友人になりたかったのに

Koko

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リュカと

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屋敷から帰ってきたあと、少しだけ寝てすぐに仕事に戻る準備を始めた。アレクにもらったネックガードを確認して、仕事着に着替える。そして鏡の前に立った時初めて手紙の存在に気がついた。
よく見るとそれはリュカから俺に当てられた手紙だった。
手元にあったナイフで手紙を開け、中身を取り出す。
中には手紙と、ネックガードが入っていた。
俺が買えなかったからだろうか。
手紙を広げて読んでみる。中にはこう書いてあった。


「リシュカルへ

体調はどうだ。あの後、公爵邸に運ばれたとコーディさんから聞いた。最初お前と会った時、お互い抑制剤を飲んでいるはずなのにフェロモンの香りがしたんだ。その時運命だったりするんじゃないか、と思ったが気のせいだと思って何も言わなかった。今回の件は俺が悪い。安心してくれ、お前に自分から会いに行くなんてことはしない。でも、せっかく会えたんだから文通友達にはなってくれよ。あ、ネックガードは俺の謝罪だ。もしかしたらあの貴族に貰ってるかもしれないが、受け取るだけ受け取って欲しい。            リュカより」

どう接するべきなのか公爵邸で悩んでも結局答えは出なかったが、リュカのおかげで今やっと答えがわかった。
運命とはいえ、互いに恋愛感情はない。周りがどう思うかは分からないが、友達としてならばこれからも仲良くして良いだろう。何せ俺には友達が少ないからね。

昨日届けてもらった便箋を取り出して、返事の手紙を書き、コーディさんに届けてもらうようお願いした。
ついついかきすぎてしまい、いつの間にか予約の時間まで1時間しかなかった。急いで準備をしなければ。
好きな人ができたからと言って客に抱かれるのは別に苦ではない。今更ファーストキスだの初めてだの嘆いたところで何も代わりやしないしアレクとそう言うことをする予定もない。
ただ俺はいつも通りに仕事をこなすだけ。この気持ちはもう、忘れてしまおう。

ーー
ーーー
もうすっかり暗くなり就寝の準備をしている時、ふと自分の瞳のことを思い出した。
部屋にある小さな鏡の前に座り目を見開いて見る。夜だから日光は入って来ないし、この部屋もそもそも日光の入りが悪い部屋だった。
もしてかするとコーディさんはもう知っていて、これを見られたらまずいから面をするように俺に言ったのだろうか。だとしたら何がまずいのだろう。気になることは多いけれど、コーディさんがいつか話してくれるだろう。ただ僕はそれを待つだけだ。
布団に潜るとその日はすぐに眠ることが出来た。


ーー
1週間後、うちに王家からの手紙が届いた。
それはエリス様からの以前聞いた会議についての手紙で、服装についてのことと、会議の日程、その日にアレクが迎えに来るという内容であった。

「アレクが...」

アレクはあの日以降仕事が忙しいらしくうちに来ていない。つまりアレクに会えるのは久しぶりなのだ。
アレクがいたら、貴族からのどんな言葉であっても耐えられるような気がする。
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