10 / 71
第二章 お見合い編
花嫁と序列
しおりを挟む
「俺たち八咫烏は他の眷属に比べて力がない。だから一度も嫁御を迎えた事がない」
「?うん?」
月宗様はパフェの中のアイスを大きくすくって口に入れ、スプーンを咥えたまま話す。
「嫁御の気にいる洋風なドレスや宝石を用意してやれなかった。あいつらは、嫁取りのために自領に洋城まで建ててるからな。ドレスとか宝石とかは得意なんだよ。力のない質素なカラスは見向きもされなかった」
でもこの洋館は月宗様の物だといっていたし、身につけているスーツや時計もブランド物だと一目でわかる。質素というイメージはこの人からは感じられない。
今は違うのだろうか。
「俺はお前に会う為に頑張ったぞ」
「私?当主になった事?」
「ん。青幽と聞いて、思い出すことはあるか?」
セイユウ?何だろう。謎かけ?
「あれ?セイユウ財閥??」
「ん。後ろ盾のない俺が当主になるには手っ取り早く金が必要だったからな。俺が作った」
現代で財閥は存在しないけれど、青幽グループはここ数年で大きくなった会社で、ITから不動産、ホテル業までグループ化してのし上がった様が財閥のようだといってSNSを中心に名前が広がった。今や就職したい会社No.1だったはずだ。
「ええ…………」
何と言ったらいいのか分からない。すごいね、も違う気がするし、私の為にありがとう?も違う気がする。
「す、涼風、クッキーたべる?」
気まずくて、わたわたと別の話題をふったけれど、涼風はフルフルと首を振る。
あれ?おかしいな、さっきはお菓子たべるってうなずいたのに。
「天衛は物は食べない。気にしなくていい」
「あ、うん……」
「もうお前に辛い思いはさせない。贈り物全てに結衣のイニシャルを入れさせてある。そんな事させないけど万が一桜子がとりあげても、もっといいのを買ってやる」
「桜子のにも、イニシャルが?」
「うん?そーいえばなんの指示もしてねぇな。あいつのには」
当たり前だけれど、桜子にも月宗様からのプレゼントは送られている。
きっと部屋にたくさんのプレゼントが置かれているのだろう。
私だけじゃない。私だけ特別なわけじゃない。
すごく大切に優しくしてくれるけれど、桜子と平等。
気を抜いたらドンドン気持ちは溢れてくるというのに、彼はただただ私達を平等に見ようとしてくれているだけかもしれない。
「結衣?どうした?」
「なんでもない」
◇◆◇
晩餐まで少し休めと、自室としてあてがわれた部屋に案内された。執事のお爺さんが手際良く部屋の説明をしてから下がっていった。
日当たりがよく、お庭がよく見える。
天蓋のついた大きなベッドに、猫脚のドレッサー。ドレッサーには有名ブランドの化粧品が並んでる。
ソファーとテーブルには所狭しと3人からのプレゼントの箱が並び、メイドが2人、手に花束を持ち控えている。
「花瓶に入れ替えてもようございますか?」
年かさのメイドさんが私に聞く。
花柳院の娘なのに、切り花は苦手だ。
枯れていく様を見ていくようで。
怪我をした花の命の灯火を見ているようで。
曖昧にうなずくと、二人とも下がっていった。
部屋のプレゼントをよく見ると、3つの山にされている事がわかる。
妖狐、狛犬、八咫烏、三者からのプレゼントとして贈り主ごとに分けてくれているのだろう。
無意識に月宗様からのプレゼントを探してしまう。
家紋が全てに入っていると言っていた。
よく見るとリボンに焼きごてで刻印してあったり、ボックスや袋に密蝋で家紋があったりと分かりやすい。
————八咫烏。三つ足のカラス。
鷹のようにも見える大きなカラスの紋。すぐに見つけて、1番大きな箱のリボンを解く。
月宗様から贈られたプレゼントの山だけやけにラッピングにリボンが多い。
綺麗なサテンのリボンに、ジャガード織のもの。絹のものや、刺繍がなされたもの。ビーズや宝石がついているリボンまであった。
胸が苦しい。
彼のことを思うと胸が苦しい。
恋って、ドキドキしたり、キュンキュンしたりするものだと思ってた。
全然違う。
想いが溢れて、いっぱいになって、息が苦しい。
「リボン、覚えててくれた……」
小さく囁いて涙を追い出す。
ドアの外にいた涼風が、気配を察したのか慌てて部屋に入ってきて私の顔を見上げる。
「う゛~~~~~~」
リボンをかかえ、うずくまった私の頭をオロオロと撫でる小さな手が心地いい。
「?うん?」
月宗様はパフェの中のアイスを大きくすくって口に入れ、スプーンを咥えたまま話す。
「嫁御の気にいる洋風なドレスや宝石を用意してやれなかった。あいつらは、嫁取りのために自領に洋城まで建ててるからな。ドレスとか宝石とかは得意なんだよ。力のない質素なカラスは見向きもされなかった」
でもこの洋館は月宗様の物だといっていたし、身につけているスーツや時計もブランド物だと一目でわかる。質素というイメージはこの人からは感じられない。
今は違うのだろうか。
「俺はお前に会う為に頑張ったぞ」
「私?当主になった事?」
「ん。青幽と聞いて、思い出すことはあるか?」
セイユウ?何だろう。謎かけ?
「あれ?セイユウ財閥??」
「ん。後ろ盾のない俺が当主になるには手っ取り早く金が必要だったからな。俺が作った」
現代で財閥は存在しないけれど、青幽グループはここ数年で大きくなった会社で、ITから不動産、ホテル業までグループ化してのし上がった様が財閥のようだといってSNSを中心に名前が広がった。今や就職したい会社No.1だったはずだ。
「ええ…………」
何と言ったらいいのか分からない。すごいね、も違う気がするし、私の為にありがとう?も違う気がする。
「す、涼風、クッキーたべる?」
気まずくて、わたわたと別の話題をふったけれど、涼風はフルフルと首を振る。
あれ?おかしいな、さっきはお菓子たべるってうなずいたのに。
「天衛は物は食べない。気にしなくていい」
「あ、うん……」
「もうお前に辛い思いはさせない。贈り物全てに結衣のイニシャルを入れさせてある。そんな事させないけど万が一桜子がとりあげても、もっといいのを買ってやる」
「桜子のにも、イニシャルが?」
「うん?そーいえばなんの指示もしてねぇな。あいつのには」
当たり前だけれど、桜子にも月宗様からのプレゼントは送られている。
きっと部屋にたくさんのプレゼントが置かれているのだろう。
私だけじゃない。私だけ特別なわけじゃない。
すごく大切に優しくしてくれるけれど、桜子と平等。
気を抜いたらドンドン気持ちは溢れてくるというのに、彼はただただ私達を平等に見ようとしてくれているだけかもしれない。
「結衣?どうした?」
「なんでもない」
◇◆◇
晩餐まで少し休めと、自室としてあてがわれた部屋に案内された。執事のお爺さんが手際良く部屋の説明をしてから下がっていった。
日当たりがよく、お庭がよく見える。
天蓋のついた大きなベッドに、猫脚のドレッサー。ドレッサーには有名ブランドの化粧品が並んでる。
ソファーとテーブルには所狭しと3人からのプレゼントの箱が並び、メイドが2人、手に花束を持ち控えている。
「花瓶に入れ替えてもようございますか?」
年かさのメイドさんが私に聞く。
花柳院の娘なのに、切り花は苦手だ。
枯れていく様を見ていくようで。
怪我をした花の命の灯火を見ているようで。
曖昧にうなずくと、二人とも下がっていった。
部屋のプレゼントをよく見ると、3つの山にされている事がわかる。
妖狐、狛犬、八咫烏、三者からのプレゼントとして贈り主ごとに分けてくれているのだろう。
無意識に月宗様からのプレゼントを探してしまう。
家紋が全てに入っていると言っていた。
よく見るとリボンに焼きごてで刻印してあったり、ボックスや袋に密蝋で家紋があったりと分かりやすい。
————八咫烏。三つ足のカラス。
鷹のようにも見える大きなカラスの紋。すぐに見つけて、1番大きな箱のリボンを解く。
月宗様から贈られたプレゼントの山だけやけにラッピングにリボンが多い。
綺麗なサテンのリボンに、ジャガード織のもの。絹のものや、刺繍がなされたもの。ビーズや宝石がついているリボンまであった。
胸が苦しい。
彼のことを思うと胸が苦しい。
恋って、ドキドキしたり、キュンキュンしたりするものだと思ってた。
全然違う。
想いが溢れて、いっぱいになって、息が苦しい。
「リボン、覚えててくれた……」
小さく囁いて涙を追い出す。
ドアの外にいた涼風が、気配を察したのか慌てて部屋に入ってきて私の顔を見上げる。
「う゛~~~~~~」
リボンをかかえ、うずくまった私の頭をオロオロと撫でる小さな手が心地いい。
305
あなたにおすすめの小説
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!
水鈴みき(みすずみき)
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!?
※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり
賭けで付き合った2人の結末は…
しあ
恋愛
遊び人な先輩に告白されて、3ヶ月お付き合いすることになったけど、最終日に初めて私からデートに誘ったのに先輩はいつも通りドタキャン。
それどころか、可愛い女の子と腕を組んで幸せそうにデートしている所を発見してしまう。
どうせ3ヶ月って期間付き関係だったもんね。
仕方ない…仕方ないのはわかっているけど涙が止まらない。
涙を拭いたティッシュを芽生え始めた恋心と共にゴミ箱に捨てる。
捨てたはずなのに、どうして先輩とよく遭遇しそうになるんですか…?とりあえず、全力で避けます。
※魔法が使える世界ですが、文明はとても進んでとても現代的な設定です。スマホとか出てきます。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。
三月べに
恋愛
古川七羽(こがわななは)は、自分のあか抜けない子どもっぽいところがコンプレックスだった。
新たに人の心を読める能力が開花してしまったが、それなりに上手く生きていたつもり。
ひょんなことから出会った竜ヶ崎数斗(りゅうがざきかずと)は、紳士的で優しいのだが、心の中で一目惚れしたと言っていて、七羽にグイグイとくる!
実は御曹司でもあるハイスペックイケメンの彼に押し負ける形で、彼の親友である田中新一(たなかしんいち)と戸田真樹(とだまき)と楽しく過ごしていく。
新一と真樹は、七羽を天使と称して、妹分として可愛がってくれて、数斗も大切にしてくれる。
しかし、起きる修羅場に、数斗の心の声はなかなか物騒。
ややヤンデレな心の声!?
それでも――――。
七羽だけに向けられるのは、いつも優しい声だった。
『俺、失恋で、死んじゃうな……』
自分とは釣り合わないとわかりきっていても、キッパリと拒めない。二の足を踏む、じれじれな恋愛模様。
傷だらけの天使だなんて呼ばれちゃう心が読める能力を密かに持つ七羽は、ややヤンデレ気味に溺愛してくる数斗の優しい愛に癒される?
【心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。】『なろうにも掲載』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる