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初めてのアイスデート ②
しおりを挟むけど、選択肢が三つに増えても、まだ絞りきれない。
「うーん……」
食べてみたいのが、たくさんある。
季節限定のは食べてみたいけど、定番のだって、おいしそうだし。
メニュー表とにらめっこしていると、将が笑いながらたずねてきた。
「どれで悩んでるんだ?」
「えっと、これ」
悩んでるフレーバーを指す。
どちらも、この時期にしか出ないだろう季節限定のフレーバーだ。
「スイカもおいしいと思うけど、イチジクもすごく気になるんだよね」
「じゃあ、これは俺がスイカを注文するから、五十鈴はイチジクにすれば?」
「え?」
「俺の分けてやるから」
「いいの!?」
将を見上げると、笑顔でうなずいてくれる。
「やった! ありがとね、将」
どっちも食べたかったから、嬉しい!
将って、ほんと優しいよね。
「ドリンクは、ジンジャエールでいいか?」
「うん!」
僕の好きな飲み物も覚えててくれてる。
注文は、店員が聞きにくるんじゃなくて、スマホでするみたい。でも将があっという間に注文してくれた。
店内はそれほど混み合ってなかったから、すぐに番号を呼ばれる。
将は「取ってくる」と言って、カウンターまでアイスとドリンクを取りに行ってくれた。
こういうところも、カッコいい。
何をするにもスマートなんだよね。
戻ってきた将がトレイをテーブルに置く。
ワッフルコーンのアイスと、ガラスのカップに入ったアイス、それに飲み物が乗っている。
「五十鈴はこっちな」
「わぁっ、おいしそう!」
スタンドに乗ってるコーンが、僕のアイスだ。
選んだのは、バナナ、イチジク、ストロベリー。
将のは、白いお皿の上に、ガラス製のアイスクリームカップがのせてあって、中には丸い形のアイスが三つ乗っている。
お皿に金色のスプーンが添えてあって、可愛い。
将のフレーバーは、ダークチョコレート、スイカ、ヘーゼルナッツ。
飲み物は、僕がジンジャエールで、将はアイスコーヒーだ。
お店で食べるアイスは初めてじゃないけど、将と一緒だからワクワクする。
「じゃあ、食べようか」
「うん!」
スタンドからアイスを取って、早速スプーンですくう。
三種類のフレーバーだから、ぎゅっとおさまってるけど、ちょっとずつスプーンで食べた。
それぞれ味がしっかりしてて、夢中になる。
「んーおいしい!」
「良かった。スイカも食べるだろ?」
「たべる!」
顔を上げると、将がスプーンにすくったアイスを差し出してくる。パクッと食べると、スイカの味が口に広がった。
これもおいしい。
「スイカだね!」
「ああ」
将が嬉しそうに笑う。
スイカ以外も、味見させてくれた。
チョコレートとヘーゼルナッツも甘かったけど、アイスだからさっぱりしている。
「将のアイスも、甘くておいしいね」
「だろ」
将が得意げに笑って、アイスコーヒーを飲む。
僕はコーンの上に乗っていたアイスを食べ終わると、スプーンをおいて、こんどはそのままコーンにかじりついた。
ワッフルコーンだから甘みもあって、ザクザクした食感のおかげで、アイスがよりおいしく感じる。
「そういえば、なんで将はコーンじゃないの?」
「ん?」
「コーンタイプの、あんまり買わないよね?」
スーパーで買うのも、カップアイスが多い。
「カップが好きなの?」
「まあ、そうだな」
曖昧にうなずいているけど、なぜかちょっと遠い目をしている。
「何か理由があるの?」
「……これいうと、笑われるから嫌なんだけど」
「え? 僕は将を笑ったりしないよ?」
僕を他の人と一緒にして欲しくない。
そう思ってじっと見つめると、将は苦笑して口を開いた。
「俺、もともと体温が高いだろ?」
「うん。暑がりだもんね」
「手のひらもかなり熱いんだ。子供の時はよく、ソフトクリーム食べてる途中でアイスが溶けてさ」
「えっ、そんなにすぐ溶けちゃうんだ?」
「溶ける。ソフトクリームは最後まで食べられたことがないし、手も服も汚れて散々だったからな。食べないようにしてるんだ」
僕は自分の握っているコーンを見たけど、アイスは少し溶けてるくらいだ。
「でもこれ、下まではアイス入ってないよね?」
「そうだけど、苦手意識がな……」
将はまた遠い目になってる。
コーンタイプのアイスがトラウマになっちゃったのかな……大好きなアイスがすぐに溶けちゃったら、悲しいもんね。
「そっかぁ」
僕だったら、しょぼんってしちゃう。
切ない気持ちでコーンを眺めていたけど、ふとひらめいた。
「そうだ!」
「うん?」
「将、僕が持っててあげる!」
僕の手なら、アイスはすぐに溶けない。
右手に持っていたコーンを将の口元に向ける。
「はいっ。食べてみて、将」
これなら将も、安心して食べられるはず。
名案だよね!
将を見上げる、驚いた顔で目を瞬かせた。
あれ? 僕、変なこと言ったかな?
「将?」
首をかしげると、将はすぐニッコリと笑った。
「ありがとな、五十鈴」
「うんっ」
「じゃ、こうやって食べるよ」
将は、コーンを握っている僕の右手を、両手でぎゅっと包み込んできた。
「ふぁっ!?」
びっくりしている間に、将がパクッとコーンの先を食べる。
将の手は、とても熱かった。
手を繋ぐのは慣れてきたけど、両手で包み込まれるのは、また違ったドキドキだ。
アイス食べてるのに、体が熱くなってくる。
「あ、あの……将?」
「うまいな」
「う、うんっ」
「これからアイス食べる時は、五十鈴に持っててもらおう」
「あ、えっと、うん……いいよ?」
僕が言い出したことだから、イヤとは言えない。
でも、毎回こうやって握られるのかな?
それはちょっと、鼓動が速くなっちゃうから、遠慮したいな……!
「五十鈴のアイス、うまかった」
「あっ」
将が僕の右手からスッと離れた。
あの熱はなくなったけど、僕の心臓の音は落ちつかない。
アイスを食べに来たのに、将のせいで暑くなっちゃったよ。
残りのアイスを少しずつ食べていると、先に食べおえた将が笑顔でたずねてくる。
「五十鈴、ここのアイス気に入った?」
「うん。どれもおいしいよね」
他の味も気になるし、また食べてみたい。
もちろん、将と一緒がいいけど。
ちらっと窺うと、将は目を細めて、優しく微笑んだ。
「夏休みのうちに、またアイス食べに来ような」
「うんっ!」
将との約束に、大きくうなずく。
夏休みはまだ半分も残っている。
将と、いろんなところに行けたらいいな。
「あ、五十鈴」
「ん?」
「デートもいっぱいしような?」
「!?」
「楽しみにしてる」
将の言葉にカァッと顔が熱くなる。
でも、そっか。
将は僕の彼氏なんだから、ただのお出かけじゃなくて、デートになるんだ。
デートなんてしたことなかったから、ちょっとくすぐったい。
「僕も、楽しみだよ」
そう伝えると、将はとっても嬉しそうに笑ってくれた。
(終)
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