9 / 9
9
しおりを挟む
第三王子。王太子でも無ければ王太子の予備としても順位は低い王族。
本来であれば他国との縁繋ぎに用いられてもおかしくない身分ではあるが、ジェイはそこに関しては自由であった。だからこそ臣に下るという選択肢が既に与えられており、ジェイもそれを選択している。
それでいて今はまだ王族としての特権が使える立場でもある。
彼は王に謁見し、「死の砂漠」へ向かう旨を告げたものの…
「ならぬ」
勿論、拒否された。
騎士団に所属する事や、ナラーへの婚姻を認める事とは訳が違うのだ。
ジェイは食い下がるも、王は王族であり息子でもあるジェイを死の危険にむざむざ晒す必要は無いと判断した。
当たり前の事を当たり前に言われた。それだけだった。
ジェイもそう言われてしまっては、と一旦引き下がりはしたが、熱病に侵されたかの如く恋の熱冷めやらぬ彼に諦める選択肢は無かった。正道でいけなければ邪道。
王城と国から脱出し、死の砂漠を目指す事は恐らく可能。しかし誰かの手を借りるとその家が王の怒りを買う恐れがある。そこまでのリスクを協力者に背負わせる訳にもいかず。
「どうすれば抜け出して、癒しの水泉までいけるだろうか」
そう自室で考え込むジェイに対して、救いの手は差し伸べられた。
「ジェイ、行きなさい」
「母上!?いいのですか?」
それは王妃。ジェイの母だった。
「ただし、必ず帰ってくる事ですよ。とりあえずは私の実家、貴方の祖父の家を頼りなさい」
彼女も夫である王の気持ちはわかる。愛する息子を無暗に危険には晒したくはない。しかし今のジェイの様子では勝手に一人で突っ走る可能性がある事を敏感に感じ取っていた母は、ジェイの気持ちに寄り添った風で監視の目を付ける事にした。彼女の父であるジェイの祖父は孫を溺愛している。
必ずジェイの力になってくれるだろうし、命を落とす前には引き返すだろう。
「はい…はい!行ってまいります!」ジェイは颯爽と駆け出し、まずは母の生家へと向かった。
「ジェイは行ってしまったか…」
「えぇ、あなた。でもあれは止められないと思いますよ」
「それに…あなたが私を愛してくださった時もあんな感じだったでしょう?」「それは言うな」
本来であれば他国との縁繋ぎに用いられてもおかしくない身分ではあるが、ジェイはそこに関しては自由であった。だからこそ臣に下るという選択肢が既に与えられており、ジェイもそれを選択している。
それでいて今はまだ王族としての特権が使える立場でもある。
彼は王に謁見し、「死の砂漠」へ向かう旨を告げたものの…
「ならぬ」
勿論、拒否された。
騎士団に所属する事や、ナラーへの婚姻を認める事とは訳が違うのだ。
ジェイは食い下がるも、王は王族であり息子でもあるジェイを死の危険にむざむざ晒す必要は無いと判断した。
当たり前の事を当たり前に言われた。それだけだった。
ジェイもそう言われてしまっては、と一旦引き下がりはしたが、熱病に侵されたかの如く恋の熱冷めやらぬ彼に諦める選択肢は無かった。正道でいけなければ邪道。
王城と国から脱出し、死の砂漠を目指す事は恐らく可能。しかし誰かの手を借りるとその家が王の怒りを買う恐れがある。そこまでのリスクを協力者に背負わせる訳にもいかず。
「どうすれば抜け出して、癒しの水泉までいけるだろうか」
そう自室で考え込むジェイに対して、救いの手は差し伸べられた。
「ジェイ、行きなさい」
「母上!?いいのですか?」
それは王妃。ジェイの母だった。
「ただし、必ず帰ってくる事ですよ。とりあえずは私の実家、貴方の祖父の家を頼りなさい」
彼女も夫である王の気持ちはわかる。愛する息子を無暗に危険には晒したくはない。しかし今のジェイの様子では勝手に一人で突っ走る可能性がある事を敏感に感じ取っていた母は、ジェイの気持ちに寄り添った風で監視の目を付ける事にした。彼女の父であるジェイの祖父は孫を溺愛している。
必ずジェイの力になってくれるだろうし、命を落とす前には引き返すだろう。
「はい…はい!行ってまいります!」ジェイは颯爽と駆け出し、まずは母の生家へと向かった。
「ジェイは行ってしまったか…」
「えぇ、あなた。でもあれは止められないと思いますよ」
「それに…あなたが私を愛してくださった時もあんな感じだったでしょう?」「それは言うな」
8
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
凛々しく美しいヒロイン✨大好物です😆‼️ワンコちゃん、ちょい歳が離れてますが、愛ゆえの向上心でその差もクリアしそうですね‼️早く幸せなゴールを見たい‼️わっくわくです‼️お願いします‼️