気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

文字の大きさ
33 / 65

そのための素材……あと、そのための装備……?

しおりを挟む
 魔獣の解体は複数人で行われた。
 解体人は、魔獣の身体に魔力を流しながら、各素材に切り分けていく。話を聞くと、魔力を流すことで流れやすい部分を判断し、正確な素材にするのだとか。
 そうして剥ぎ取られた皮や爪、牙に骨は床に綺麗に並べられた。肉はどうする? と聞かれたのでそれも切り分けてもらうことにした。魔力って便利だなぁ。

 魔獣を食べる文化はあまり広まっていないが、食べれることを知っている人はそれなりにいるらしい。ただ、魔獣は恐ろしい魔の生き物なのだと幼い頃から聞かされていた普通の人は食べるのに抵抗があるとかなんとか。
 私は幼い頃に食べたから平気だったんだなぁと思いつつ、他の解体を見学する。

「魔力……流れ……」

 左手で素材に魔力を流し、右手で流れを確認する。本当だ、素材によって流れ方が違う。
 今までは、ただ解体すればいいと思っていた。この知識があれば、必要な部分だけを剥ぎ取って捨てることもできる。まあ私は全部食べるけど。

「えっちゃーん! 戻ったよー!」

 えーっと、魔力を通しやすい素材は攻撃する部分に。魔力を多くため込んでくれる素材は装備や武器の装飾に。だったか。

「エファ殿ー、帰ってきたでありますよー」

 流れ方の違い、これは武器を使う上でも理解していた方がいいだろう。効率よく魔力を流せるようにできれば、戦闘も最小限の魔力で勝つことができる。
 まだまだ改善点は山ほどある。これから先も、次々とできることが増えていくだろう。

「しまっちゃおうよ」
「そうでありますな! では!」

 視界から突然素材が消える。驚く暇もなく別の素材が次々に消える。泥棒かっ!? と思いつつ顔を上げると、ニコニコしながらこちらを見ているポコと、素材を回収している隊長がいた。

「ごめん、集中してた。何買ったの?」
「ちょうみりょー? ってやつ!」
「調味料とパンであります。塩や砂糖などの調味料と、パンさえあれば旅はできるでありますから」
「確かに。それと熊肉以外の魔獣肉も欲しいかな。これだけだと臭みがね」

 調味料は肉を美味しくしてくれる。中には臭みを取ってくれる調味料もあるのだが、数が少なく高価だ。酒なら安く手に入るのに。
 パンは単純に飢えをしのぐため。まあ魔獣を狩れば食糧問題は解決するし、気にしなくてもいいかな。肉以外も食べたいからパンはありがたい。

「あのね、買い物してたら――――――」
「はいはい、歩きながら聞くよ。隊長、容量はどう?」
「まだまだ余裕であります!」

 それはつまりあの大きなヨロイグマを丸ごと収納しても余裕で容量が余るということか。どんだけでかいんだその空間は。頼もしいことこの上ない。
 ポコが隊長とどんな会話をしたとか、買い物をしたとかを楽しく語っているのを聞きながら、鍛冶屋に向かった。

* * *

 いやー、まさかとトパーさんが商店街で買い物をしていたとは。しかも、隊長の元仲間がアカネさん達だったとは。意外と、世界は狭いのかもしれない。なんて思ってしまうくらいには知り合いで話が完結していた。

「あれ、増えてるね。こんにちは」
「こんにちは」

 鍛冶屋のお兄さんは相変わらず何かを運んでいた。鍛冶仕事の練習ができるようになったといっても、任されるのはまだ先の話だろう。
 こんにちはと言ったが、少しずつ空も暗くなりつつある。明日にすればよかったかな? でも今日頼んで明日受け取った方が確実か。

「ヨロイグマを狩ったので装備を作りに来ました」
「昨日の今日でかい?? すごいなぁ……」
「ポコ殿、あのお方は誰でありますか?」
「鍛冶屋の……見習い? の人だよー。わたしとえっちゃんの武器を強化してくれたの」

 その後隊長とお兄さんは軽く挨拶をし、別れた。
 本題はおじいさんの方だ。装備といえば、鎧だろう。今まで見かけた狩人達は、魔獣の素材などで作られた防具を身に着けていた。私は装備がどのように作られ、どのくらい素材が必要かなんてのは、全く理解していない。ド素人だ。
 だから簡単な防具だけでも作ってもらい、値段を確認しつつ防御力を上げようと考えた。私は軽い防具がいいな。

「またお前さんらか。今日は何の用じゃ」
「ヨロイグマの素材で装備を作りたいんです。どのくらいお金かかりますかね?」
「どれ、見せてみろ」

 私は隊長にヨロイグマの素材を置くように言った。
 床に並べられていく素材たち。何度見ても圧巻だ。これよりも大きな魔獣を倒した時なんかはどうなってしまうんだろう。
 それこそ、少人数では倒せないから山分けかな。でも私たちのような三人だけの討伐隊でドラゴンを倒したら……うへへ、お金いっぱいだねそれ。最高かー?

「ほう……これならば、そうじゃな。これでどうじゃ」
「えー? 私たちこれからしばらくは鍛冶屋をする予定ですよ? 何度か来るお客さんなら、もう少し優遇してくれてもいいんじゃないですかね?」
「いうのぉ」

 臆せぬ態度。ポコの能天気さを見習って、私もやってみた。
 正直少しは緊張したが、向こうも乗ってくれたから嬉しかった。もしかして交渉上手? かわいいって罪なのでは???

「ならば優待客として扱おうぞ。具体的な戦闘での役割を言ってみい」
「魔術師! 弓!」
「近距離戦」
「罠とかサポートであります!」

 皆それぞれ、役割を伝える。

「魔術師とサポートならば装飾品に力を入れた方がいいじゃろう。エファじゃったか、お前さんは防御と速さならばどちらを取る」
「速さですね。動きにくいのは嫌です」
「じゃろうな。だいたいわかったわい。明日の昼頃に受け取りに来てくれんか。値段は気にせんでええぞ」
「了解しました。ありがとうございます!」

 そんなスピード感あふれる会話で、作られる装備が決定してしまった。
 でも、この人プロだし、任せた方がいいよね。ていうか、私のパーティー装備の幅少なすぎ……?
 重々しい鎧を付けているのは大剣などの大きな武器を装備している人だった。片や私たちは速く殴る戦士と弓を使う魔術師と変人トラッパーの三人だ。鎧を着る人がいない。よく言えば出費が少なくて済む。うん、そう考えよう。帰宅しながらそう考えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...