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第二章 お見合い編
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「我らに下賜されたあなた方花嫁は全ての妖から狙われると言っても過言ではありません。この屋敷にも結界はありますが、各当主が守る里に入られた方がより守りがききます。お試しに3人の里をそれぞれ回っても良いですし、気が変われば天衛におっしゃっていただければすぐに別の当主が迎えに参ります。妖狐、狛犬、八咫烏、少し難しいかもしれませんが龍国への希望も叶えてみせましょう」
境目屋敷に戻り、晩餐の席で笹音さんが私達二人に言う。
「ねぇ、誰のお嫁になるのかいつまでに決めなきゃいけないの? なんだかずっと決めなくてもオッケーな口ぶりね?」
「おっしゃる通り、いつまでにとの決まりはありません。お一人に決められたらそこで奪い合いが終わるというだけの事。他の妖からも狙われる事は無くなります」
「ふぅん」
スパークリングワインを飲み干した桜子のグラスに天衛の382番がおかわりを注ぐ。
涼風は隅に敷かれたペルシャ絨毯の上でぺたんと座り今日買ってもらった積み木で一人遊びをしている。
積み木のカタカタという小さな音だけが部屋に響く。
「襲われるって、なぜ?まさか花嫁の血や肉を食らう事で力をもらえるわけじゃないんでしょう?私達、何もおしえてもらってないのよ。当事者なのに」
「血や肉で力を得るわけではない事は確かですが、我々が力を付けることをよく思わない者達は手段を選ばないということです」
笹音さんが眉をひそめて嫌そうな顔をし、恭さんが続ける。
「眷属の嫁取りは約600年前から始まったと言われている。我らとて多くの情報があるわけではないが……龍国に2回、妖狐とうちに一度ずつ花嫁を迎えている。二度目の嫁取りで龍国の宗主が花嫁を喰らい、神の怒りに触れた歴史がある。その時は何の力も得られなかったと各一族に神と龍族連盟の啓示まであった。その事実だけが全てだ」
私の不安な気持ちを感じ取ったのか涼風が膝によじ登りちょこんとすわった。手には三角の積み木が握られていて、私に手渡してくる。元気づけようとしてくれているのがわかって心が温かくなる。
一番の不安も、ここで聞いてしまおう。
涼風を抱きしめて、勇気をもらおう。
「も、もしも私達二人の希望が被ったらどうなるの?」
「花嫁は一人だけだ。二人も同時に娶る事はない」
月宗様が険しい顔で答え、補足する様に笹音さんが話し出した。
「お二人が同じ当主の元で過ごす事は可能でございますが、お二人同時に一つの一族に嫁入りをする事は出来ません……。その場合は、宗主自らがどちらかを選ぶ事になりますが、その様な事例は未だあった事はございません。そもそもお二人同時の花嫁候補が過去にあったかどうかも定かでは無いのです」
嫁取りは眷属への褒章とされているけれど神々のエンタメ的な要素も強いと聞いたことがある。
いろんな情報がない中でどの眷属がお嫁さんを得るのか天界で見ているのかもしれない。
「 拝神の儀も済んだ。どの一族の元に行っても一月に一度はここで全員が集まる。そんなに深く考えなくともよい。どの一族も今回選ばれなかったといって諦めるつもりもない」
恭さんが桜子に向かって言う。
「ふぅん…………考えておくわ?今日は疲れたの。笹音、部屋に送ってくれる?」
「喜んで」
笹音さんと桜子が出て行った扉の先の廊下に妖狐一族の男の人達が数人見えた。笹音さんの臣下なのだろう。皆狩衣姿で武器は持ってない。
テラスに続くガラス扉の向こうには狛犬の隊士達が警備にあたっているのが見える。フサフサの尻尾と狐さんほど尖ってはない耳があり、皆軍服を着ていて帯剣しているのですぐわかる。
「結衣殿、警備の者も好きに使ってくれて構わない。我々はここや里に貴方達を閉じ込めるつもりはないが、成婚がなされるまでは身の危険がある事だけは知っておいてもらいたい」
「あ、はい」
そんなに危険なんだろうか。
これからの事が急に不安になってくる。
「学府は当分休みなんだろ?」
月宗様が静かに私に聞く。学府という言い回しに、返事がワンテンポ遅れてしまう。
「大学…………う、うん。今は春休みに入ったばかりだから2ヶ月間はおやすみだよ」
「学府?もうそんな所は行く必要は無い。俺達がいるし、そもそも危なすぎる!」
私と月宗様の会話を聞いて呆気にとられた顔をした恭さんがいう。
「え……っと……」
「桜子殿もか!?」
「桜子は……短大の方だったからもう卒業式だけ…………です」
あからさまにホッとした顔をする恭さんに何と返事をしたらいいのか分からない。
「いい。結衣、お前は自由にしていて良い」
————「我らがおります故ご安心なされよ、天道寺殿」
月宗様の背後にいきなり光久さんが現れて驚く。恭さんも驚いたらしくガタンと椅子から立ち上がった。
「こちらでも隊士を編成する。今日はこれで失礼する」
怒った様にそう言って、庭に続く扉から外に出て行った。
————「持ってはる器、みんな小さいのんやろか、天道寺はん」
お、おう、京都人の嫌味怖い。
雲雀くんは敵に回したくない……。
「俺が護衛についてもいい~~?お兄さんキャンパスライフ楽しみ!!」
「てか涼風一人いれば事足りるんじゃ…………」
涼さんと小四郎くんもいる。
みんな黒いスーツ姿、圧がすごい。
割と人見知りだったのに、月宗様の臣下達は皆あったかいからか安心する。
「結衣、気にするな。涼風も俺らもいる」
何でも無い様に余裕な態度でワインを飲む月宗様の膝に涼風が移動して行った。
テーブルの下を通ってヨジヨジと登る恐竜くんを月宗様は何にも言わず好きにさせてる。
この人の、こういう所が好きだなと思う。
笹音さんや恭さんが同じことをされたら嫌がるに違いない。
小さな涼風の手に握られた積み木を見て目を細める彼を、痛いほどの思いで私が見つめているなんて誰も気がついていない。
境目屋敷に戻り、晩餐の席で笹音さんが私達二人に言う。
「ねぇ、誰のお嫁になるのかいつまでに決めなきゃいけないの? なんだかずっと決めなくてもオッケーな口ぶりね?」
「おっしゃる通り、いつまでにとの決まりはありません。お一人に決められたらそこで奪い合いが終わるというだけの事。他の妖からも狙われる事は無くなります」
「ふぅん」
スパークリングワインを飲み干した桜子のグラスに天衛の382番がおかわりを注ぐ。
涼風は隅に敷かれたペルシャ絨毯の上でぺたんと座り今日買ってもらった積み木で一人遊びをしている。
積み木のカタカタという小さな音だけが部屋に響く。
「襲われるって、なぜ?まさか花嫁の血や肉を食らう事で力をもらえるわけじゃないんでしょう?私達、何もおしえてもらってないのよ。当事者なのに」
「血や肉で力を得るわけではない事は確かですが、我々が力を付けることをよく思わない者達は手段を選ばないということです」
笹音さんが眉をひそめて嫌そうな顔をし、恭さんが続ける。
「眷属の嫁取りは約600年前から始まったと言われている。我らとて多くの情報があるわけではないが……龍国に2回、妖狐とうちに一度ずつ花嫁を迎えている。二度目の嫁取りで龍国の宗主が花嫁を喰らい、神の怒りに触れた歴史がある。その時は何の力も得られなかったと各一族に神と龍族連盟の啓示まであった。その事実だけが全てだ」
私の不安な気持ちを感じ取ったのか涼風が膝によじ登りちょこんとすわった。手には三角の積み木が握られていて、私に手渡してくる。元気づけようとしてくれているのがわかって心が温かくなる。
一番の不安も、ここで聞いてしまおう。
涼風を抱きしめて、勇気をもらおう。
「も、もしも私達二人の希望が被ったらどうなるの?」
「花嫁は一人だけだ。二人も同時に娶る事はない」
月宗様が険しい顔で答え、補足する様に笹音さんが話し出した。
「お二人が同じ当主の元で過ごす事は可能でございますが、お二人同時に一つの一族に嫁入りをする事は出来ません……。その場合は、宗主自らがどちらかを選ぶ事になりますが、その様な事例は未だあった事はございません。そもそもお二人同時の花嫁候補が過去にあったかどうかも定かでは無いのです」
嫁取りは眷属への褒章とされているけれど神々のエンタメ的な要素も強いと聞いたことがある。
いろんな情報がない中でどの眷属がお嫁さんを得るのか天界で見ているのかもしれない。
「 拝神の儀も済んだ。どの一族の元に行っても一月に一度はここで全員が集まる。そんなに深く考えなくともよい。どの一族も今回選ばれなかったといって諦めるつもりもない」
恭さんが桜子に向かって言う。
「ふぅん…………考えておくわ?今日は疲れたの。笹音、部屋に送ってくれる?」
「喜んで」
笹音さんと桜子が出て行った扉の先の廊下に妖狐一族の男の人達が数人見えた。笹音さんの臣下なのだろう。皆狩衣姿で武器は持ってない。
テラスに続くガラス扉の向こうには狛犬の隊士達が警備にあたっているのが見える。フサフサの尻尾と狐さんほど尖ってはない耳があり、皆軍服を着ていて帯剣しているのですぐわかる。
「結衣殿、警備の者も好きに使ってくれて構わない。我々はここや里に貴方達を閉じ込めるつもりはないが、成婚がなされるまでは身の危険がある事だけは知っておいてもらいたい」
「あ、はい」
そんなに危険なんだろうか。
これからの事が急に不安になってくる。
「学府は当分休みなんだろ?」
月宗様が静かに私に聞く。学府という言い回しに、返事がワンテンポ遅れてしまう。
「大学…………う、うん。今は春休みに入ったばかりだから2ヶ月間はおやすみだよ」
「学府?もうそんな所は行く必要は無い。俺達がいるし、そもそも危なすぎる!」
私と月宗様の会話を聞いて呆気にとられた顔をした恭さんがいう。
「え……っと……」
「桜子殿もか!?」
「桜子は……短大の方だったからもう卒業式だけ…………です」
あからさまにホッとした顔をする恭さんに何と返事をしたらいいのか分からない。
「いい。結衣、お前は自由にしていて良い」
————「我らがおります故ご安心なされよ、天道寺殿」
月宗様の背後にいきなり光久さんが現れて驚く。恭さんも驚いたらしくガタンと椅子から立ち上がった。
「こちらでも隊士を編成する。今日はこれで失礼する」
怒った様にそう言って、庭に続く扉から外に出て行った。
————「持ってはる器、みんな小さいのんやろか、天道寺はん」
お、おう、京都人の嫌味怖い。
雲雀くんは敵に回したくない……。
「俺が護衛についてもいい~~?お兄さんキャンパスライフ楽しみ!!」
「てか涼風一人いれば事足りるんじゃ…………」
涼さんと小四郎くんもいる。
みんな黒いスーツ姿、圧がすごい。
割と人見知りだったのに、月宗様の臣下達は皆あったかいからか安心する。
「結衣、気にするな。涼風も俺らもいる」
何でも無い様に余裕な態度でワインを飲む月宗様の膝に涼風が移動して行った。
テーブルの下を通ってヨジヨジと登る恐竜くんを月宗様は何にも言わず好きにさせてる。
この人の、こういう所が好きだなと思う。
笹音さんや恭さんが同じことをされたら嫌がるに違いない。
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