弱小領主のコレクター生活~アイテムチートで冒険、領地運営をしながら最強領主に成り上がります~

瀬口恭介

文字の大きさ
1 / 160
序章『始まりの領地』

001 コレクター、転生する

しおりを挟む

「うおおおおおおおおおやったあああああああああああああああああ」

 ボスのレアドロップ表示を確認し一人叫ぶ。洞窟内にいるため、声が反響した。
 今この時、俺は現時点で実装されている全てのアイテムを制覇した。
 極々稀にしかドロップすることがないアイテム。オークションにあるものを買っても良かったが、最後のアイテムは自分で手に入れたかったのだ。

 俺がプレイしているのはフルダイブ型VRMMORPG『トワイライト』。王道ファンタジーのオンラインゲームだ。
 サービス開始から五年。遂に来週、最後のメインストーリーが開放される。
 ここまでが長かった。イベントだの職業追加だのでお茶を濁され続け、肝心のメインストーリーの更新が一年近く行われていなかったのだ。
 ゲームをプレイしているのにエンディングを見ることができないというのも納得がいかない。最終章の『黄昏の終焉』に向けて離れていたプレイヤーたちも戻ってきている。

 頭に被った黒いキャスケットを触りながら、辺りを見回す。
 今回の狩りはソロで行ったため、仲間はいない。
 ……正確には、誘ったのに断られたのだ。全員今日は別の用事があると言っていたが、何故だろうか。
 視界の端に現在の日時が表示されている。『2025/12/24 17:58』。

 何故だろうか。分からないね。ふぁっく。

「ま、俺には関係のない話だ。アイテムアイテム」

 ボスの落としたアイテムを確認するため、ストレージからアイテムを取り出す。
 『紫電のアメジスト』中に稲妻のようなエフェクトが入ったアメジストだ。
 地面に座り、様々な角度からアメジストを鑑賞する。光の当て方によって輝きは大きく変わる。本当によくできたゲームだ。
 だからこそ、俺はこのゲームにハマってしまった。ファンタジーの世界でアイテムコレクターとしてレアアイテムを集め、鑑賞する。こんなに素晴らしいことがあるだろうか。

「おおっ……あぁ~……いい、素晴らしい……」

 我ながら気持ち悪いと思う。もしかしたら断られた原因はこれかもしれない。
 いやそんなはずはない。ないよね?

 しかし、この宝石は綺麗だ。表面に反射して俺のゲーム内アバターが見える。
 ネイビーの長すぎない髪の毛。そこまでは普通だ。最大の特徴はそう、女のような顔をしているところ。
 女のような、というのは性別が男だからだ。
 ネカマをすると男に言い寄られるので却下、しかしイケメンになりたいかと言われるとそうでもない。
 なら、男の娘になればいいんじゃね? ということでこのアバターを作った。
 声は地声と同じくらいの高さにした。地声が少し高めなのでこのアバターでもそこまで違和感はない。

 と、これでは自分の顔をジッと観察するナルシストになってしまう。
 まあ、この世界に来たほとんどの人は自分が美形になったことで鏡見まくるんだけどね。
 帰ったら宝石のコレクションを全部並べてみようか。などと思いながら立ち上がる。

「ふう、〈空間移動テレポート〉」

 マイルームに転移するため、移動魔法である〈空間移動テレポート〉を発動させる。

 が。

「あれっ?」

 なぜか発動しなかった。魔力は十分にある。それなのに発動しない。
 詠唱が不完全だったか。滑舌はそこまで悪くないはずだが。
 仕方ない、もう一度詠唱してみよう。

「〈空間移動テレポート〉」

 それでも発動しなかった。
 運営に問い合わせをしようか迷っていると、突然BGMが聴こえなくなった。
 さらに、メニュー画面までも開かなくなる。これではGMコールすらできない。

「どうなってるんだ……?」

 困惑していると、視界の時刻なども消えてしまう。いよいよおかしい、ゲーム内の演出にしても行きすぎている。
 すると、地面のポリゴンが崩れ始める。自分以外の全てが、世界が崩れ始めた。
 身体が崩れたポリゴンに包まれ視界が覆われる。咄嗟に瞼を閉じ、腕を顔の前に移動させ守る。
 しばらくすると、空気を肌で感じるようになる。鳥の鳴き声も、羽ばたく音も鮮明に聞こえる。

 気が付くと、俺は森の中に立っていた。

* * *

 しばらく森の中を探索して、俺は一つの結論に行きついた。

 異世界転生しちゃった。

 何を馬鹿なことを、と思うだろう。
 しかし事実なのだ。現実の技術では仮想空間でここまでの再現はできない。
 『トワイライト』には疑似的な匂いと味覚は存在していた。だが、それに比べるとこの世界はリアルすぎるのだ。
 肌で空気を感じる。それはゲーム内にもあった。しかし今俺が感じてる空気は明らかに現実のそれなのだ。
 正確には、ログアウトし現実に戻った時に感じるあの感覚。ゲーム内とは明らかに違う何かを俺は今感じている。

 なのに、身体はゲーム内のアバターのままだ。
 メニューを開くことはできないが、アイテムを取り出すことはできる。さらに言えば、魔法も使える。
 ということは『トワイライト』が異世界になったのか? とも思ったがどうも違うらしい。
 俺はこんな森を見たことがないし、遠くに見える山脈には見覚えはない。

「どうしよ」

 ここまで状況を整理しても、何をすればいいのか分からない。
 とりあえず、元の世界には帰りたいかな。まだ『トワイライト』のエンディングを見ていないし、やり残したことだってある。
 web小説での異世界転生では、まず何をしていたのだったか。
 そうだ、街に行って冒険者登録をするのだ。そこでハーレムを作りながら世界を救う。なるほど理解した。その知識があればRTAも夢じゃないぜ。
 まずは街に……街どこ?

 飛行魔法で空から街を探そうかと思っていると、突然地面がドシンと揺れた。

「うわっ!?」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「っ!?」

 遠くから、咆哮が聞こえてきた。
 今のはドラゴン族のモンスターの咆哮か。ゲーム内では聴きなれていても、この世界で聴くと腹に響いて怖い。
 どの種類のドラゴンかは分からないが、この世界で俺の防御力などが反映されているとは限らないので戦闘は避けた方がいいかな。
 ドラゴンがいるであろう方向から回れ右し、立ち去ろうとしたその時。

「きゃあああああああああああ!!!」

 女の子の叫び声が聞こえた。

 その瞬間、俺は全力で声の聞こえた方向に走り出していた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...