いた。
ギリウスはエレミヤを見る。
そしてジリアスと一番最後に会った四年前のことを思い出していた。
四年前、ギリウスはジリアスとお茶の間を設けていた。
「兄貴、最近楽しそうですね。」
とギリウスが言うと、ジリアスはちらりと庭を見た。
「んー?そうか?」
そこでは一人の白髪の少年が一人で木剣を握り、鍛錬をしていた。
彼はジリアスの弟子だという。
なるほど、なかなか筋がいい。
「あいつがいるからかな…。あいつ、俺が教えたことをどんどん吸収しやがる。恐ろしいくらいだぜ。」
「ふぅん…。」
「あいつには俺よりも重要な使命をその胸に抱いてる。この時はまだ来ねぇみたいだがな。だが、強くなってほしいなぁ…。」
首を傾げたギリウスにジリアスはニヤっと笑ってみせる。
その少年はジリアスとギリウスに目をくれず、ただ力強く木剣振り下ろしていた。
そんなガルゴスの庭で見た少年が目の前の十代半ばの少年に重なる。
「もう調べはついてるんだろ?ニーガン。」
エレミヤはニーガンに対してタメ口で問いかける。
ニーガンは少し躊躇った様子が見えた。
「…ティアラ王女殿下にございます。」
ティアラ。
エレミヤはその聞いたことのない名前に目を細めた。
「トゥーリスではなんと名乗ってた。」
エレミヤはきっぱりとそう問う。
ニーガンは目を泳がせる。
冷や汗がニーガンの頬に流れる。
エレミヤは口を開いた。
「言え。どうせ僕と親しい人だろ?それでなければお前が躊躇う必要はない。」
エレミヤは剣を握りしめる。
ニーガンはため息をつくと、ようやく口を開いた。
「ティナ。ティナ・ラウサークと名乗っておりました。」
エレミヤはようやく剣を消した。
そして背を向ける。
「行ってください。僕はもう疲れました。次、追いかけてきたら氷漬けにしますから。」
エレミヤはギリウスに手を貸してやる。
「…ごめんなさい…。」
エレミヤは下を向く。
ギリウスはそんなエレミヤの頭に手を乗せる。
「いいんだ。兄貴も、お前の気持ちに喜んでいると思うぞ。」
エレミヤはギリウスの腕をぎゅっと抱きしめ、悔しそうに顔を歪める。
「ありがとう…ございます…。」
エレミヤとギリウスはフォルスワーム帝国に入っていった。
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