舞い落ちて、消える

松山秋ノブ

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筆者から【あとがきにかえて】

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誰にも共感されないような主人公を書きたかった。真面目に誠実に生きているような人間とは遠い人間を書きたかった。それがこの小説の主人公、中村佑矢である。


最近、「小説はどうやったら書けますか」という質問を受ける。そもそもプロでもない人間に訊いても仕方のない気がするが、無下にするのも性分に合わないから、とりあえず答える。

とはいえ、正確には「いつの間にか」という回答になる。もともと10代の中頃に小説を書こうとして挫折をして以来、演劇界に身を置き、脚本に携わってきた。そうしているうちにいつの間にか書けていたのだ。

だから、私の小説は脚本制作の方法論に似ている。私は最終シーンを先に考え、それから物語を紡いでいく。

『最後にいなくなった、君は』では、渋谷の道玄坂を酩酊しながら主人公が彷徨する場面を最初に考えた。あのシーンを書きたくて物語を産んでいった。

今回は歌舞伎町で紫陽花の花びらをばらまく場面で終わりたかった。そのために物語を紡いでいったのだ。

『舞い落ちて、消える』は10代の後半に初めて書いた小説を基に書き直している。まだ福岡で学生をしている時に、福岡から横浜に移り住んだ大学生を主人公にした。まさかその1年後に本当に横浜に行くことになるとは思っていなかったが。そんなリメイク小説が本作だが、もともとリメイクをしようとしたわけではなく、前述の通りに、ラストシーンを描くにはもともとあった話を利用するのが都合が良かっただけなのだ。

前回が渋谷で、今回が新宿だった。次は何処だろうか。池袋かなと安易に浮かべるが、官能小説でもない限り、池袋を舞台に書ける気がしない。次は横浜な気がする。新百合ケ丘や町田でも良いか。

先日、大学時代の友人と新宿のビアガーデンに行った。私はよく利用する街だが、友人はそわそわして落ち着かなそうだった。駅ビルの屋上なので治安は悪くなかったが、それでも人種のるつぼのような感覚を得た。BBQスタイルのビアガーデンだったけれど、店員を始め、誰もBBQをするようなアウトドアスタイルの人間はいなかった。これから夜の街に行く者、会社員、ノリだけで生きているような大学生。そのまま背景をキャンプ地に移しても違和感のない格好をしているのは私たちのテーブルだけである。そのテーブルに並んでいる肉と、隣のノースリーブの女性たちのテーブルに並んでいる肉は、心なしか違うもののように見えた。

そのアンバランスさが新宿であり、魅力であり、面白さであるが、友人はそれが落ち着かないのだった。

酒が入って気が大きくなった私は友人を歌舞伎町へ連れていこうとしたのだが、友人に固辞された。そりゃそうだ。真面目に誠実に生きているような人間は歌舞伎町には安易に足を運ばないのだ。

中村佑矢のような主人公でなければ。

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