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第二章『黄金の羊毛編』

081 騎士、そらをとぶ

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「名前はリスティナ、ピンク色の髪の毛で魅了魔法を使う。そして獣人たちをペンダントで操っていたと……はい、ありがとうございます。王には私から伝えておきますね」
「お願いします」

 倒れた獣人たちを起こした俺は、王城へ向かいトレバーさんに報告をした。
 つい先程あったことを簡単にだ。俺がルディオ王子を殺したことは……伏せておいた。話す必要はないだろう。

「しかしよく戦って生き残りましたね、怪我もしていないように見えます」
「それなりに自信があるので」

 そうだった、トレバーさんは俺の実力を知らないのだ。
 どうせ獣王戦で実力が知れ渡るのだからバレてしまってもデメリットはないのだが、どうせなら初見で驚かせたかった。

「獣王戦で優勝すると言い出した時はどうしたものかと思いましたが、これは本当にもしかするかも……? とにかく、期待していますね」
「どうも。シウニンさんはまだ話し合い?」

 俺が王城を訪ねたのは、シウニンさんとトレバーさんが話し合いをしている最中だった。
 もし終わっているのならこの後連れて行きたいなと思っていたが、話の途中で報告したので無理そうだ。

「そうですね。それに今の話を聞いたら外にはあまり出たくないと言いますか……」
「分かりました。それじゃあトレバーさん、獣王戦見に来てくださいね」

 俺はそう言い残し、王城を後にした。

* * *

 俺たちは今、アルゲン平原に来ている。
 理由は、魔獣を相手にした接近戦を体験するというものだ。
 人間とはまた違った動きをする獣人たちと戦う前に、魔獣で練習するってことだね。

「ライトの冒険者カードが使えてよかったよほんと」
「うむ」
「久々の戦闘ね」

 どうせモンスターを倒すのだから冒険者としての討伐料金を受け取っておこうと冒険者窓口に行ったのだ。
 そのため四人のうち三人が冒険者として活動することになった。まあカリウスも戦闘に参加するんだけどね。

「過剰戦力じゃねぇか?」
「それぞれが勝手に見つけて戦えばいいんじゃない? 一人でも過剰戦力でしょ」
「まあ確かにそうだけどよ」

 世界救おうとしているのにちょっとした魔獣退治をするのだから一人でも過剰戦力だ。
 今回受けた依頼は平原の魔獣退治、特にどの魔獣を倒せとは書かれていなかったが、ネームドモンスターはいくつか書かれていた。今回はその魔獣を倒そうと思う。

 燃えるたてがみが特徴的なライオンのグレンライオンや角の生えた兎ホーンラビット、空中から魔法を使ってくるマジカルコンドル、ひたすらに力の強いストロングベア。
 この平原のボス的存在はこんなところらしい。
 こいつら以外のモンスターは強くないので適当に相手すれば倒せるだろう。

「うーん、じゃあオレはストロングベアがいいな」
「私はマジカルコンドルね、空中戦を鍛えたいの」
「わしはグレンライオンじゃな。火炎系最強はわしじゃから対峙せねばな」
「なら俺がホーンラビットかな」

 お店で注文するくらいのノリで戦う魔獣を決めていく。
 それぞれが平原に住んでいて生息地も書かれているので、個別で向かうのは面倒か。

「流石に別々に行動したら遠すぎるし、全員で一気に飛んで向かうのはどう? 他の人は見学でさ」
「賛成だ。オレだけ飛べねぇんだから探すの難しすぎるぜ」

 確かにそうだ。
 それと、みんなが戦っているところを見れば戦闘のヒントになるかもしれない。
 例えば、エリィが戦う予定のマジカルコンドル。おそらく空中戦がメインになるので今までにない戦闘になるだろう。

「ホーンラビットは平原全体を走り回ってるから後回しとして、ストロングベアのいる一番近い森に行こうか」

 アルゲン平原には小さな森が三つ存在する。
 それぞれがぽつんぽつんと点在しており、それぞれに森の主である魔獣が住んでいるのだ。
 ストロングベアとマジカルコンドルは森の中にいることが多いらしいので会いに行けるが、ホーンラビットは森から出ることが多いらしいのでなかなか会えない。
 グレンライオンはアルゲン山脈の入口辺りの主だ。炎なので森には住めない。

「〈浮遊フロート〉。はい、カリウスにも〈浮遊フロート〉」
「おう」

 空を飛ぶために〈浮遊フロート〉を使用する。
 それに続くようにエリィが天使の羽を、ドレイクが竜翼を出した。
 ドレイクは背中から竜の翼を出すことができる。人型になるのと同じように、少しだけ竜の要素を出すとこうなるらしい。便利。
 ドラゴンの見た目になって乗せてくれたら一番楽なんだけどなぁ……一々戻るのはかなり面倒らしく変身してくれない。

「空を飛ぶのはやっぱり楽しいなぁ……」
「結構……難しいなこれ」

 何気にカリウスは初めて飛んでいる。
 最初に〈浮遊フロート〉を使ったのはエリィだったか。もう一人で飛べるようになっちまって、おじさん悲しいよ。

「飛びながらホーンラビット探してよ? どこにいるかわかんないんだから」
「そんなこと言われてもなっ、うおおっ!?」

 俺が首を左右に動かしながらホーンラビットを探していると、カリウスが体勢を崩して一回転した。
 何とか地面には落ちずに済んだが、カリウスは空中で一回転した恐怖で滝のような汗を流していた。

「あらら、騎士様ともあろうお方が飛べないとは。それで村が守れるのぉ?」
「普通の騎士は飛ばねぇんだよ!!!」

 そんな会話を続けながら、俺たちは一つ目の森に向かったのだった。
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