むらゆう―村人を目指す英雄―

瀬口恭介

文字の大きさ
92 / 125
クラス転移編

めぐみ先生の説明会

しおりを挟む

 めぐみ先生の話を真剣に聞くべく、俺とミントは先生をまっすぐ見つめながら布と一転、座りやすくなった敷物の上に座っている。

「まずクラスの人気者、金町雄大くんですね。彼はノリが良く、話しやすいというところから休み時間には彼を中心にしたグループが集まっています。チャラチャラしているのが玉に瑕ですが……」
「能力は、ファイアマスターでしたね」
「そうです。炎を自在に操れる能力、なんですが、私は一度しか見たことはありませんね。使い慣れてなく、あたふたしていました」

 金町雄大、俺を下に見ている典型的な人間だ。
 もう一人、隣にいた女もそうだが、この二人は危ない。力を軽い人間が扱うと、ろくなことにならない。
 森での戦闘を見た感想だが、まだ能力を扱いきれていない。というイメージ。
 無駄な炎が多いし、魔力を無駄に使いすぎているので、効率がとても悪い。戦闘を重ねていけば、とんでもない強さにはなるだろう。

「次に芳乃よしの凍子とおこさん。彼女も金町くんのグループに居ますね。先生の私が言うのもあれなんですけど、女子のクラスカーストのトップが彼女ですね。能力が、ブリザードマスター、金町くんとは真逆の氷を操る能力です」

 芳乃凍子、ね。クラスカーストワンツーの二人はこれからも危険物として観察しよう。
 もし絡めるなら、絡んでみてもいいのかもしれない。
 森での能力の使い方だが、遠目から見てもその能力の強さがわかった。まず氷なので燃える、などという心配はない。森でも心置き無くぶっぱなしができるだろう。
 戦闘スタイルは魔力にものを言わせた氷塊ぶっぱ、相手を凍らせる侵食する氷。

「そしてクラスの委員長、笹谷涼太りょうたくん。みんなに慕われていて、常に他人のことを考えてる子です。説明されたとおりに言うと、能力は、二撃必殺。能力を発動させた状態で同じ場所に二回攻撃すると、生命力を消し去ることができる。という能力ですね」
「飛び抜けて強いですね、当てられなきゃ意味がないですが」

 実際に見た戦闘では、ヒットアンドアウェイで当てて引いての繰り返し。
 二回で済むので大抵の敵は倒せるだろう。だが、敵の強さによっては、倒しきれない、ということもあり得る。それでもかなりのダメージになるので、チートはチートだけど。

「えっと、その次がなつめあんずさんです。カチューシャを付けている女の子で、活発なイメージがあります。能力はブラッドエクスペリエンス……でしたっけ。倒した相手の血を力に変えることができる能力らしいです」
「相手の血を……」
「チート揃いですね」

 能力調査の時に隣にいたやつか。身長は小さいがありえないくらい強い能力だ。
 だって、戦えば戦うほど強くなるんだろ? まさにRPGじゃねぇか。俺たちは訓練とかしないと強くなれないのに。

「最後は秀吉ひでよしたくみくんなんですが……彼はこれという特徴はないですね。能力は強化系、とは言っていましたが、それ以外のことは知りません」
「秀吉くん……見た目も性格も普通だったよね」

 後ろで話をしていた相良たちが入ってくる。

「あいつねー、別にクラスの隅で集まってるオタク集団ってわけでもなかったし、金町たちともそんなに絡んでた訳でもないし……うーん、普通だし」

 普通って言ってやるなよ、まあ俺も全然思い出せないんだけども。
 能力は強化系、敵に触れることなく倒しているところを見たが、あの能力はなんなのだろうか。
 考えてもわからない、能力を推理するには、ヒントが足りない。

「まあのちのちわかってくるでしょう。それ以外に聞きたいことはありますか?」
「じゃあ隣の男の子達の名前とかって教えてもらえますか?」

 いいね、俺今村しか知らないよ。

「あー、あの『あ行組』ね」
「あ行組?」

 あ行組とはなんだろうか。まさか頭文字があいうえおなんて言うまいな。

「頭文字があいうえおになるんだし、部屋を決めた時になんとなく思いついただけなんだけど」

 当たってたよ、あいうえおか、いが今村だろうな。

明石あかいし直人なおとくん、今村鉄平てっぺいくん、内田颯斗くん、枝野えだの駿介しゅんすけくん、岡本おかもと恒平こうへいくん、この五人が隣の部屋にいる男子です。確かにあいうえおになりますね」
「すごい偶然ですね、能力とかってわかります?」
「全員はわかりませんが、五人中三人ならわかります」
「おお、教えてください」

 まあいくら先生でも人間だ、記憶力には限界がある。むしろよく覚えていたほうだろう。
 それにしてもすごいメンバーだ。あいうえおって、奇跡かよ。奇跡的な世代だよこいつら、バスケした方がいいんじゃないかな。

「まず明石くんですね、能力は硬化、皮膚や道具を硬くする能力です。次に今村くん、言語理解、文字が読めるようになります。最後に内田くん、ハイスピードムーブメント、魔力を使って物凄いスピードで動くことができます」

 二人知ってるぞ、今村は当然知っているが、内田、こいつも俺の近くで能力調査をしていた男だ。速さならグリーンの方が上じゃないか? まだ見たことないからわからないが。
 高速移動、あまりいいイメージはないな。速すぎて止まれないとか、アイドルオタクになったりとか、飛びながらカツサンドを買ったりとか、そんなイメージしかない。どんなイメージだ。

「能力自体は優秀ですよね、やっぱり魔力が足りなくて満足に使えていないと言ったところでしょうか」
「ですかねぇ、特訓して、強くならなきゃですね!」
「特訓かぁ……」

 特訓、というワードにその場にいた全員の食う気が重くなる。気持ちはわかるがやらなきゃ強くなれないぞ。
 俺たちはその後も話し続け、明日に備えるため途中で区切り、就寝した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...