気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

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ベヒモス討伐

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 何度か攻撃をしているうちに、ベヒモスの攻撃が変わった。今までは普通に爪で攻撃をしたり、身体を使って攻撃をしていたのが、いつの間にか紫色のオーラを纏うようになっていたのだ。
 そのオーラで攻撃をすることもあり、今まで通りの戦い方では対応しきれないのだ。
 だが、幸いにもオーラをまき散らすことによって魔力が少しずつ部屋に満ち始めた。弓兵や魔術師の攻撃が中心になり、私たち近接班は隙をついて強攻撃をぶつける係になっている。

「ふっ、拍子抜けだな。後半になってから怪我人は出たが、それでも被害は少ない」
「油断してると死にますよ」

 ポーションを飲みながら戦闘を見守るダルクに近づき、口を出す。
 余計なお世話なのはわかっているが、お互いにちょっとしたやり取りがストレス解消になっているのに気づいてからそれが当然になっていた。お互いに冷静になる道具として使っているのだ。ムカつく。

「裏を返せば油断しなければ誰も死なないということだ。本当に相手が強大であるならば、油断していなくても死ぬ」
「……はあ」

 思ったよりもまともな答えが返ってきた。
 強大すぎる敵と戦ったことのない私だから実感が湧かないだけで、そういう経験のあるダルクのような騎士はよく理解しているのだろう。そんなのが相手なら真っ先に飛び込んだ私はもう死んでいる。

「さ、行け。ラストスパートだ。王への報告が待ち遠しい」
「あんたも戦いなよっと、そうだ、褒美があるんだっけ。やったるぜえええええええ!!」
「女とは思えんな」

 失礼な言葉が聞こえた気がするが、今は見逃してやろう。今はベヒモスへのとどめの一撃を誰がするのかが問題だ。
 統計的に誰が一番攻撃を加えたかなんてわからないのだから、なんかあいつが一番活躍していたとみんなの記憶に残す必要がある。目立とう。

「おうエファ! やる気満々だな!」
「アカネさんこそ。紅の女狩猟団強すぎじゃないですか?」
「ったりまえだろ! あたしが育てたんだからな!」

 そう言われてしまうと納得するしかない。アカネさんの動きに合わせて全員が的確な判断をしながら動いている。うへー、一人一人はそうでもないのに攻撃の効率がえげつない。
 メインの五人もすごい。トパーさんは攻撃を避けまくるし、ハックは最小限の動きで攻撃をするし、ショールとダイヤの同時攻撃は強力だし、アズちゃんは可愛い。
 いや、アズちゃんも攻撃はしているのだが、どちらかというと不意打ちが得意なようでサポートに回っているようだ。不意打ちはもっと小さめの魔獣なら効くのに。勿体ない。

「おいエファ! お前も戦え!」
「戦ってるでしょ! ハックこそ、攻撃足りてないんじゃない?」
「余計な攻撃をして反撃を食らわないようにしているんだ。喋ってないで戦え!」
「そっちから話しかけて来たよね!?」

 向こうから話しかけて来たくせに。まあいい、とにかく今は攻撃だ。
 ベヒモスのオーラは今まで見えなかった体を守る魔力が見えるようになったかのような厄介さで、攻撃も通りにくい。なのでブレスをしたときや、遠距離班の攻撃が直撃した時などに全力で攻撃をしている。
 あ、爆発した。これは隊長の投げ爆弾か。今しかない!

「どおおおおりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 ベヒモスの身体を守るオーラごと殴る。オーラを拳が裂き、魔獣の熱い皮に直撃する。
 最初よりも断然攻撃が通りやすくなった。私のこの攻撃だけでベヒモスが怯むくらいには弱体化しているのだ。

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「うわあああああ!!」
「騎士さん!?」

 ベヒモスの動きが速くなった。防御を捨て、攻撃速度を上げたのだ。いよいよ後半だ。
 動きが素早くなったベヒモスは部屋中を動き回る。するとどうなるか、遠距離班への攻撃が当たってしまうのだ。今遠距離班を失うのはまずい。
 ベヒモスに攻撃をさせないように、私は動きについていくために爪を出して再びベヒモスに登った。

「さ、せるかああああああああ!!」

 ベヒモスが動いても私は爪を引っかけて動きについていける。しかし、それだけでは止めることはできない。私の賢明な攻撃虚しく、ベヒモスの巨体は遠距離班のいる位置へ移動した。

「ポコ! 防御!」
「まっかせてー!」

 この状況のポコは任せられる。普段はうっかりを発動させるのだが、今回ばかりはそうはいかない。
 真面目な場面ではポコは超絶有能なのだ。

 ポコの弓から黄色い矢が放たれる。電気を纏った矢だ。着弾すると、ベヒモスの動きが鈍くなる。ナイス。
 続けて魔力のシールドを遠距離班を囲うように配置。最高。私も全力で戦えるというもの。

「止まれ! 止まれえええ!!」

 攻撃が通るようになった背中を何度も叩く。騎士が、狩人が攻撃を避けきれずに怪我を負ってしまった。
 動きを鈍らせても被害が出るのか。最後の力を振り絞っているな。

「エファ! 背中のトゲを砕け!!」
「な、なんで!?」

 地上からダルクの指示が飛んできたので、驚いて聞き返してしまった。

「魔力が一番濃いんだ! こいつが教えてくれた!」
「エファ殿ー! 頑張ってでありますー!」
「隊長……ああ!」

 弱点を探すのが得意なんだっけ。魔力を見る眼鏡を使ったのだろう。
 なら、この状況での私の役割は決まったね。あの真っ黒なトゲを砕けばいいんだ。

「うわわわ、暴れんなって!」

 ベヒモスの背中に着地するが、動きが激しく振り落とされそうになる。
 バランスを保つのは難しいが、落ちそうになったらまた登ればいいのだ。とにかく、トゲを目指そう。
 背中のトゲは、魔力についてよく知らない私が見ても魔力で満ちているのが分かった。

「すううううううううう……………………」

 大きく息を吸い、禍々しい一番大きなトゲの前に立つ。
 拳を構え、一撃で決着をつける。
 暴れるな、すぐ終わらせるから。

 込める魔力が足りるか不安だが、時間がない。打ち込むか。
 そう思った瞬間、背中に何かが当たった。ポコの矢だ。つまり、攻撃力上昇。

「トドメ!」

 拳を打ち込んだ瞬間、背後から半透明な竜が現れた。拳と同じ動きをしながらトゲに突き刺さる。
 トゲにヒビが入り、バキバキっと折れる。隙間からあふれ出る魔力に軽い吐き気を覚えるが、何とか持ちこたえた。なんだ今のは。

「やったぞ!」

 下からそんな声が聞こえる。私が立っているベヒモスも横に倒れてしまったようで、ほとんど動けなくなっていた。
 地面に着地し、ベヒモスの様子を確認する。まだ死んではいないが、それも時間の問題だろう。
 ほっといても死ぬが、念のため今とどめを刺すべきだろうとダルクが剣を抜いた。

「お疲れさん」
「お疲れ様です」

 戦いを終えたアカネさんと言葉を交わす。
 軽く紅の女狩猟団のメンバーとも会話をし、ポコと隊長の元へ向かった。

「おつかれー!」
「お疲れ様であります!」
「うん、お疲れ。思ったよりも苦戦しなかったね」

 一回死にかけたけどね。
 なんて安心しながら会話をしていると、突然遺跡が揺れ始めた。
 ま、まだ何かあるの!?
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