無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ

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第2話:勇者パーティー、悪臭に敗北する

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一方その頃。私を追放した勇者一行の拠点は、悲惨なことになっていました。
​「……おい、なんだこの臭いは! 飯が不味くなるだろう!」
勇者が鼻をつまみながら叫びます。
キッチンの片隅、生ゴミ箱からは、魔界の深淵を思わせるような強烈な悪臭が漂っていました。
​「魔法で消臭してくださいよ、聖女様!」
「無理ですわ! 臭いの元を消さない限り、清浄魔法をかけても一瞬で上書きされてしまいます!」
​彼らは知らないのです。夏場の生ゴミの腐敗速度と、そこに集まる小バエ――異世界風に言えば「魔食バエ」の恐ろしさを。
私がいた頃は、毎日「ある処理」をしていたから無臭だっただけなのですが。
​さて、私が手に入れた古城(通称:魔王城)のキッチンです。
ここも長年の放置により、先ほどの壁以上に凄まじい臭いが充満していました。
​「ふむ……まずはこの臭いの連鎖を断ち切りましょうか」
​私は荷物から、村の雑貨屋で安く買い叩いてきた「重曹」と、何の変哲もない「アルミホイル」を取り出しました。
​「ハル様、何をするつもりですか……?」
後ろで様子を伺っていた騎士団の少女、カレンが不安そうに尋ねてきます。
​「簡単な除菌と防臭ですよ」
• ​まず、生ゴミの入った袋の中に、直接重曹を振りかけます。
• ​次に、アルミホイルを適当な大きさに切り、くしゃくしゃに丸めたボールを数個作ります。
• ​そのアルミボールを、排水口やゴミ受けの中に放り込みます。
​「……えっ、それだけですか?」
「ええ、それだけです」
​カレンは半信半疑の様子でしたが、数分もしないうちに目を見開きました。
鼻を突いていた腐敗臭が、魔法でも使ったかのようにスッと消えていったからです。
​「な、なぜ……!? 聖騎士が祈りを捧げても消えなかった魔王城の死臭が……ただの銀色の紙で消えるなんて!」
​「種明かしをすれば簡単です。生ゴミの臭いの原因は主に酸性なので、アルカリ性の重曹で中和したんです。それに……」
​私は排水口を指差しました。
​「アルミホイルは水に触れると金属イオンを発生させます。これが細菌の繁殖を抑える強力な『結界』になるんですよ。魔食バエも、菌がいなければ寄ってきません」
​「キンゾクイオン……ケッカイ……。まさか、失われた古代の錬金術を応用しているのですか……!?」
​カレンの脳内では、私のライフハックがとんでもない高等技術に変換されているようです。
その後、彼女は「この知恵は国宝級だ」と騒ぎ立て、勝手に私の護衛として居着くことになってしまいました。
​一方、その夜。
勇者パーティーの拠点は、大量発生した魔食バエによって占拠され、彼らは宿屋への避難を余儀なくされたそうです。

​今回のライフハック:【アルミホイルの抗菌パワー】
• ​解説: アルミホイルは水に触れると反応し、金属イオン(アルミニウムイオン)を放出します。これには強い抗菌作用があり、排水口のヌメリや臭いの原因となる雑菌の繁殖を抑えてくれます。
• ​重曹の効果: 生ゴミの臭いの主成分である酸化した有機物(酸性)を、アルカリ性の重曹が中和して無臭化します。
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