21 / 71
第二章 お見合い編
赤福
しおりを挟むレレさんとマキノさんの楽しそうな声で目が覚めると、もう日は高い。昨日がよほど疲れたのか寝坊したみたいだ。別に何の用事があるわけでもないけれど。
「涼風お願い聞いてくれてありがと~~~!メッチャいい!!超イケメン!!」
「あらあらうふふふ、これ、いいわね」
私が起きたのに気がついたのか、涼風が私の腕に飛び込んできた。
「ひ、ヒヨコ!?」
黄色いフサフサの毛足の着ぐるみ。おでこの部分にキャップのつばの様にオレンジのクチバシがあり、その上に黒い可愛い目が刺繍されていて、小さなヒヨコが爆誕している!!!
袖の部分はヒヨコの羽のようになっていてまんまるなフォルムに悶絶してしまう!!
「レレさん天才です!!」
「お嬢様も気に入ってくださると思ってました!!最高です!!この仕事勝ち取って良かった!!!」
「お嬢様も涼風も着せ甲斐がありますからねぇ、侍女冥利につきますねぇ」
そうかな?涼風はそうだけれど。
でも嬉しいな。
「あと少しで皆さんとのランチがありますし、朝食は軽めになさいますか?」
「あ、お茶だけいただけますか?昨日お土産に赤福を買ってきたんです。みんなで食べませんか?」
「おぉ~~~!イイっすね!レレが最高級の玉露を淹れます!!たしか狐の野郎からのプレゼントにありました!!」
「涼風も、たべる?」
涼風はいつもどおりフルフルと顔を横に振る。
「天衛は物を食べませんよ?気遣いはいりません」
それは知ってる。
知ってるんだけど、赤福を売る老舗のお団子屋さんに興味深そうに顔を向ける涼風の為に買ったのだ。
——食べなくとも、興味がある?
——匂いかな。
——それとも鑑賞用?
ふと思い立って、マキノさんにお願いをする。
「マキノさん、巫女装束の準備をお願いできますか」
「承知致しました」
仕事のできるマキノさんは理由を一切聞かずにすぐに準備をしてくれた。
長い髪をレレさんが白い絹のリボンで一つにまとめ、巫女の正装が出来上がっていく。
「三方を」
三方は神様に捧げ物をする時に使うお盆のことだ。
足がついていて、20センチほどの高さがあり、お米やお酒を置くのに使う。
「すぐに手配します!!!」
バビュンと音がするかと思うほどの速さで部屋を出たレレさんは、私の着付けが終わる頃に大中小の三方を用意してくれた。
シゴデキ。
「祭壇を別室にご用意致しますか?」
私が何をするのか大体察してくれたらしいマキノさんが聞く。
「ううん、いいの。テーブルに人数分のお茶とお皿をお願いします。あとは私がやるから」
四人が座れる丸テーブルにマキノさんがお皿を出していき、レレさんが涼風用の椅子に分厚い本を置いて高さを調整してくれた。
「涼風、おいで」
キョトンとしたひよこを抱っこして椅子に座らせ、目の前にお茶と赤福の乗った三方を静かに置く。
私が涼風の正面の床に正座して平伏すると、マキノさんとレレさんも背後に同じ様に座ってくれた。
「恐み恐みも白す。
日々の御守護により今日の安らぎを得しこと、
心より感謝申し上げ奉る」
涼風がビックリしない様、優しい柔らかい声を意識する。
何となくだけど、そうした方がいいような気がして。
————パンッ!!!
柏手を打つ音がして顔を上げると、手を合わせたヒヨコ君を取り巻くようにやわらかな風が吹いている。
布面がフワリと上にあがり、可愛いお顔が見えた。
「び、美少年…………!」
レレさんの呟きが小さく聞こえた。本当に可愛らしいお顔。キラキラした薄緑の目に長いまつ毛で影ができている。
三方に乗せた赤福と玉露から湯気のような淡く光る白い煙が上がって、小さな可愛いお口に吸い込まれていく。
「食べてくれた!!!」
嬉しくて思わず声が出て、涼風に駆け寄り頭を撫でると、すぐに私の腕の中におさまり嬉しそうにする。
「ひめしゃま」
「声まで可愛い!!」
レレさんが叫び、マキノさんが呆気に取られた顔をする。
「喋るって聞いてましたけどマジでしたね~~~!!前代未聞!!」
「私達もいただきましょうか。月宗様いっぱい買ってくれちゃって何箱もあるんです…………」
————「はえ~お姫さん、自分凄いなぁ」
席につこうとした時窓の外から声がしてテラスを見ると、テラスの柵に雲雀君がしゃがんでる。すっごいバランス感覚!
「ここは男子禁制ですわよ、雲雀殿」
マキノさんがピシャリと言う。
「だからここまでやんか。固いこと言わんといて。それ、僕にくれへんかなぁ」
「赤福?いいよ?まだ新しい箱沢山あるの。持って行って?」
私が言うと、にっこり笑った雲雀君が涼風の分を指差して言う。
「ちゃうちゃう、涼風のお下がりを貰いたいねん」
涼風は煙の様なものを吸い込んだだけで、赤福もお茶も一応きれいなままそこにある。
「??多分涼風のご飯はもう終了だから大丈夫だけど…………新しいの、あるのに……」
「お姫さん、自分どんだけ凄いことしたかわかってへんやろ。これ、他の人の前でしたらあかんで?約束してや?」
「??よくわからないけど分かったよ?みんな涼風にご飯あげたくなっちゃうもんねぇ」
「………………」
にっこり笑った雲雀君は、三方ごと涼風の分を持ってどこかに消えた。シュバって消えた。
うんあれだな。八咫烏は忍者なのかも。
295
あなたにおすすめの小説
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!
水鈴みき(みすずみき)
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!?
※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり
賭けで付き合った2人の結末は…
しあ
恋愛
遊び人な先輩に告白されて、3ヶ月お付き合いすることになったけど、最終日に初めて私からデートに誘ったのに先輩はいつも通りドタキャン。
それどころか、可愛い女の子と腕を組んで幸せそうにデートしている所を発見してしまう。
どうせ3ヶ月って期間付き関係だったもんね。
仕方ない…仕方ないのはわかっているけど涙が止まらない。
涙を拭いたティッシュを芽生え始めた恋心と共にゴミ箱に捨てる。
捨てたはずなのに、どうして先輩とよく遭遇しそうになるんですか…?とりあえず、全力で避けます。
※魔法が使える世界ですが、文明はとても進んでとても現代的な設定です。スマホとか出てきます。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。
三月べに
恋愛
古川七羽(こがわななは)は、自分のあか抜けない子どもっぽいところがコンプレックスだった。
新たに人の心を読める能力が開花してしまったが、それなりに上手く生きていたつもり。
ひょんなことから出会った竜ヶ崎数斗(りゅうがざきかずと)は、紳士的で優しいのだが、心の中で一目惚れしたと言っていて、七羽にグイグイとくる!
実は御曹司でもあるハイスペックイケメンの彼に押し負ける形で、彼の親友である田中新一(たなかしんいち)と戸田真樹(とだまき)と楽しく過ごしていく。
新一と真樹は、七羽を天使と称して、妹分として可愛がってくれて、数斗も大切にしてくれる。
しかし、起きる修羅場に、数斗の心の声はなかなか物騒。
ややヤンデレな心の声!?
それでも――――。
七羽だけに向けられるのは、いつも優しい声だった。
『俺、失恋で、死んじゃうな……』
自分とは釣り合わないとわかりきっていても、キッパリと拒めない。二の足を踏む、じれじれな恋愛模様。
傷だらけの天使だなんて呼ばれちゃう心が読める能力を密かに持つ七羽は、ややヤンデレ気味に溺愛してくる数斗の優しい愛に癒される?
【心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。】『なろうにも掲載』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる