28 / 65
誰でも簡単錬金術
しおりを挟む
ロープを掴み、壁に両足を付け、少しずつ登っていく。固定されているとはいえ、自分の体重を全てロープ一本に任せているというのはどこか不思議な感覚だ。
ゆらゆらと揺れながら、何とか身体を崖の上に乗りあげる。転がるように崖を上がり、はぁはぁと空気を吸う。これは精神的な疲れだ。いや、怖くなんかねぇし。警戒してただけだし。
「くぅ……! この冒険感、たまらないでありますっ!!」
「なんとなくアバンが危険な理由が分かった」
まだまだこんなものではないだろう。危険な場所でも興味がわいたら進んでしまう。
「あーレンキン草だー」
「いいね、採取していこうか」
ポコの錬金術、実はまだ見たことないんだよね。錬金術自体はポコから聞かされているが、実際に見たことはない。
「それなら、吾輩が持つでありますよ! なあに、心配ご無用、持たされていた仲間の装備で圧迫されていた空間が余りまくっているであります!」
「あ、うん。じゃあ、お言葉に甘えて使わせてもらうね」
何その反応に困る悲しい理由。荷物持ちなら当然かもしれないが、仲間から外されたばかりと言われたら流石に同情してしまう。
「じゃあ試しに錬金術をやってみよう!」
「え、こんなところでできるの?」
「もちろん! 手だけでも錬金はできるけど、鍋があればもっと幅が広がるんだよっ!」
そういえば錬金用と言っていた鍋も持ち歩いてたね。
「まず、鍋に水を張ります」
「いやー水魔術は便利だぁ」
「錬金術は吾輩も初めて見るであります!」
鍋に水を張る。魔術で水を出すので水の用意は不要。
「次に、レンキン草を用意します」
「ここに」
取れたてほやほやである。
なるほど、その場で作れば荷物もかさばらなくて楽ってことね。
「火を付けまーす」
「んーよいしょ」
簡易的なかまどを作って、火をつける。鍋を混ぜると、先程まで透き通っていた透明な水が、うっすら濁り始めた。水色、だろうか。青というには薄い色だ。
「これがレンキン水。ほとんどのポーションはこれにさらに素材を入れて作られるよ」
「へー、知らなかった」
全ての元ってことか。しかし、ここまでは錬金術は関係ないのではないだろうか。
だって、鍋に入れて混ぜてるだけでしょ? 私でも出来ちゃう。
「ここに、薬草をぶち込みます」
「薬草薬草……これか」
そのまま食べたり、塗り薬にする薬草。
薬草などの魔力を持った植物は、量産には向かない。魔力を地面から吸い上げるため、その場所で大量に作ると土地が死んでしまうのだ。
もちろん土地の魔力を回復させることはできるが、わざわざそんなことをするよりも、ちょっと外に出て採取してきた方が楽だしお金もかからない。むしろ稼げるくらいだ。
「これなら私でも出来そうじゃない?」
「うん、これくらいなら誰にでもできるよ。でも、集中しないと失敗しちゃう」
失敗って、鍋にぶち込んで作るんだから失敗も何もないだろう。
「そろそろかな。ビンを入れます」
「ビンを入れ……入れる!?」
「入れるであります!!」
アバンがビンを三つ鍋にぶち込んだ。
ちょっとちょっと! この回復ポーションをビンに入れて飲むんじゃないの!?
そう思った矢先、鍋の中の液体が光り始める。なんだなんだと思っていると、ぶわんと紫色の煙が噴き出す。
煙はすぐに消え、鍋の中には回復ポーションが三つ残っていた。
「できたー!」
「ええ!? なんで!?」
「え? だって錬金術だよ? 適切なタイミングで、瓶を入れたらできるの。じゃあ、危なくなったら飲んでね」
「ありがとうであります!」
衝撃の錬金術は、何事もなかったかのように終わった。結果的にポーションが手に入ったからいいか。
錬金術も見たし探検しますか。
「グワアアアアアアアアアアアーーッ」
「ち、近いよ!」
さて出発だと思ってすぐ、ポコが叫び声に気づく。山に入る前に聞こえたあの声と同じだ。本当に近い、もう目に見える位置にいるのではないだろうか。
崖の上は、開けた森になっていた。木もそこそこに、何より転がっている岩が目立つ。
それにしても、木が少なくないだろうか。少ないというより、切り株が多い? 折れている?
「最近現れた動物……いや、魔獣かな」
魔物や動物ではここまでの破壊はできないだろう。
例えできたとしても、このような普通の山や森には現れない。強い魔物は強い魔力のある場所に現れるのだ。
「確認するであります!」
「確認って?」
私の声が届くよりも前に、アバンは目をつむった。ポケットから金属の棒を二本取り出す。片方は普通の金属の棒、もう片方は二又になっている棒。普通の棒を二又の棒に当て、音を鳴らす。
キィィィィンと高い音が鳴り、静寂が訪れた。これで何がわかるというのだ。
「いたであります。クマ……だけど大きいでありますな。おそらくクマの魔獣であります。錬金術に反応してこちらに向かってるでありますよ!」
「そこまでわかるの!?」
「いやぁ、精霊の力も少し借りてるでありますから。とにかく、戦闘になるであります! 準備を!」
木が多く先が見えなかった場所から、大きなクマが飛び出してくる。
「グワァーーー!」
私の知っているクマも相当に大きかったが、大きさだけじゃない。驚くべきはその肌。
通常、クマなどの獣は毛皮に覆われている。だが、どうしたことか。このクマは、鎧のような何かを着ているのだ。小手のようなものや、胸当て。肩パット。フォールド。全身フル装備だ。
戦いに特化した魔獣。いざ、尋常に!
ゆらゆらと揺れながら、何とか身体を崖の上に乗りあげる。転がるように崖を上がり、はぁはぁと空気を吸う。これは精神的な疲れだ。いや、怖くなんかねぇし。警戒してただけだし。
「くぅ……! この冒険感、たまらないでありますっ!!」
「なんとなくアバンが危険な理由が分かった」
まだまだこんなものではないだろう。危険な場所でも興味がわいたら進んでしまう。
「あーレンキン草だー」
「いいね、採取していこうか」
ポコの錬金術、実はまだ見たことないんだよね。錬金術自体はポコから聞かされているが、実際に見たことはない。
「それなら、吾輩が持つでありますよ! なあに、心配ご無用、持たされていた仲間の装備で圧迫されていた空間が余りまくっているであります!」
「あ、うん。じゃあ、お言葉に甘えて使わせてもらうね」
何その反応に困る悲しい理由。荷物持ちなら当然かもしれないが、仲間から外されたばかりと言われたら流石に同情してしまう。
「じゃあ試しに錬金術をやってみよう!」
「え、こんなところでできるの?」
「もちろん! 手だけでも錬金はできるけど、鍋があればもっと幅が広がるんだよっ!」
そういえば錬金用と言っていた鍋も持ち歩いてたね。
「まず、鍋に水を張ります」
「いやー水魔術は便利だぁ」
「錬金術は吾輩も初めて見るであります!」
鍋に水を張る。魔術で水を出すので水の用意は不要。
「次に、レンキン草を用意します」
「ここに」
取れたてほやほやである。
なるほど、その場で作れば荷物もかさばらなくて楽ってことね。
「火を付けまーす」
「んーよいしょ」
簡易的なかまどを作って、火をつける。鍋を混ぜると、先程まで透き通っていた透明な水が、うっすら濁り始めた。水色、だろうか。青というには薄い色だ。
「これがレンキン水。ほとんどのポーションはこれにさらに素材を入れて作られるよ」
「へー、知らなかった」
全ての元ってことか。しかし、ここまでは錬金術は関係ないのではないだろうか。
だって、鍋に入れて混ぜてるだけでしょ? 私でも出来ちゃう。
「ここに、薬草をぶち込みます」
「薬草薬草……これか」
そのまま食べたり、塗り薬にする薬草。
薬草などの魔力を持った植物は、量産には向かない。魔力を地面から吸い上げるため、その場所で大量に作ると土地が死んでしまうのだ。
もちろん土地の魔力を回復させることはできるが、わざわざそんなことをするよりも、ちょっと外に出て採取してきた方が楽だしお金もかからない。むしろ稼げるくらいだ。
「これなら私でも出来そうじゃない?」
「うん、これくらいなら誰にでもできるよ。でも、集中しないと失敗しちゃう」
失敗って、鍋にぶち込んで作るんだから失敗も何もないだろう。
「そろそろかな。ビンを入れます」
「ビンを入れ……入れる!?」
「入れるであります!!」
アバンがビンを三つ鍋にぶち込んだ。
ちょっとちょっと! この回復ポーションをビンに入れて飲むんじゃないの!?
そう思った矢先、鍋の中の液体が光り始める。なんだなんだと思っていると、ぶわんと紫色の煙が噴き出す。
煙はすぐに消え、鍋の中には回復ポーションが三つ残っていた。
「できたー!」
「ええ!? なんで!?」
「え? だって錬金術だよ? 適切なタイミングで、瓶を入れたらできるの。じゃあ、危なくなったら飲んでね」
「ありがとうであります!」
衝撃の錬金術は、何事もなかったかのように終わった。結果的にポーションが手に入ったからいいか。
錬金術も見たし探検しますか。
「グワアアアアアアアアアアアーーッ」
「ち、近いよ!」
さて出発だと思ってすぐ、ポコが叫び声に気づく。山に入る前に聞こえたあの声と同じだ。本当に近い、もう目に見える位置にいるのではないだろうか。
崖の上は、開けた森になっていた。木もそこそこに、何より転がっている岩が目立つ。
それにしても、木が少なくないだろうか。少ないというより、切り株が多い? 折れている?
「最近現れた動物……いや、魔獣かな」
魔物や動物ではここまでの破壊はできないだろう。
例えできたとしても、このような普通の山や森には現れない。強い魔物は強い魔力のある場所に現れるのだ。
「確認するであります!」
「確認って?」
私の声が届くよりも前に、アバンは目をつむった。ポケットから金属の棒を二本取り出す。片方は普通の金属の棒、もう片方は二又になっている棒。普通の棒を二又の棒に当て、音を鳴らす。
キィィィィンと高い音が鳴り、静寂が訪れた。これで何がわかるというのだ。
「いたであります。クマ……だけど大きいでありますな。おそらくクマの魔獣であります。錬金術に反応してこちらに向かってるでありますよ!」
「そこまでわかるの!?」
「いやぁ、精霊の力も少し借りてるでありますから。とにかく、戦闘になるであります! 準備を!」
木が多く先が見えなかった場所から、大きなクマが飛び出してくる。
「グワァーーー!」
私の知っているクマも相当に大きかったが、大きさだけじゃない。驚くべきはその肌。
通常、クマなどの獣は毛皮に覆われている。だが、どうしたことか。このクマは、鎧のような何かを着ているのだ。小手のようなものや、胸当て。肩パット。フォールド。全身フル装備だ。
戦いに特化した魔獣。いざ、尋常に!
0
あなたにおすすめの小説
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる