弱小領主のコレクター生活~アイテムチートで冒険、領地運営をしながら最強領主に成り上がります~

瀬口恭介

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第一章『黄金の果実編』

066 コレクター、炎竜を越える

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 帽子返して帽子返して帽子返して帽子返して帽子返して。
 俺の頭の中はその言葉で覆いつくされていた。もう三日も黒キャスケットを被っていないのだ。限界だ。
 キャスケットが本体と言ってもいいくらいには大切なのだ。某海賊の麦わら帽子みたいなものだ。

「帽子返せ帽子返せ帽子返せ……ほらやろう。さっさとやろう。ぶっ倒してやる」
「目が! 目が怖いのじゃ!」
「落ち着けレクト! 正気に戻れ!」

 心外だなぁ。俺が正気を失った時はレアアイテムを手に入れた時と、武器の強化に失敗して武器が破損した時くらいだよ。
 凄まじく運が無いな俺は。やかましいわ。何本折ったと思ってるんだ。

「何言ってるの、俺はいつも正気だよ」
「ぬふふ。今日もコテンパンにしてやるのじゃ!」

 そう、俺は昨日ドレイクにコテンパンにされた。
 あの技、〔キルタイム〕による消耗で身体が限界を迎えてしまったのだ。
 だがあと少しで勝てそうだったのだ。この技を使うタイミングさえあればドレイクに勝つことができる。
 ちなみに、〔キルタイム〕は短時間に相手をキル、倒すことに長けているという理由で名付けた。

「言ってな、トカゲ幼女」
「あーわしもう怒ったのじゃ! ぶっ飛ばすのじゃ!!!」

 戦闘の前から挑発することで相手の注意力を奪う作戦である。
 嘘である。そんな効果あるわけないじゃん。こんなのでもドレイクだよ相手は。

「本当にあれが伝説の竜と世界を救おうとしてる英雄なの?」
「らしいぞ」

 なんか二人が失礼なことを言っているが知るか。帽子返して。
 もしかしたら男の娘としてしてはいけない顔をしているのかもしれないけどもうそんなことを気にしている暇はない。帽子を、帽子を被らせてくれ。

「じゃあいつもみたいにオレが合図を出すぞ」

 カリウスの言葉に、集中力を高める。
 まずは普通に戦闘。ドレイクの動きを見ながら避けて、隙を伺う。

「勝負……始め!」

 合図と同時に地面を蹴る。
 軽量装備に刀なので素早い動きができる。これが鎧ならば、攻撃を受けることを前提として動く必要がある。
 なので今回は素早い動きなどを利用し避けることに集中する。

「〔コールド〕!」

 俺の剣が冷気を帯びる。
 まずは攻撃力の高い武技での攻撃だ。氷魔法と同じ属性である〔コールド〕を使うことでドレイクの弱点を突く。
 もちろん序盤の武技なのでそこまで期待はしていないが、ステータスの補正で最低限の効果はあるはずだ。

「氷など、簡単に溶かしてやるのじゃ!」
「今!」

 身体をひねらせながら倒れこむ。
 そして、ドレイクの出した炎に耐えながら足元に攻撃をする。

「なぬぅ!?」

 ドレイクは驚いているが、ギリギリで躱された。
 だが、俺の狙いはそこではない。狙っていたのは足元、文字通り足元、地面である。
 地面に剣先が触れると、そこから氷塊が発生する。ゲーム内では継続ダメージが発生するエフェクトだ。
 氷塊に押し上げられ体勢を崩したドレイクに、さらに追い打ちをかける。

「〔フォルテコールド〕!」

 上位の氷属性武技、〔フォルテコールド〕。この武技ならばドレイクへのダメージが期待できる。
 俺は一回転して体勢を立て直し、そのまま地面を蹴ってドレイクを見据える。
 そして、動きが鈍くなったドレイクに刀を振り下ろす。

「なんのっ! わしの全力で、跳ね返すのじゃああああ!」
「うおおおおおおおっ!!!」

 ドレイクは炎を纏い、手を業火で包み込む。
 灼熱の炎と、寒冷の刀が衝突する。辺りに炎と氷が飛び散り、熱と冷気を同時に感じる。
 鍔迫り合いのような状態が続く。すると、突然爆発が起きた。対極の属性がぶつかり合ったことで爆発したのだろう。
 お互いに吹き飛ばされ、水蒸気の霧の向こうの相手を見る。

 今しかない。

「〔キルタイム〕」

 そう呟いた言葉と同時に、世界から色が消える。音が鮮明に聞こえ、霧の向こうにいるドレイクが赤く光る。足跡までバッチリだ。
 この霧は長くは続かないだろう。ならば視界が良くないこのタイミングで、〔キルタイム〕を発動させるべきだ。

「っ! 来てるのじゃ!?」
「――――しゅっ!」

 〔キルタイム〕は足音を抑えて走ることができる。なので、ドレイクの反応を遅らせることができるのだ。
 対応が遅れればそれだけこちらが有利になる。先制攻撃出来たらなんでも強いでしょ、そういうこと。
 攻撃に成功し、ドレイクの隙を突くことができた。反応が遅れ、反撃ができていない。
 俺は霧の中で、〔アスタリスク〕を再現した。これは、武技を発動させることで発生するライトエフェクトを見せないようにするためだ。

「〔イグニスコールド〕!」

 上位武技である〔イグニスコールド〕を発動させた。
 魔法の域に達する属性武技を再現するのは不可能なので、隠密性の期待はしない。
 それでも霧で反応を遅らせることはできるので、そのまま刀を振り下ろした。
 炎と氷が発生し、再び霧が現れる。爆発まではいかないが、対極のエネルギーでの攻撃なのでダメージは出ているはずだ。

「また霧が……! なら、霧ごと吹き飛ばしてやるのじゃ……!」
「させないよ!」
「くぅ……!」

 もうここからは武技を使わない。ただひたすら斬るのみ! 猛攻猛攻また猛攻! 隙を与えない!
 俺の斬撃を避け、ドレイクは拳に力を入れた。視るんだ、未来予測にも到達するこの目を使って。
 その拳は……左だ!

「そこだああああああああ!!!!」

 右側に突っ込みながら、俺は刀を振り下ろした。
 ドレイクの拳が左側の空間を突き、俺の刀がドレイクの腹に直撃する。
 炎のガードがドレイクを守るが、こちらの攻撃力の方が上だ。

「ぐ、あああああああ!!」

 ドレイクはダメージを負い、吹き飛ばされた。加減はできなかったが、死にはしないだろう。

「ぬぅ……わしの負けじゃな……」
「やった……ぁ! あ……」

 ドレイクの敗北宣言と同時に〔キルタイム〕が解除され、身体の自由が奪われる。
 本当にギリギリの状態だったのだ。あと少し〔キルタイム〕が短かったら負けていた。
 仰向けに倒れた俺に、カリウスが拍手をしながら近づいてくる。魔王を倒した後に出てくる裏ボスなの???

「おめでとう、レクト。まさか本当に勝つとは思わなかったぜ」
「キャスケットぉ……帽子ぃ……」
「はいはい」

 その後、ポーションを飲み復活した俺は、泣きながらキャスケットを抱きしめるのだった。
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