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1章
10話 ラストリア大帝国
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ラストリア大帝国の帝都トリアにあるアメル教中央教会。
豪華な教主室で教主ボーラルは笑みを浮かべ、報告書に目を通していた。カサンディアのダンジョンが消滅したという内容を目にし、
「これで、生意気なエルフや獣人を捕らえる事が出来る」
景気づけにワインを1本開ける。
今まで、亜人を捕らえようとすれば、ダンジョンの奴らが邪魔をしてきた。何処から情報が漏れたのか、奴隷商人の馬車が、モンスターの襲撃を受けた。襲撃時に目撃されていたのが、赤色の少女だ。
「スライムではないかと言われていたが、アイツのせいで、大きな損害を受けた」
まさに、奈々の事である。
ボーラルは亜人を捕らえ、ラストリアへと売り渡し、富を得ていた。亜人は、邪神の手先、滅ぼさなくてはいけないという建前の元、捕まえては奴隷にしている。
最近では、洗脳や薬品を使い、亜人奴隷を傀儡化する計画も、ラストリアにある。ボーラルもその計画に噛んでおり、彼が手配した奴隷商人は、ラストリアへ、捕らえた亜人を売っている。
「ふむ、ダンジョンの消滅で、妨害するモンスターもいなくなったという訳だ。なら、エルジーナへの侵攻も可能だな」
大量の亜人を捕らえる計画が、アメル教とラストリアの間で模索されていた。その障害となっていたのが、カサンディアのダンジョンモンスターだ。ダンジョンのモンスターは外の世界へは出ない。
一般的に言われているが、カサンディアのモンスターは違った。
(あの、スライムの配下かしらんが、普通の兵士や冒険者じゃ歯が立たん)
報告書に目を通したが、奴隷商人の馬車の襲撃で、死者は出ていない。明らかに、自分たちより強者のモンスターに襲われているのに、怪我をするだけで、殺されずに見逃されていた。
リーシャが外で活動する時は、死者を出さないようにと、奈々と彼女の配下のモンスターに命じていた。
ダンジョンのモンスターとしてのイメージを悪くしない為の処置だ。外に出て死者を出すようなモンスターだと、ダンジョンに冒険者や人が集まらなくなる。
悪行の限りをしているアメル教でも、奴隷商人でも、死者は出さない。
「奴隷商人、護衛の冒険者をギルドに依頼して、皇帝にも話をつけるか」
ボーラルは、部下を呼ぶと、奴隷商人と冒険者ギルドへの依頼を行うように指示を出す。自身は、皇帝に会いに、城へと出向く。
*
「カサンディアのダンジョンが消滅した?」
報告を受けた皇帝の目の前に、1人のリザードマンが立つ。ラストリアのダンジョンからの使者で、龍王の命で、皇帝と接触した。
「はい、龍王様曰く、カサンディアのメインダンジョン、及び、サブダンジョンが全て消滅しました。我が国に配置されていたカサンディアの、サブダンジョンも消滅を確認したと」
「その報告、誠か?」
報告を聞いていた腹心の男性が、当惑したように聞き直した。
「はい、ダンジョンを管理している龍王様が誤った情報を差し出す事はございません」
ラストリアとダンジョンは深く関係を持つ。カサンディアと同じく、ダンジョンから出没する資源を目当てに、同盟を結んでいた。ラストリアからはDPになるモノを提供し、ダンジョンからは資源を入手する。
その関係に亀裂が生じる事を重く見た皇帝は、使者の話を信じる事にした。
「なるほど、それで、龍王様は我々になにを望む?」
「いつも通り、人をよこしてくれればいいとの事です」
ラストリアが提供するモノ。それは人だった。
犯罪者。実験で壊れた亜人。皇帝の考えに背く愚かな市民。そう言った人をダンジョンの餌として提供をしていた。
「欲を言えば、もっと上質な…レベルの高いモノをよこしてほしいと、仰っておりました」
「なら、エルジーナへ侵攻してはどうですか」
リザードマンの話を聞き、声を掛けてきたのが、アメル教の教主ボーラルだった。
「ボーラル教主殿か…」
「はい、私の方でもカサンディアのダンジョンが消滅したという情報を得ました。ですので、この機会に、例の計画を…」
エルジーナに住む亜人の弾圧。奴隷としてとらえる計画を話す。
「……それでは、龍王様からの託は伝えた。我は帰らせてもらう」
「ああ、気を付けてな」
皇帝は前から去るリザードマンを見送ると、ボーラルへ話しかける。
「その計画、国として関与はするが、目立つ事は控えるぞ。いいか?」
「はい、捕らえる段取りは私たちの方で行います。皇帝様には、道中の黙認と反発の阻止をお願いいたします」
ラストリア内でも亜人を捕らえて奴隷にする事を否定する一派がある。奴隷解放組織と言われているが、ダンジョンのモンスターの襲撃より、この組織の方が厄介だった。
何しろ、殺人も行うからだ。
妨害工作に合った奴隷商人が何人か、命を落としている。囚われた亜人も奪われ、保護しているという話だ。皇帝への申し出は、道中の警備だった。兵士の巡回を強化し、解放組織からの襲撃を防ぐ。
「わかった。そのように手を打っておく。で、いつ行くのだ」
「準備が整い次第、襲撃は夜に」
「ふむ、軍からは何も人は出せないが…」
皇帝は腹心の男へと視線を向ける。
「私の方で、信頼できる魔導士を用意しておきますよ」
「魔法が使える冒険者が少ないので助かります」
皇帝とボーラルは計画の調整を話し、準備を進める。
エルジーナに住む獣人の村を襲撃する。場所の特定は、冒険者により把握しているので、後は襲うだけだった。夜に襲撃をする事で意見は一致し、奴隷商人が3組、護衛の冒険者50人、帝都からは魔導士2人が派遣された。
豪華な教主室で教主ボーラルは笑みを浮かべ、報告書に目を通していた。カサンディアのダンジョンが消滅したという内容を目にし、
「これで、生意気なエルフや獣人を捕らえる事が出来る」
景気づけにワインを1本開ける。
今まで、亜人を捕らえようとすれば、ダンジョンの奴らが邪魔をしてきた。何処から情報が漏れたのか、奴隷商人の馬車が、モンスターの襲撃を受けた。襲撃時に目撃されていたのが、赤色の少女だ。
「スライムではないかと言われていたが、アイツのせいで、大きな損害を受けた」
まさに、奈々の事である。
ボーラルは亜人を捕らえ、ラストリアへと売り渡し、富を得ていた。亜人は、邪神の手先、滅ぼさなくてはいけないという建前の元、捕まえては奴隷にしている。
最近では、洗脳や薬品を使い、亜人奴隷を傀儡化する計画も、ラストリアにある。ボーラルもその計画に噛んでおり、彼が手配した奴隷商人は、ラストリアへ、捕らえた亜人を売っている。
「ふむ、ダンジョンの消滅で、妨害するモンスターもいなくなったという訳だ。なら、エルジーナへの侵攻も可能だな」
大量の亜人を捕らえる計画が、アメル教とラストリアの間で模索されていた。その障害となっていたのが、カサンディアのダンジョンモンスターだ。ダンジョンのモンスターは外の世界へは出ない。
一般的に言われているが、カサンディアのモンスターは違った。
(あの、スライムの配下かしらんが、普通の兵士や冒険者じゃ歯が立たん)
報告書に目を通したが、奴隷商人の馬車の襲撃で、死者は出ていない。明らかに、自分たちより強者のモンスターに襲われているのに、怪我をするだけで、殺されずに見逃されていた。
リーシャが外で活動する時は、死者を出さないようにと、奈々と彼女の配下のモンスターに命じていた。
ダンジョンのモンスターとしてのイメージを悪くしない為の処置だ。外に出て死者を出すようなモンスターだと、ダンジョンに冒険者や人が集まらなくなる。
悪行の限りをしているアメル教でも、奴隷商人でも、死者は出さない。
「奴隷商人、護衛の冒険者をギルドに依頼して、皇帝にも話をつけるか」
ボーラルは、部下を呼ぶと、奴隷商人と冒険者ギルドへの依頼を行うように指示を出す。自身は、皇帝に会いに、城へと出向く。
*
「カサンディアのダンジョンが消滅した?」
報告を受けた皇帝の目の前に、1人のリザードマンが立つ。ラストリアのダンジョンからの使者で、龍王の命で、皇帝と接触した。
「はい、龍王様曰く、カサンディアのメインダンジョン、及び、サブダンジョンが全て消滅しました。我が国に配置されていたカサンディアの、サブダンジョンも消滅を確認したと」
「その報告、誠か?」
報告を聞いていた腹心の男性が、当惑したように聞き直した。
「はい、ダンジョンを管理している龍王様が誤った情報を差し出す事はございません」
ラストリアとダンジョンは深く関係を持つ。カサンディアと同じく、ダンジョンから出没する資源を目当てに、同盟を結んでいた。ラストリアからはDPになるモノを提供し、ダンジョンからは資源を入手する。
その関係に亀裂が生じる事を重く見た皇帝は、使者の話を信じる事にした。
「なるほど、それで、龍王様は我々になにを望む?」
「いつも通り、人をよこしてくれればいいとの事です」
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「なら、エルジーナへ侵攻してはどうですか」
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「ボーラル教主殿か…」
「はい、私の方でもカサンディアのダンジョンが消滅したという情報を得ました。ですので、この機会に、例の計画を…」
エルジーナに住む亜人の弾圧。奴隷としてとらえる計画を話す。
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「ああ、気を付けてな」
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