気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

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決戦前夜

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 なんとか探索中の騎士を見つけ、ダルクの元へ戻った私は、事情を説明した。
 結果、小屋に集まり作戦会議を開くこととなった。全員が小屋に集まったのだが、ポコのお父さんらしき人はやはりいない。こっちに来るときに入れ違いになったらしい。

「えー、今日の探索により、エファ、ポコン、アバンの三人が四階層にて魔獣ベヒモスを発見した。他の探索班は小部屋で魔石を入手しただろう。ベヒモスは魔力を吸い取るので明日の戦闘にて魔力として使うことをお勧めする」

 ダルクが簡単に今日のことを解説する。
 私たちがベヒモスを見つけたことだけかと思ったが、魔石の使用についても言われるとは。
 ポコに聞いたのだが、魔石は砕くと魔力が回復するのだとか。もちろんそれ以外の使い道もあるが、今の状況だとその使い方が妥当だろう。

「本当にあの三人が見つけたのかよ」

 部屋のどこかからそんな声が聞こえた。ふっ、疑っても事実は変わらないぜ。

「エファ、解説しろ」
「えっ、私ですか!?」

 てっきりダルクが全部解説するものだとばかり。この状況で私が解説するのか……

「えっと、おそらく厄災の獣と呼ばれているベヒモスが王国が滅ぶ原因だと考えられます。なので、ここは最大戦力で戦うべきです。ベヒモスの身体は鎖で繋がれており、すぐには襲ってこないでしょう。動き始める前に攻撃をするのが効果的だと思います」
「でもよぉ、ベヒモスだろぉ? オレも聞いたことあるけど、本当に勝てんのかぁ?」
「最大戦力で勝てなかったらフォルテシアは滅びますよ」
「まあ……そうだな」

 この男の人の気持ちも分かる。本当に勝てるのか。
 元々全員強い何かがいるのは知っていたし、覚悟をしているとは思うが、それでも不安なのだ。

「まだ時間はあるんだろ? 戦力を強化してからでもいいんじゃねぇのか?」
「ベヒモスの鎖は一本が切れていました。それ以外の鎖もボロボロだったのでなるべく早く戦うべきだと思います」

 どちらにしろタイムリミットはあるのだ。明日、遅くても数日中に戦う必要がある。私的には明日戦うのがいいかな。鎖が全部切れるまでできるだけ攻撃をしたい。

「騎士殿、助力に来たという者が。新たな協力者だと思われます」
「よし、通せ」

 私の時は普通に入ったのに。
 しかしこのタイミングで来るとは。戦力の強化はこれで最後かな。
 決戦前に戦力が増えてよかった。

「やあやあやあ、よろしくなお前達!」
「アカネさん!?」

 扉を開けたのは赤髪の女性。紅の女狩猟団リーダーアカネさんだった。
 それから外に数人を残して、主力メンバーであろう何人かを連れて小屋に入る。

「紅の女狩猟団、遅ればせながら参上だ」

 かっけぇ。

「あ、ハックだー。久しぶりー」
「気安く話しかけるな!」
「変わらないなこいつ」

 えっと、アカネさんと、ハックとトパーさんとアズちゃん、それに黒髪の少女と白髪の少女。この二人は初見だ。

「紹介するよ。ショールとダイヤだ」

 アカネさんが二人の頭に手を乗せながらそう言った。二人は小さく頭を下げる。
 黒髪がショールで白髪がダイヤね。
 ショールはなんていうか、目つきが悪いね。私より悪いね。
 ダイヤは……雰囲気がポコに似てるかな? キラッキラしてるよ。

「んんっ。知り合いか?」

 ダルクが咳ばらいをしながらそう言った。しまった、騒ぎすぎたか。

「はい。フォルテシアの街で何回か会ったことがあるので」
「そうか。なら説明もお前に任せる。詳しい作戦を練るからしばらく端で説明していろ」
「えええええ」

 またも全部投げて来たよ。いや説明はするけどさぁ。

「というわけだから、説明するね。遺跡で――――――」

 遺跡についてのこと、オーブの話などを簡単に説明した。
 アカネさんはなんとなくわかったようで、独自で作戦や戦闘について考えているようだ。

「アカネさんならどうするんですか?」
「そうだなぁ、当然鎖が切れる前に全力で攻撃をするべきなんだが……ああそうだ、鎖が切れるのを前提で一番強い攻撃を浴びせるのもいいな。どうせ壊れちまうんだから手加減する必要なんざねぇし」
「確かに……だとしたら隊長の爆弾とか?」
「ええ!? 吾輩でありますか!? いやいや、あれは確かに強力ではありますが、一番強い攻撃とは言えないでありますよ! 爆弾は使うにしてもメインじゃないであります」

 ダメか。あれだけ大きい爆発を起こせるならメインにできると思ったんだけどなぁ。
 しかしあれはあれで強力な攻撃になる。

「そっかぁ、ならやっぱり全力攻撃かなぁ。魔術とかポコの弓とかは魔力回復薬を飲みながら戦うくらいじゃないとね」
「ええー! やだよ飲みながらなんて! 集中できない!」
「例えだって。交代が激しくなるから飲んですぐに攻撃、ってっていうのが基本になりそうだからさ」

 もちろん私も、戦闘中に魔力が切れたことはないが、空気中に魔力が無い状態だと魔力の消費が激しく、魔術を使わない私でも魔力切れを起こす可能性がある。
 ポコには悪いが、急遽魔力回復薬を作ってもらう予定だ。なにせ明日が決戦かもしれないのだから。

「よし、皆よく聞け。作戦は簡単だ。初手で最大火力の攻撃をした後、前衛と後衛に分かれ怪我をしたり魔力が少なくなってきた者は交代する。聞き逃した者は近くにいる奴から聞くか後で直接私の元まで来い」
「ダルク……さん。何があるか分かりませんから、誰かを王国に行かせて王様に伝えるべきだと思います」

 ベヒモスがいると分かったのは今日。今日からそれを報告しても意味がないのだ。アカネさんの紅の女狩猟団はゆっくりで三日だった、急げば二日だろう。
 二日経ったらもう間に合わない可能性すらある。もちろん死ぬつもりはないが、全滅したら終わりだ。
 王様ならこの報告を受けてすぐに行動するだろう。住民を逃がし、残った戦力で街を守る。

「そうだな。しかし到着する頃には決着はついているぞ」
「念のためです。あ、私の仲間のギンの竜車に乗せてください。そうすればすぐに伝えられます」
「ギン……ああ、貴様のところのドラゴンか。わかった、すぐにでも向かわせよう。今日はこれで解散だからな、伝令兵が居たはずだ。そいつを竜車へ案内してやれ」
「分かりました」

 ダルクさんが指名した伝令兵をギンの竜車に乗せる。ギンは私の言葉を聞き、まっすぐに王国に向かって飛び立った。やっぱり理解してるよねギン。
 一先ず後は明日に備えるだけだ。景気づけにアカネさん達と一緒に大量のドラゴン肉を食べ、気合を入れた。
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