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女騎士ナラーには胸の間からわき腹にかけて大きな傷痕がある。

しかしこれは騎士として魔物と戦うようになってから出来た名誉の勲章では無い。

 

数年前、ナラーがまだ貴族令嬢だった頃、元婚約者によってつけられた傷である。

ナラーは固い性格と整った容姿、優秀な成績から当時の婚約者によって疎まれていた。更に彼はその鬱憤とナラーには禁止されて触れることも出来ないため溜まっていく性欲を発散せんと、他の貴族令嬢に粉をかけ愛人としていた。

 

最終的にその現場―――二人が街の高級宿でまぐわっている所に踏み込んだ令嬢ナラーは、彼の愛人の凶行によってナイフで刺され、瀕死の重傷となってしまったのであった。

 

元婚約者やその愛人は未成年淫行や殺人未遂、ナラーへの侮辱罪により退学処分となりこれから親の持つ領内から一生出る事は叶わないだろう。

 

結果として慰謝料や婚約破棄になりナラーは自由になったもののナラーの体には大きな傷跡が残り、また令嬢としても傷がついてしまった彼女に次の婚約者を探すような事は出来なくなった。両親も傷ついたナラーに対して、新しい婚約者を探すような真似は出来なかったのだろう。

 

ナラーは傷が治ったあと、自分で身を守れるようにならねばならぬと思い剣術を習いはじめた。1年をかけて鍛え上げた結果、貴族令嬢としての細くて白い手足は筋肉のついた健康的な体となり腹筋も割れるようになった。

誤算としては腹筋や胸筋がついた事により胸が以前よりも筋肉によって支えられた結果、かなり盛り上がり基本的に華奢で痩躰の貴族令嬢より大きく…周囲の男性の目を引くようになってしまった事ぐらいである。剣を振るのに正直いって邪魔なので普段はさらしを巻いて胸を潰すようにした。傷痕も隠せて一石二鳥である。

 

元々高めな身長であったナラーは前から他の令嬢から人気があったが鍛えて更に凛々しくかっこよくなっていくナラーに目を奪われるようになった令嬢や婦人が後を絶たず、いつのまにか後援会(ファンクラブ)が出来てしまう事態にもなった。なお会員番号1番はナラーの妹である。

 

貴族学校を卒業後、ナラーは守られる女ではもう無いと宣言するかのように髪を切り、騎士団へと入団したのであった。

 

 
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