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最終章『黄昏の約束編』
132 決戦ミカゲ その3
しおりを挟む国宝を隠しているのだと判断したミカゲは、レクトやシャムロット部隊を守るカリウスを気にも留めず、最大出力の氷魔法を放った。
レクトが魔法で相殺しようとするが、ミカゲの魔術は止まらない。広範囲にも及ぶ氷の壁がシャムロット部隊を丸ごと包み込むかのように襲い掛かる。
何とか威力が弱まり全滅はしなかったが、国宝を守るために集まっていたエルフやフェアリーたちの魔力障壁が破壊され、負傷者も出ている。
「いた。君が魔力源だね」
氷でレクトやカリウスの邪魔をしながら、ミカゲはレクトたちに支援魔法を掛けていた魔力源、一人の少女を発見した。
後方にいるには異常なまでの魔力量。この世界の基準で考えればトップクラスの実力者。
そんな少女と、ミカゲの二人だけがいる氷に包まれた空間が作られた。常に氷が生成され続け、壊しても壊しても再生していく密室だ。
「気配遮断に、認識阻害。隠そうとするのは正しいけれど、少し露骨すぎるよ」
「……」
「何故支援を止めないんだい。私が怖いのだろう?」
目の前にミカゲが現れたのに支援魔法を掛け続ける少女。体は震え、目は恐怖に怯えている。
その少女は、ミカゲも知っている少女、エルフだった。
シャムロットの王女、ティルシア。かつて病に侵されていた少女が、今目の前で怯えながらもこちらを睨んでいる。
いくら魔力量があろうと、ミカゲには遠く及ばない存在のはずだ。
「じゃあ、遠慮なくいただくよ」
ミカゲは遠慮なくティルシアの首元に手を伸ばし、紐を掴んでカギを手繰り寄せた。
三つ目の国宝。残るはレクトの持つ国宝が手に入れば、ミカゲの目的は達成する。
カギを取られても動揺しないティルシアを不気味に思いながら、ミカゲはその場から離れようとする。
が、その前にピタリと立ち止まった。
まだとどめを刺していない。
「君の支援魔法は邪魔なんだ。申し訳ないけどね」
刃のように鋭くなった氷をティルシアの頭を狙って射出しようとする。
――――刹那、氷の密室は破壊された。
否、切断された。斜めに、横に、縦に、無数の斬撃によって再生する間もなく崩壊していく。
そしてその斬撃は、ミカゲの手元にまで到達し、氷の刃を両断した。
これだけの斬撃を放つ人間は、一人しか知らなかった。
ミカゲの視線の先には、いつの間にか職業と装備を変えたレクトが、一刀の刀を光らせながら立っている。
「ティルシア!」
「レクト様。わたし、支援、頑張るね……!」
刀を構えながらミカゲに斬りかかるレクト。それに対し、ミカゲはティルシアから離れ空を飛びながら様子見に徹する。
ティルシアを守ろうとしたレクトであったが、殺されそうになっていたというのに支援魔法を掛け続けていた度胸に驚く。
あの時、ティルシアの支援魔法がなければレクトは軽く氷の壁を破壊することはできなかっただろう。
その思いを無下にするわけにはいかない。ティルシアを守るのも大事だが、ミカゲを倒さなければ何も変わらない。
「ティルシア……うん、お願い!」
後から追いついてきた仲間たちが集合し、横に並ぶ。
総力戦だ。レクトは〈浮遊〉やその他魔法の入ったスクロールをストレージから取り出し、発動させていく。
防御力強化、攻撃力強化、移動速度強化、自動回復力強化、クリティカル率上昇、MP回復魔方陣設置、覚醒魔方陣設置。
もしもの時のためにと所持していたスクロールたちを使用し、万全の状態にする。
対レイドボステンプレート。最大強化状態であった。
「この魔力は……まずいね、引いた方がよさそうだ」
地上に複数設置された魔方陣、そしてレクト自身の戦闘力をある程度把握したミカゲはその場から離れようと背を向けた。
が、その先には、全身真っ黒な服装の悪魔がいた。にっこりとほほ笑みながら、その背中から無数の魔力の手を伸ばしている。
「おおっと、残念だけど逃がさないよ?」
「魔王……! くっ、リスティナもやられたとは……」
魔王ルインが現れたことにより、リスティナの敗北を悟るミカゲ。
太古の昔に滅びた魔王の身代わりたちを召喚する魔方陣を以てしても、本物の魔王を止めることはできない。
知ってはいた、敵わないと。だがこれほどまでとは。
ミカゲにとって、ルインは天敵に近い存在だ。何せ、魔力の使い方が似ているのだから。
ミカゲのように自由に魔力を扱う魔王。ミカゲとの違いは、自分の魔力を主に使うか、空間の魔力を主に使うかというところだけだ。
「は、ははは……やってやるさ。やってやるとも!」
目の前の魔王を倒したところで、その間にレクトが追い付いてしまっては逃げることもできない。
そう判断し、ミカゲは戦うことを決めた。残りの国宝はレクトの持つ一つだけ、今の状態のレクトから奪い去るのは不可能。
ならば全力で戦い、倒して手に入れるだけのこと。
レクトの仲間たちも魔法により強化されていくが、所詮相手は技を中心とした戦闘。自由度の高いミカゲならばどうとでもなる。
「覚悟が決まったようだし、遠慮なくいかせてもらおうかなー!」
キッと睨みつけてきたミカゲに、ルインは覚悟を感じ取り戦闘を開始する。
レクトたちがミカゲに追いつくまでの間、時間を稼ぐために。
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