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第2.5章『魔王懐柔編』
113 悪魔、コレクターの物になる
しおりを挟む隕石が落ち、いくつものクレーターが出来上がる。
警戒しながらも近づくと、そこにはルインが目を閉じて倒れていた。
至る所に痛々しい傷はあるが、姿はしっかりと残っている。残った魔力で防ごうとしたからだろうか。
流石に原型が残っていない場合蘇生できるか不安だったのでよかった。とりあえず死んでいることを確認しよう。
恐る恐る近づき脈を確認する。
「生きてる……?」
自分の心臓の音と混ざってどちらの動きなのか分からない。
自らの手で知っている相手を殺したのは二度目なのだ、それも今回はそれなりに親しくした相手。当然鼓動も早くなる。
死んではいないが、もう助からない状態だろうか。
「ぁ……」
「っ!?」
突然ルインに腕を掴まれぎょっとする。やはりまだ生きているのだ。
ルインの顔を見ると、薄っすらと目が空いていた。しかし目線は虚空を見つめており、瞳に光はない。
「ルイン?」
「ごめ……ん……ほん、と……に死ん、じゃ……ぅ……」
その言葉に思わず回復魔法を掛けようとするが、その前にルインは俺の腕から手を離した。
間に合わなかったか……まあ、それも覚悟して殺そうとしたのだが。目の前で死ぬのを見ると心臓が痛くなる。
それでも大丈夫。俺にはこの世界に存在しない魔法がある。
「〈蘇生〉」
蘇生魔法〈蘇生〉。ゲーム内では何度も使った魔法だが、この世界では二度目だ。
一度目は小動物に使った。いざという時に使えなかったら意味がないからこっそり実験していたのだ。
流石に実験で人間を殺すのは嫌だったので却下。小動物に使えて人間に使えないってことはないでしょ。ないよね?
ちなみに体力を全快の状態で復活させる〈完全蘇生〉も使えるが生き返ってから痛みを感じたほうがありがたみを感じるので少しだけ体力を残して復活する〈蘇生〉を使っている。
〈蘇生〉が発動すると、青白い魔方陣が現れて光がルインの心臓部分に集まっていく。
心臓部分の光が強くなり、少しずつ体の中に消えていく。
「……かはっ!」
息を吹き返し、ルインは呼吸ができるようになる。
ええと、心臓マッサージはいらないよね? 人工呼吸は……いやいやいや。必要ない必要ない。蘇生魔法はAEDじゃないんだ。
「はぁ……はぁ……げほっ……あれ?」
荒く呼吸をしながら、ルインは身体を起こす。
そして何が起こったのか分からないといった様子で辺りを見回した。
俺と目が合うと、信じられないとでも言いたそうな目で見てくる。
「おかえり。俺の勝ちでいいよね?」
「え……あたしさっき……死んで……」
「うん、死んだね。覚えてるんだ」
死の直前に自らの死を悟るという話はよく聞くが、こういった場合もそうなのだろうか。
ともかく、自分が死んだことを自覚しているのならありがたい。これで実は生きてて回復してもらったんだーとか言われたら困っていた。
「薄っすらとね……じゃあ、あたしレクトくんに生き返らせてもらったってこと……?」
「そうなる。それで、俺が勝ったってことはルインは俺の物になったってことでいいかな?」
「そうみたいだね……うん、あたしはレクトくんの物になるよ」
契約成立。これで今後のオルタガとの取引や戦力なども有利になる。
何よりも大きな危機が迫ったらそれが分かるのも大きい。
「とりあえず、〈全回復〉」
「んっ……ふう、ありがとねー。あー痛かったぁ」
いつまでも傷だらけなのも気になるので回復する。
これで完全に回復したはずだ。痛みもほとんどなくなり傷も消える。
精神的な部分までは難しいが、ルインなら大丈夫だろう。
それにしても……
「なんか、あんまり今までと変わらないような……」
そう、ルインの態度が変わらないのだ。一応これでルインは俺の下についたってことになるのだが、なんだか実感が湧かない。
別に態度を変えてほしいとは思わないけども。
「ん、態度を変えてほしいなら変えるよ? ご主人様?」
「いや、そのままでいいよ。なんかやだ」
ぞわってした。ご主人様とかやめてほしい。もっとこう、萌える感じの人に言われたい。ルインは裏がありそうって雰囲気がありまくりだからまだ怖い。
「あはは。でも命令されたら何でもするよ。その、そういうことでもね?」
「あんま変なこと言うなよ……でもまあ、ちゃんと協力してもらうよ」
「もちろん。世界が滅びるその時まで、協力させてもらうね」
ありゃ、隕石を落としてもまだ未来視の未来は揺るがないと思っているようだ。
どうせ無理だと思いながら行動されては困る。
「未来を変えるくらいの気持ちでやってもらいたいんだけど……」
「ん? もちろん全力は出すよ? あたしは道具だもん」
まあそれなら、いい、のか?
今のところはそれでいいか。全力さえ出してくれればやること自体は変わらないのだ。
それでも意志の強さで変わることは多いので今後考えを改めてくれることを願おう。
「はあ、もうそれでいいか。とりあえず、宿屋に帰ろう。カリウスが待ってる」
一応書き置きはしたが、やんわりとした内容しか書いていない。
少しルインの用事に付き合うから俺とルインは遅れてくる、とだけ書いたのだ。
カリウスのことだから心配して俺たちを探しに行っているかもしれない。もう外も暗いからね。
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