トップランカーだったゲームに転生した俺、クソみたいな国を滅ぼす悪役集団の団長になる。

黒野マル

文字の大きさ
86 / 111

86話  共有

リエルの屋敷、朝の食堂。


「…………」
「…………」


厨房では既に朝ごはんができているにも関わらず、リエルとクロエは沈黙を保ちながらお互いの顔を見つめ合っていた。

そう、食堂にいるのはリエルとクロエだけだった。カイとニアはまだ来ていない。

クロエは、目を細めながら昨日の出来事を思い出した。


『ぶぅうううう』
『……二、ニア?俺、トイレ行きたいんだけど』
『やだ、カイと一緒にいる』
『うん?』
『トイレ、一緒に行けばいいじゃん』
『助けて!!!!クロエ!!!!リエル!!!!』


カイに24時間くっついていようとするニアと、そんなニアに困りながらも仕方ないとばかりに笑っていたカイ。

そして、昨日の夜にもニアはカイの部屋にいたはずだから……二人が現れないってことは、つまり………。


「……クロエ」
「……うん」
「一緒に行く?」


目的地は言わなかったというのに、クロエはすぐ頷きながら立ち上がった。


「そうだね。一緒に行こう、リエル」
「……さすがにカイの部屋にいるよね?二人とも」
「だろうね~~さてと、浮気者の首を取りに行こうか」
「クロエ!?!?!?」


平然と怖い言葉を口にしながら、クロエは食堂を出てカイの部屋に向かう。リエルはおののきながらも、その後を追った。

クロエも言葉ではそう言いつつ、カイの選択に関してはある程度は理解していた。

カイとニアは互いのことが大好きで、また自分に会うずっと前から生死を共にした関係だから。そして、クロエ自身もニアのことが大好きだから。

愛らしいあの少女の気持ちを考えれば、どうしても先取りするのは罪悪感がある。だからこそ、カイと初めてのキスをしたあの夜。

クロエはあえて、一線を超えなかったのだ。


『………でも、やっぱモヤモヤする』


二人の関係を考えれば、ここは自分が順番を譲った方がいい。実際にそう思って二人を見守っていたんだけど、感情が理性に上手く追いつかなかった。

私だって、大好きなのに。

ニア並みに愛しているし、できれば初めての経験ももらいたかったのに……あのバカ。

そうやってクロエの頬が段々と膨らんでいた時、リエルが柔らかい声を出した。


「さすがにノック、した方がいいよね?」
「……たぶん」
「ふふっ、頬がパンパンだよ?」


リエルはからかうように笑いながらも、トントンとノックをする。案の定、反応はなかった。


「ううん、まだ寝てるのかな?」
「……絶対に寝てる。開けた方がいいんじゃない?」
「あの、クロエ……?その、こ、声に殺気が……」
「ううん?やだぁ~~リエルも。殺気なんて全然ないもん。ただちょっとだけ、ちょ~~~っとだけカイにお仕置きしちゃおうかな~~って思っただけで~~ふふふっ、てなわけで。ドア開けようか」
「は、ははっ……はははっ……」


リエルは背筋を震わせながらも、笑うしかなかった。

クロエは戦場でこそ冷酷な暗殺者だが、普段はけっこう穏やかで大人しい性格なのだ。なのに、そんな彼女がここまで嫉妬するなんて……。

本当に罪深いな、カイって……そう思いながら、リエルは鬼気迫ったクロエの姿を見つめるしかなかった。

さっきは少なくとも笑うふりでもしていたのに、もはや嫉妬に呑まれて表情が死んだクロエは、光の速度でドアを開ける。

そうしたら、目の前に広がる暖かい光景。


「……へぇ」
「うっ~~~~~~~!?!?!?」


日差しを浴びているにも関わらず、ニアはカイに抱き着いたままぐっすりと眠っていた。

そんなカイもまた、ニアを抱き返していて……とても悪魔には見えない微笑ましい光景だというのに、リエルは一気に頬を染めながら顔を逸らす。

そして、クロエの視線はカイの体に刺さっていた。


「……やったな、こいつら」
「ははっ、はっ、あはははっ……」


そう、抱きしめているのはよしとしても、二人とも丸裸なのが問題なのだ。

明らかに、昨日の夜にカップル限定の運動をしましたって広告でもするような有様。

それを見て、クロエの目は益々冷えていく。


『やっぱり……抱きしめられた時にも感じたけど、カイって意外とがっしりとしてるよね。腹筋割れてるし、肩幅も広いし………こいつぅ』


こんな素敵な体を、私じゃなくてニアに先に見せたんですって……?

急に込みあがってきた恨めしさに耐えきれず、クロエは乱暴にカイの肩を揺さぶる。


「おい、起きろ。この浮気者」
「うぅん…………ん?クロ、エ……?」
「カイが……すぅ、カイがまた……浮気するぅ………すぅ、すぅ……」


まだねぼけているのか、カイは何度か体をよじった後にようやく薄眼を開いた。

そして、鬼の形相をしているクロエを目の前にした瞬間、カイの意識が一気に覚醒する。


「えっ」
「……………………」
「……………………あ、これは、その」
「昨日は楽しかった?楽しかったよね?私を置いて先にニアを抱いたんだから、そりゃ楽しいよね?」
「く、クロエ!?!?その、こ、これは…………!!」
「うぅん……クロエ?あっ、リエルだぁ~~えへへっ、おはよう……」
「うん。おはよう、ニア」


ニアはクロエを確認した後、すぐ目の前にいるリエルに自然と抱き着いた。

もちろん、ニアは服一枚着ていない裸状態で、リエルは困ったようにしながらも頭を撫でながら、ニアを甘やかす。

しかし、そんな暖かい風景の片方では―――――


「怒ってないよ?全然怒ってないもん」
「普通に怒ってるでしょうが!!本当に怒らなかったとしたら、先ずその目つきをどうにかしろよ!!普通に殺されそうだけど!?」
「やだ、カイったら~~私、そんな目つきしてないよ?私とは最後まで行かなかったくせにニアとは最後までしたんだ~~って、ちっとも思ってないから」
「くっ……!?そ、それは、その……!!!」
「気持ちよかったんだろうね~~うんうん、そうだよね~~」


全然怒ってないとか言ったくせに、クロエは唇を尖らせてぷいっとそっぽを向く。完全にめんどくさい女の仕草だった。

ヤバいな、これどうすればいいんだろう……そうやって、カイが頭を抱えた時。


「ニア」
「うん……?どうしたの、クロエ」
「今日は私の番。そうだよね?」
「……………………………………………………………ん?」


一瞬とんでもない会話を聞いて、カイはその場で凍り付いてしまった。


「ぶぅう………分かった。今日は、クロエの番」
「えっ、ちょっ。俺の意志は?」
「てなわけで、カイ?今日のあなたの時間は私がもらうから。あ、ちなみにエッチはしないから大丈夫だよ?私にだって女としてのプライドがあるんだから。あなたが先に襲ってくれない限り、私もぜ~~~~~ったいに先に誘わないから!!」
「だから、俺の意志は!?!?なんで俺の時間を二人が勝手に共有してるんだよ!!おかしいだろ、これ!!」


一人の男を、二人の仲のいい女の子たちが共有するこの絵面。

戦争とは程遠い平和な風景の中、リエルは……少しだけ寂しそうな笑顔を湛えるのだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )