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有権者
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「ギン~」
私は今ギンの背中に乗って遊んでいる。
金属のような肌からは想像もつかないほど乗り心地がいい。これは……鞍を付ければ乗れるかもしれんね。
「クオックオッ」
「おお嬉しいか嬉しいか」
「わたしもー!」
もう今日は眠れないなと思うくらいに戦闘の興奮が冷めないのだ。夜通し遊んでやらぁ。明日から街に行って解体と換金をしてもらうのだ。移動中にひたすら寝てやる。
なんてことをしていると、遠くから明かりが近づいてくる。あれは……ここで労働をしている人たちじゃなかろうか。さっきの戦闘の音を聞いて駆けつけたのかな。
「どうするでありますかー」
「話をしよう。ポコ、遊んでて」
「あいさー」
私はギンの背中から降り、ポコに場所を譲る。
ギンは私たちを背中に乗せる遊びを理解しているようで、登りやすいように屈んでくれるのだ。賢い。
「失礼。先程大きな爆発音が聞こえましたが……ドラゴンの退治に成功したのですか?」
数人の有権者っぽい人たちから、一番偉いであろう人が前に出てきた。
このおじ……おにい……どっちだ? 若作りだが偉い人だし歳は取ってるのかな……いやでも……うーむ。
「はい、先程ドラゴンを倒したところです。おじさん」
「おじっ……そうか、すごいな。上級狩人並じゃないか」
あ、お兄さんの方がよかったっぽい。次からお兄さん呼びね。
んで、上級狩人ってなあに? 私ド田舎出身だからそういうの詳しくないんだよね。村に来た狩人さんそういうこと教えてくれないし。
「で、そこのドラゴンは違うのか?」
「違います。ギンです。一緒に戦ってくれました」
「クォォォンッ!」
ギンが嬉しそうに鳴いた。
他の有権者たちは恐れてひるんでいるが。
「ふむ、ではドラゴンの死体はどうしたのだ」
「吾輩が回収したであります!」
隊長がドラゴンが入ったクリスタルをお兄さんに見せる。ドラゴンクリスタル……カッコイイ!!!
「ほう、精霊の加護を受けているのか。ならば……ドラゴンを倒したことを王国に報告することをおすすめするぞ」
「なぜですか?」
「そのギン? がいたとはいえ三人でドラゴンを討伐したのだ。王国としても実力者の情報は欲しいだろう、直々に依頼を出されることもあるやもしれん」
直々に依頼かぁ。お金がたくさんもらえるなら嬉しいかもしれないが、私としてはのんびり好きな時に魔獣を狩りたいんだよねぇ。でも強い魔獣の情報とかも貰えるのか、ならかなりメリットになるのでは。
「なるほど……ありがとうございます。あ、そういえば明日って王国までの馬車って出てますか?」
「明日は残念だがないな。ちょうどいい、そのギンに手伝ってもらえばいいではないか。荷台は山ほどあるからな、貸し出してやらんでもないぞ」
後ろの有権者たちが笑う。へぇ、ちょっとしたジョークのつもりなのかもしれないが、ギンのことを馬鹿にしたな? いいだろう、その挑発乗ってやる。
「あ、それいいですね。お願いします」
「…………本気か? 冗談のつもりだったのだが……」
本当に冗談だったんだ。でもまあいいや、いける気がするし。
なんか……いける気がする!
「甘く見ないでください。鞍さえあれば乗って行こうかと思っていましたよ私は。ギン、いいかな?」
「クォー」
ギンが顔をこちらに近づけてくる。なでなでチャンス! クンカクンカスーハースーハー。
「おーそうかーよーしよしよしよし! んんんんんんんんんんーー!!!」
「…………」
「…………なんすか」
「…………」
そんな目で見ないで。
「いいだろう。街についたら荷台を馬小屋の管理人に渡してくれ。ドラゴン討伐の報酬金は明日の朝荷台と一緒に渡そう。それでいいな?」
スルーしてくれてありがとう。あれは発作みたいなものなのだ。ネコを飼っていた家でも同じような発作を起こす人がいたので、多分同じやつなのだろう。
「ええ。それでお願いします」
「解散の前に、本当にドラゴンを討伐したのか証拠を見せてもらえるかな」
「えー出すんでありますか? 仕方ないでありますね……」
隊長腕を振りかぶって…………投げたっ!
ボンッと煙が出る。その中から先程倒したドラゴンが現れる。血抜きは完了済みだ、いい色になっている。
「おお……おおお…………確かにこのサイズで間違いない」
「見たことあるんでしたっけ」
「いや、足跡や岩肌についた爪跡のサイズがギンとは違うサイズだったのだ」
それであまり警戒していなかったのか。くそう、もっと具体的にドラゴンのサイズを聞いておけばギンを犯人、いや犯竜だと勘違いしなかったのに。
「これで証拠は見せましたよね」
私が犯人だと勘違いされそうな言葉が出た。何の犯人だ。
「十分だ。長く引き留めてしまって悪かったね、帰り道に気を付けるように……と、言おうと思ったが、君たちなら襲われる心配はなさそうだ」
「失礼ですね、私たちはか弱い乙女ですよ」
「どこがだい?」
「よしみんな帰ろう。こんなところにいられるか」
秒で帰路につく。こんなところにいられるか! 私は帰らせてもらう!
「えっちゃん待ってー」
「あ、お疲れ様であります! ではっ!」
「クォーーーーーーーー」
あ、ギンもついてきてくれた。嬉しいねぇ。そういえばギンの家族はどうしてるのかな。一人暮らし? 具体的な意思疎通ができないのが惜しい。
「変な子たちだ。皆さん用は済みました、帰りましょう」
「あ、はい」
遠目に有権者たちが帰っていくのが見える。うーん、代表のおじさん以外は何をしに来たのだろう。
そんなどうでもいいことを考えながら山小屋に帰った。
私は今ギンの背中に乗って遊んでいる。
金属のような肌からは想像もつかないほど乗り心地がいい。これは……鞍を付ければ乗れるかもしれんね。
「クオックオッ」
「おお嬉しいか嬉しいか」
「わたしもー!」
もう今日は眠れないなと思うくらいに戦闘の興奮が冷めないのだ。夜通し遊んでやらぁ。明日から街に行って解体と換金をしてもらうのだ。移動中にひたすら寝てやる。
なんてことをしていると、遠くから明かりが近づいてくる。あれは……ここで労働をしている人たちじゃなかろうか。さっきの戦闘の音を聞いて駆けつけたのかな。
「どうするでありますかー」
「話をしよう。ポコ、遊んでて」
「あいさー」
私はギンの背中から降り、ポコに場所を譲る。
ギンは私たちを背中に乗せる遊びを理解しているようで、登りやすいように屈んでくれるのだ。賢い。
「失礼。先程大きな爆発音が聞こえましたが……ドラゴンの退治に成功したのですか?」
数人の有権者っぽい人たちから、一番偉いであろう人が前に出てきた。
このおじ……おにい……どっちだ? 若作りだが偉い人だし歳は取ってるのかな……いやでも……うーむ。
「はい、先程ドラゴンを倒したところです。おじさん」
「おじっ……そうか、すごいな。上級狩人並じゃないか」
あ、お兄さんの方がよかったっぽい。次からお兄さん呼びね。
んで、上級狩人ってなあに? 私ド田舎出身だからそういうの詳しくないんだよね。村に来た狩人さんそういうこと教えてくれないし。
「で、そこのドラゴンは違うのか?」
「違います。ギンです。一緒に戦ってくれました」
「クォォォンッ!」
ギンが嬉しそうに鳴いた。
他の有権者たちは恐れてひるんでいるが。
「ふむ、ではドラゴンの死体はどうしたのだ」
「吾輩が回収したであります!」
隊長がドラゴンが入ったクリスタルをお兄さんに見せる。ドラゴンクリスタル……カッコイイ!!!
「ほう、精霊の加護を受けているのか。ならば……ドラゴンを倒したことを王国に報告することをおすすめするぞ」
「なぜですか?」
「そのギン? がいたとはいえ三人でドラゴンを討伐したのだ。王国としても実力者の情報は欲しいだろう、直々に依頼を出されることもあるやもしれん」
直々に依頼かぁ。お金がたくさんもらえるなら嬉しいかもしれないが、私としてはのんびり好きな時に魔獣を狩りたいんだよねぇ。でも強い魔獣の情報とかも貰えるのか、ならかなりメリットになるのでは。
「なるほど……ありがとうございます。あ、そういえば明日って王国までの馬車って出てますか?」
「明日は残念だがないな。ちょうどいい、そのギンに手伝ってもらえばいいではないか。荷台は山ほどあるからな、貸し出してやらんでもないぞ」
後ろの有権者たちが笑う。へぇ、ちょっとしたジョークのつもりなのかもしれないが、ギンのことを馬鹿にしたな? いいだろう、その挑発乗ってやる。
「あ、それいいですね。お願いします」
「…………本気か? 冗談のつもりだったのだが……」
本当に冗談だったんだ。でもまあいいや、いける気がするし。
なんか……いける気がする!
「甘く見ないでください。鞍さえあれば乗って行こうかと思っていましたよ私は。ギン、いいかな?」
「クォー」
ギンが顔をこちらに近づけてくる。なでなでチャンス! クンカクンカスーハースーハー。
「おーそうかーよーしよしよしよし! んんんんんんんんんんーー!!!」
「…………」
「…………なんすか」
「…………」
そんな目で見ないで。
「いいだろう。街についたら荷台を馬小屋の管理人に渡してくれ。ドラゴン討伐の報酬金は明日の朝荷台と一緒に渡そう。それでいいな?」
スルーしてくれてありがとう。あれは発作みたいなものなのだ。ネコを飼っていた家でも同じような発作を起こす人がいたので、多分同じやつなのだろう。
「ええ。それでお願いします」
「解散の前に、本当にドラゴンを討伐したのか証拠を見せてもらえるかな」
「えー出すんでありますか? 仕方ないでありますね……」
隊長腕を振りかぶって…………投げたっ!
ボンッと煙が出る。その中から先程倒したドラゴンが現れる。血抜きは完了済みだ、いい色になっている。
「おお……おおお…………確かにこのサイズで間違いない」
「見たことあるんでしたっけ」
「いや、足跡や岩肌についた爪跡のサイズがギンとは違うサイズだったのだ」
それであまり警戒していなかったのか。くそう、もっと具体的にドラゴンのサイズを聞いておけばギンを犯人、いや犯竜だと勘違いしなかったのに。
「これで証拠は見せましたよね」
私が犯人だと勘違いされそうな言葉が出た。何の犯人だ。
「十分だ。長く引き留めてしまって悪かったね、帰り道に気を付けるように……と、言おうと思ったが、君たちなら襲われる心配はなさそうだ」
「失礼ですね、私たちはか弱い乙女ですよ」
「どこがだい?」
「よしみんな帰ろう。こんなところにいられるか」
秒で帰路につく。こんなところにいられるか! 私は帰らせてもらう!
「えっちゃん待ってー」
「あ、お疲れ様であります! ではっ!」
「クォーーーーーーーー」
あ、ギンもついてきてくれた。嬉しいねぇ。そういえばギンの家族はどうしてるのかな。一人暮らし? 具体的な意思疎通ができないのが惜しい。
「変な子たちだ。皆さん用は済みました、帰りましょう」
「あ、はい」
遠目に有権者たちが帰っていくのが見える。うーん、代表のおじさん以外は何をしに来たのだろう。
そんなどうでもいいことを考えながら山小屋に帰った。
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