9 / 65
ポコノトリガー
しおりを挟む
ポコについての話を聞く前に、セルコンさんはお茶を出してくれた。
このお茶はなんのお茶なのだろうか。薬品みたいなのがたくさん置いてある棚から取り出していたので怖くて聞けなかった。でも美味しいからいいや。
「まずはそうね、驚いたことから。ポコはあなたといる時に、親である私にさえ見せなかった表情をしていたの。初めて見たわ、あの子のあんな幸せそうな顔」
「え、そうだったんですか?」
驚きだ。そんなに楽しそうにしていたのか、ポコ。
私といると楽しいのかな。嬉しいな、なんか。
「ええ。あの子は友達を作らなかったから。いつもいつも、15歳になったら魔術師として働くんだと言って同じ年の子と遊ぶのを我慢していたのよ。だから、私が働くことを止めた時にショックを受けたのでしょうね……」
それはそうだ。子供と言えば遊ぶのが仕事。それを我慢して勉強をしていたのだから、嘘をつかれた時の反動はより大きくなる。
「本当に、残酷なことをしていたのね。私、ポコが危険な目にあったらどうしようって思って、本人のことを考えてなかった。魔術師としてではなく、母親としてあの子が心配だという気持ちが勝っちゃったの」
「その気持ち、わかります。危なっかしいですよね、ポコ」
ポコの天然が炸裂するシーンが脳内で蘇る。すぐそこにある道を見失ったり、毒草を間違って採取したり……戦闘中にうっかりが発動しなくて本当に良かった。
一人だと心配という気持ち、今なら物凄く共感できる。
「うふふ、でもこれからはあなたがそれをカバーしてくれるんでしょう?」
「はい、もちろんです。……少しくらいは直してほしいですけどね」
「そうね、私としても困っちゃうわ。外面だけじゃなく、内面の成長も見たいもの」
「きっと驚くほど強くなりますよ。だって、私の目的は世界を旅することですから」
時間がかかるのもそうだが、世界中を旅することで様々な経験を得ることができる。
私の知らないことは山ほどあるのだ。王国だったか、そこさえ行ったことのない田舎者だからね。
「次はそうですね、普段のポコについて教えてください」
「普段のポコ? 今のポコより少し落ち着いてて、まっすぐだったわ」
「落ち着いてるポコ……?」
止まれば死ぬマグロみたいなやつなのに、落ち着く……? ちらっと顔を見たら目を輝かせている犬っころが落ち着く……?
「あんな感じになったのはあなたと出会ってからよ。もうこの先のことが楽しみでしかたないって顔に書いてあったもの。もしかしたら、あなたが旅に誘わなくても勝手に旅に出ていたかもしれないくらいにね」
「まあ、私が旅について話したらすごい興味津々でしたから、ありえますね」
ド田舎の村に閉じこもっていた私と、魔術師としての勉強のせいで人との関わりが少ないポコ。
やばいな、これは何から何まで経験したことないぜってペアだ。この旅、情報が大事になってくるぜ。
「それで、さっきも言った友達付き合いだけど……本当に仲のいい友達はいなかったの。話をする程度の相手ならいたけれど、遊ぶ相手なんていない。友達を作ろうとしても、魔術の勉強があるせいで付き合いが悪いと言われてすぐに離れてしまう。ポコはそれを受け入れて、魔術の勉強に専念することにしたの。受け入れた、というよりも諦めたという方が正しいかしら」
「諦めた……」
試してダメだったから、親のために、自分のために後悔しないよう魔術に専念したのか。
それと、友達が離れるという経験をして嫌になった。その二つだろう。私も経験がある。近所の男の子と喧嘩をして、敬遠になったりした。だから多少は気持ちはわかる。
私は、魔術のように熱中できるものがなかったな。あったら、多分旅に出ないでそれを夢にしていたかもしれない。
「だから、その反動であんな感じになっちゃったのかもしれないわね。仲良くしてあげてね、エファちゃん」
「はい。でもまだポコは変化しますよ、この先で出会う人々がポコと関わって、変わっていきます。私もそうです」
「そうよね、旅ってそういうものだものね」
旅が私を作る、人が人を作る。
私がこうしている間にも、私は関わっている人を形成している。
「お母さん! 空き瓶ってここになかったっけ!?」
「」
「ポコ!? って、それどころじゃない! 空き瓶!」
セルコンさんのポコ呼びに驚くポコだったが、準備に必死だったようでさらりと流した。
空き瓶……薬でも作るのかな。
「嵐のような奴だ……」
「楽しそうねー」
「あれ楽しそうですかね」
王国まで歩くのに、そんなに荷物が多くて大丈夫なのだろうか。なにあの釜、小さいけど絶対重いよ。
まだまだ準備には時間がかかりそうだ。ん、なんかお腹空いてきたな。
「あ、そういえば干し肉があった」
「干し肉?」
「ええ、豚肉とキラーラビットの肉の二種類を……あれっ」
昨日の豚肉もこっそり干し肉にしていたのだが、なんだか量が少ない。
というか、豚肉しかなくない? え、食べたっけ? おやつ感覚で帰り道食べてたっけ?
いやそんなはずはない。流石のポコとはいえ瞬時に干し肉を食べるなんて曲芸はできないはずだ。
「お腹空いたあああ!」
なんて思っていたら、私よりも肉を食べていたはずのポコが部屋に戻ってきた。
なぜだ、私もポコもお腹いっぱいになったはずなのに。こんなに早くお腹が空くだろうか。
あまりにも不自然すぎる。私は状況を整理することにした。
このお茶はなんのお茶なのだろうか。薬品みたいなのがたくさん置いてある棚から取り出していたので怖くて聞けなかった。でも美味しいからいいや。
「まずはそうね、驚いたことから。ポコはあなたといる時に、親である私にさえ見せなかった表情をしていたの。初めて見たわ、あの子のあんな幸せそうな顔」
「え、そうだったんですか?」
驚きだ。そんなに楽しそうにしていたのか、ポコ。
私といると楽しいのかな。嬉しいな、なんか。
「ええ。あの子は友達を作らなかったから。いつもいつも、15歳になったら魔術師として働くんだと言って同じ年の子と遊ぶのを我慢していたのよ。だから、私が働くことを止めた時にショックを受けたのでしょうね……」
それはそうだ。子供と言えば遊ぶのが仕事。それを我慢して勉強をしていたのだから、嘘をつかれた時の反動はより大きくなる。
「本当に、残酷なことをしていたのね。私、ポコが危険な目にあったらどうしようって思って、本人のことを考えてなかった。魔術師としてではなく、母親としてあの子が心配だという気持ちが勝っちゃったの」
「その気持ち、わかります。危なっかしいですよね、ポコ」
ポコの天然が炸裂するシーンが脳内で蘇る。すぐそこにある道を見失ったり、毒草を間違って採取したり……戦闘中にうっかりが発動しなくて本当に良かった。
一人だと心配という気持ち、今なら物凄く共感できる。
「うふふ、でもこれからはあなたがそれをカバーしてくれるんでしょう?」
「はい、もちろんです。……少しくらいは直してほしいですけどね」
「そうね、私としても困っちゃうわ。外面だけじゃなく、内面の成長も見たいもの」
「きっと驚くほど強くなりますよ。だって、私の目的は世界を旅することですから」
時間がかかるのもそうだが、世界中を旅することで様々な経験を得ることができる。
私の知らないことは山ほどあるのだ。王国だったか、そこさえ行ったことのない田舎者だからね。
「次はそうですね、普段のポコについて教えてください」
「普段のポコ? 今のポコより少し落ち着いてて、まっすぐだったわ」
「落ち着いてるポコ……?」
止まれば死ぬマグロみたいなやつなのに、落ち着く……? ちらっと顔を見たら目を輝かせている犬っころが落ち着く……?
「あんな感じになったのはあなたと出会ってからよ。もうこの先のことが楽しみでしかたないって顔に書いてあったもの。もしかしたら、あなたが旅に誘わなくても勝手に旅に出ていたかもしれないくらいにね」
「まあ、私が旅について話したらすごい興味津々でしたから、ありえますね」
ド田舎の村に閉じこもっていた私と、魔術師としての勉強のせいで人との関わりが少ないポコ。
やばいな、これは何から何まで経験したことないぜってペアだ。この旅、情報が大事になってくるぜ。
「それで、さっきも言った友達付き合いだけど……本当に仲のいい友達はいなかったの。話をする程度の相手ならいたけれど、遊ぶ相手なんていない。友達を作ろうとしても、魔術の勉強があるせいで付き合いが悪いと言われてすぐに離れてしまう。ポコはそれを受け入れて、魔術の勉強に専念することにしたの。受け入れた、というよりも諦めたという方が正しいかしら」
「諦めた……」
試してダメだったから、親のために、自分のために後悔しないよう魔術に専念したのか。
それと、友達が離れるという経験をして嫌になった。その二つだろう。私も経験がある。近所の男の子と喧嘩をして、敬遠になったりした。だから多少は気持ちはわかる。
私は、魔術のように熱中できるものがなかったな。あったら、多分旅に出ないでそれを夢にしていたかもしれない。
「だから、その反動であんな感じになっちゃったのかもしれないわね。仲良くしてあげてね、エファちゃん」
「はい。でもまだポコは変化しますよ、この先で出会う人々がポコと関わって、変わっていきます。私もそうです」
「そうよね、旅ってそういうものだものね」
旅が私を作る、人が人を作る。
私がこうしている間にも、私は関わっている人を形成している。
「お母さん! 空き瓶ってここになかったっけ!?」
「」
「ポコ!? って、それどころじゃない! 空き瓶!」
セルコンさんのポコ呼びに驚くポコだったが、準備に必死だったようでさらりと流した。
空き瓶……薬でも作るのかな。
「嵐のような奴だ……」
「楽しそうねー」
「あれ楽しそうですかね」
王国まで歩くのに、そんなに荷物が多くて大丈夫なのだろうか。なにあの釜、小さいけど絶対重いよ。
まだまだ準備には時間がかかりそうだ。ん、なんかお腹空いてきたな。
「あ、そういえば干し肉があった」
「干し肉?」
「ええ、豚肉とキラーラビットの肉の二種類を……あれっ」
昨日の豚肉もこっそり干し肉にしていたのだが、なんだか量が少ない。
というか、豚肉しかなくない? え、食べたっけ? おやつ感覚で帰り道食べてたっけ?
いやそんなはずはない。流石のポコとはいえ瞬時に干し肉を食べるなんて曲芸はできないはずだ。
「お腹空いたあああ!」
なんて思っていたら、私よりも肉を食べていたはずのポコが部屋に戻ってきた。
なぜだ、私もポコもお腹いっぱいになったはずなのに。こんなに早くお腹が空くだろうか。
あまりにも不自然すぎる。私は状況を整理することにした。
0
あなたにおすすめの小説
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる