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2話 蘭:イケメンに弱い
しおりを挟む「男の子と付き合ってたのは学生の頃でしょ? 大人の男性はまた違うわよ」
「男なんて、変わんないよ」
現に蘭だって、昔から神経質なところは直っていない。
千鶴子は困ったように微笑んで、優しく諭した。
「蘭の細やかなところを、魅力的だって言ってくれる人もいるわ」
「そんな人いないって」
蘭は苦笑しながら答える。だが千鶴子は構わずに、持っていたお見合い写真を開いて見せる。
「とにかく、一度会ってみない?」
「……!!」
そこに写っていたのは、高級そうなスーツに身を包み、真顔でこちらを見ている男性だった。
高身長のすらりとしたスタイルで、整った顔立ちも完璧で、文句なしの超美形な男性である。
蘭は昔から、イケメンに弱かった。
「……かっこいい」
思わず漏れた呟きに、千鶴子がにっこりと微笑む。
「ね? お見合いで会うくらい構わないでしょ? 合わないって思ったら、お断りもできるんだし」
「……うん」
写真に見惚れながら、蘭は反射的に頷いてしまった。
「釣書もおいておくから。お見合いは今度の土曜日ね」
「え……あ、うん」
「スーツで来るでしょう? お洒落なのを選んできてね」
どんどん話を進める千鶴子に、今さら「やっぱり止める」などと言えなくて、蘭は困ってしまった。
いくら外見が好みのタイプとはいえ、簡単に見合いを承諾してしまうなんて、自分の迂闊さに舌打ちしたい気分だ。
「……分かってるよ」
渋々頷くと、千鶴子は一仕事終えたとばかりに上機嫌な笑顔だ。
「私も楽しみだわぁ。耀さんの息子さん、イケメンだもの」
うきうきしている千鶴子を見ると、蘭は何だか腑に落ちない気分になる。
「お母さんが会いたかっただけじゃん」
「何か言ったかしら?」
「何でもない!」
文句を言いたかったが、蘭だって、写真を見てイケメンだと思ったのだ。
千鶴子のことを言えた筋合いではない。
だって……すげぇカッコイイし?
実際に会ったらイメージが崩れるかもしれないけど、滅多に見ないレベルのイケメンに、蘭は胸がドキドキしてきた。
+ + +
千鶴子が帰った後で、釣書に目を通した。
相手のプロフィールが書かれてあり、名前、年齢、身長、体重に、学歴、職歴、婚姻歴、家族構成まで記載してある。趣味や特技の欄もあり、履歴書を読んでいるみたいだった。
「年収とかも書くのか」
もしかして、自分の釣書にも同様に書いてあるのだろうか。
蘭は小さな旅行会社で働いているが、そこそこの年収はある。
だが貯金となると話は別で、趣味の旅行にお金をつぎ込んでいるので、貯蓄は少なかった。
だから、いくら釣書の年収が高くても、実際には当てにならないよなぁと思いながら、先を読み進める。
相手の学歴を見ると、出身地は東京で、一流大学を卒業しており、続く職歴も、具体的な会社名などは書かれていなかったが、上場企業で働いているようだ。
お見合いの席でお互いが了承しない限り、詳細な情報は伝えないのがルールになっているらしい。
個人情報を保護する目的でそうなっているのだと、相手の年収を見て納得した。
「うわ、すげぇ!」
蘭の年収とは桁が違った。
女性ならきっと、玉の輿を狙って張り切るレベルだ。
「オレとはぜんぜん世界が違うし」
ここまで条件が良いと、逆に心配になってくる。
なんで独身なんだろう。
性格に難ありとか?
考えてみても分からないが、変な相手じゃないことを祈った。
釣書と写真を閉じると、お見合いの日に着ていく服を決めるため、クローゼットを開けてスーツを吟味し始めた。
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