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第二章 お見合い編
涼風
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「またえらいの連れてきたな」
「そうなの!すごい可愛いよねぇ」
「………………」
絶句する月宗様の方を向けば、笹音さんも恭さんも驚いた顔をしている。
「第一天衛が何故」
笹音さんは目を見開いたまま止まっている。
「第一天衛?」
「あぁ、天衛ってのは神の護衛を兼ねた側仕えの事だ」
月宗様が答えてくれる。
なんか六尺棒?長い棒みたいの持ってるもんね。涼風。
他の人達は刀だったり、もってなかったり、さまざまだった。
涼風は黒い、長い棒。竹刀ほど太くはなく、八角形の鉄の棒。
「壱ってのは、番号の1じゃない、序列一位という事だ。壱は天界神衛のなかで最上位の実力の持ち主という事だぞ」
「へぇ~」
「へぇって、おまえ……」
「神々がわざわざ壱を遣わしたということは、やはり今回の花嫁に相当のご寵愛があるのだろう」
笹音さんが興味深そうに言う。
「結衣、お前に指名で壱が当てがわれたか?」
「ん?ちがうよ?」
全員がアイコンタクトをしている。
「はぁ、ではやはりどちらがよりご寵愛を受けているのかはわからぬな」
恭さんが腕を組んで私を見る。
「両方だとも考えられる」
笹音さんも難しい顔をして答えるけれど、なんだかどんどん不安になってくる。
「結衣、そんな顔をするな。壱が心配している」
下を見やると私を見上げる涼風がいた。
布面で顔は見えないのに、心配する様子が伝わってくる。
「涼風、心配してくれたの?ありがとう」
小さな頭を撫でると、サラサラとした銀髪が心地いい。
「へぇ、涼風か。結衣に貰ったか。良い名だな」
月宗様はひょいと涼風を抱き上げ肩車をする。
はじめキョトンとした風だった涼風は、すぐにホワホワと嬉しそう。
何故か瞬時に黒い棒が消えていた。え?魔法かな。
「結衣、まだここにいるか?」
「あ、うん」
「青幽殿は結衣殿と初対面だったはず。何故そのように近い」
恭さんがずいと私の前に立つ。
「はぁ?教える訳ねぇだろ。男が恋バナ聞きたがるんじゃねーよ」
ビキビキッと音がするかのごとく青筋を立てた恭さんを宥めるかのように笹音さんが会話に入る。
「何をしたかは存じませんが、青幽殿が抜け駆けをしたとは思えません。結衣様、彼があなたに会いに馳せ参じていた事実はございますか?」
「え?無いですよ。名前だって今日初めて知りましたし……」
「ならば何故……!」
イライラとした態度を月宗様にぶつける恭さんに、月宗様は全く動じてない。
「気が合うんだろ、な?涼風」
手を伸ばしてキョトンとしている肩の上の涼風の頭をわしゃわしゃと撫でる。手が大きいから、涼風の頭はボサボサだ。
涼風は楽しそうにしているからいいけど。
「ここで喧嘩はおやめください。結衣様、桜子様は?お戻りになりませんが」
桜子はドアから出ていった。一度自室に戻ったんだろう。
「あ、妹は……着物が好きでは無いので……着替えに行ったのかと……」
生花の流派の本家の娘というのに桜子は着物をあまり好まない。
良家の子女が集まるパーティーとやらによく出席していたけれど、いつもドレス姿だった。
「お迎えに上がりましょう」
「俺も行こう」
笹音さんと恭さんが何故か嬉しそうに庭を出て行った。
「あいつら…………もう関係ねえのにわかってねえ…………ここが誰の持ち物だか思い出してみろってんだよ」
さっき消えた執事さんがメイドと共に現れて紅茶を入れ直してくれた。新しく、クッキーのお皿とスパークリングワインらしきものも追加される。
「どういう意味?」
メイドさんのてきぱきした様子を見やり、席につく。
月宗様の肩から降りた涼風は私の斜め後ろに立っている。
「はぁ~~~まずは糖分だ。あいつらといると疲れる。真面目とクソ真面目のコンビ」
どっちが真面目でどっちがクソ真面目かは謎だけど、なんとなくわかるような気がして、おかしい。
なぜか月宗様の前に大きなパフェが置かれて、よくある細長い持ち手の小さいスプーンではなく、オムライスを食べるような先の割れたデカデカとしたスプーンが用意されている。
私の前にも同じパフェのミニバージョンが置かれたけれど、私のスプーンはいつもの細長いものだったからマイスプーンなのかも。
「それ、食べ切れるの?生クリームモリモリだけど……」
「くう」
鋭い見た目とは裏腹に甘いもの、好きなのかな。可愛いな。この人がここに残ってくれて良かった。嬉しくて、こそばゆい。
「さっきの話」
すでに半分以上のパフェを食べた月宗様が、やっと落ち着いたのか話を戻した。
「俺らにも序列はある。当主の力の差はそうでもねぇけど、眷属としての差はある」
「差?」
「結衣、お前は八咫烏を神前に祀った社がどのくらいあるかわかるか?」
どのくらい?全然わからない。
狐はそのものが祀られている神社もたくさんあるし、狛犬なんてどこの神社にもいる。八咫烏は……。
毎月参る神社の儀式で、狐と狛犬の神社はいろんなところへ行かされたけれど、八咫烏はいつも1箇所の同じ神社だった。
「な?それだけ俺たちの一族は地位が低い。高いものから順に天に近い住まいを隠り世に持つ。今は龍が最も天に近く、狐と狛犬は同列という所だ」
「八咫烏は?」
「結衣達と同じ、地上に住んでるよ。隠してはあるが」
序列といわれてもピンとこない。
別に地上に住んでいることが悪いこととも思えない。
私達人間だってずっと地上だもの。
「そうなの!すごい可愛いよねぇ」
「………………」
絶句する月宗様の方を向けば、笹音さんも恭さんも驚いた顔をしている。
「第一天衛が何故」
笹音さんは目を見開いたまま止まっている。
「第一天衛?」
「あぁ、天衛ってのは神の護衛を兼ねた側仕えの事だ」
月宗様が答えてくれる。
なんか六尺棒?長い棒みたいの持ってるもんね。涼風。
他の人達は刀だったり、もってなかったり、さまざまだった。
涼風は黒い、長い棒。竹刀ほど太くはなく、八角形の鉄の棒。
「壱ってのは、番号の1じゃない、序列一位という事だ。壱は天界神衛のなかで最上位の実力の持ち主という事だぞ」
「へぇ~」
「へぇって、おまえ……」
「神々がわざわざ壱を遣わしたということは、やはり今回の花嫁に相当のご寵愛があるのだろう」
笹音さんが興味深そうに言う。
「結衣、お前に指名で壱が当てがわれたか?」
「ん?ちがうよ?」
全員がアイコンタクトをしている。
「はぁ、ではやはりどちらがよりご寵愛を受けているのかはわからぬな」
恭さんが腕を組んで私を見る。
「両方だとも考えられる」
笹音さんも難しい顔をして答えるけれど、なんだかどんどん不安になってくる。
「結衣、そんな顔をするな。壱が心配している」
下を見やると私を見上げる涼風がいた。
布面で顔は見えないのに、心配する様子が伝わってくる。
「涼風、心配してくれたの?ありがとう」
小さな頭を撫でると、サラサラとした銀髪が心地いい。
「へぇ、涼風か。結衣に貰ったか。良い名だな」
月宗様はひょいと涼風を抱き上げ肩車をする。
はじめキョトンとした風だった涼風は、すぐにホワホワと嬉しそう。
何故か瞬時に黒い棒が消えていた。え?魔法かな。
「結衣、まだここにいるか?」
「あ、うん」
「青幽殿は結衣殿と初対面だったはず。何故そのように近い」
恭さんがずいと私の前に立つ。
「はぁ?教える訳ねぇだろ。男が恋バナ聞きたがるんじゃねーよ」
ビキビキッと音がするかのごとく青筋を立てた恭さんを宥めるかのように笹音さんが会話に入る。
「何をしたかは存じませんが、青幽殿が抜け駆けをしたとは思えません。結衣様、彼があなたに会いに馳せ参じていた事実はございますか?」
「え?無いですよ。名前だって今日初めて知りましたし……」
「ならば何故……!」
イライラとした態度を月宗様にぶつける恭さんに、月宗様は全く動じてない。
「気が合うんだろ、な?涼風」
手を伸ばしてキョトンとしている肩の上の涼風の頭をわしゃわしゃと撫でる。手が大きいから、涼風の頭はボサボサだ。
涼風は楽しそうにしているからいいけど。
「ここで喧嘩はおやめください。結衣様、桜子様は?お戻りになりませんが」
桜子はドアから出ていった。一度自室に戻ったんだろう。
「あ、妹は……着物が好きでは無いので……着替えに行ったのかと……」
生花の流派の本家の娘というのに桜子は着物をあまり好まない。
良家の子女が集まるパーティーとやらによく出席していたけれど、いつもドレス姿だった。
「お迎えに上がりましょう」
「俺も行こう」
笹音さんと恭さんが何故か嬉しそうに庭を出て行った。
「あいつら…………もう関係ねえのにわかってねえ…………ここが誰の持ち物だか思い出してみろってんだよ」
さっき消えた執事さんがメイドと共に現れて紅茶を入れ直してくれた。新しく、クッキーのお皿とスパークリングワインらしきものも追加される。
「どういう意味?」
メイドさんのてきぱきした様子を見やり、席につく。
月宗様の肩から降りた涼風は私の斜め後ろに立っている。
「はぁ~~~まずは糖分だ。あいつらといると疲れる。真面目とクソ真面目のコンビ」
どっちが真面目でどっちがクソ真面目かは謎だけど、なんとなくわかるような気がして、おかしい。
なぜか月宗様の前に大きなパフェが置かれて、よくある細長い持ち手の小さいスプーンではなく、オムライスを食べるような先の割れたデカデカとしたスプーンが用意されている。
私の前にも同じパフェのミニバージョンが置かれたけれど、私のスプーンはいつもの細長いものだったからマイスプーンなのかも。
「それ、食べ切れるの?生クリームモリモリだけど……」
「くう」
鋭い見た目とは裏腹に甘いもの、好きなのかな。可愛いな。この人がここに残ってくれて良かった。嬉しくて、こそばゆい。
「さっきの話」
すでに半分以上のパフェを食べた月宗様が、やっと落ち着いたのか話を戻した。
「俺らにも序列はある。当主の力の差はそうでもねぇけど、眷属としての差はある」
「差?」
「結衣、お前は八咫烏を神前に祀った社がどのくらいあるかわかるか?」
どのくらい?全然わからない。
狐はそのものが祀られている神社もたくさんあるし、狛犬なんてどこの神社にもいる。八咫烏は……。
毎月参る神社の儀式で、狐と狛犬の神社はいろんなところへ行かされたけれど、八咫烏はいつも1箇所の同じ神社だった。
「な?それだけ俺たちの一族は地位が低い。高いものから順に天に近い住まいを隠り世に持つ。今は龍が最も天に近く、狐と狛犬は同列という所だ」
「八咫烏は?」
「結衣達と同じ、地上に住んでるよ。隠してはあるが」
序列といわれてもピンとこない。
別に地上に住んでいることが悪いこととも思えない。
私達人間だってずっと地上だもの。
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