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第二章 お見合い編
うつし世のデート2
「あぁいう襲撃はなくならない。守れるけど、見たくないものは見てしまう」
人気のまばらなホテルのラウンジ。運ばれてきたアフターヌーンティーセットで一息ついた時に月宗様が言う。
基本的に嫁取りの情報は私達には何も教えられていなかった。ただただ選ばれて、お見合いをしただけ。
「うん……知らなかったことが多すぎてどうすればいいか分からないってのが今の正直な所」
「俺達だって過去の花嫁の事や歴史を調べることも、記録に残す事も禁じられてる。多分だが、その時その時の宗主の裁量を見られている」
情報がない中でどんな動きをするかを神様達は見ているということだろうか。
「頻繁にあることじゃない。前回と比べても時代も常識も変わる。学府に通う花嫁なんて初だしな。俺達カラスは現世の生活に詳しいが、犬っころはびっくりしていただろ」
そうだった。恭さんは私が大学に通っていることに驚いてた。
広いフワフワのソファーで私の隣にぺたんと座り、ポシェットに三角と四角の積み木を何度も出し入れしている涼風の頭を撫でて考えをまとめようとするけれど、何が良くて何が悪いのかも分からない。
「大学は……卒業したい」
「わかってる。結衣の好きにしたらいい」
「バイト…………は、やめた方がいいよね?」
「何の為に働いていた?花柳院は傾きかけていたとはいえ、あの兄貴が来てからは持ち直してるはず」
「学費の心配は無かったんだけど……」
私の携帯にはキャッシュレス決済にびっくりする値段がチャージされている。悠くんが自分の口座と紐付けてオートチャージされる様になっている。
月宗様は目線だけで続きを促す。
「悠くんのくれるお金を、使いたくなかったの」
「結衣、花嫁の一切合切は当主が持つのが当たり前だ。それも、嫌か?」
嫌か、と言われると月宗様なら嫌じゃない。
けれど笹音さんや恭さんだったらどうだろうか。
月宗様には甘えているんだろうか。
嬉しくて、ふわふわしてしまう。
「月宗様なら………………」
「他の奴にこの役を譲るつもりはないんでな、それでいい」
ウェイターが運んできたモリモリのチョコレートパフェを大きなスプーンですくってガツガツ食べながら言い、私もいるか?と聞いてくる。甘党な、カラスの党首。
◇◆◇
その後は私が寒そうという理由だけで何着もコートを買い、涼風の洋服に目がいく私の為に両手いっぱいの子供服をプレゼントされた。
「目に止まった物、全部買うの!?」
ニヤッと笑う彼が好きだ。
彼氏って言ってくれて、大切にしてくれる。
こんなに幸せでいいのか不安になる程。
駅前公園のイルミネーションなんて今まで素通りだったのに、月宗様と見るととたんに感動的なものに映る。
彼の肩のトートバッグ涼風が物珍しそうに手を伸ばすのを笑い合う、幸せな時間。
「暮れてきたな。腹減った」
「え?もう!?」
「晩飯も食ってこうぜ。里だとうるせえし」
まだデートが続くと分かっただけでこんなにも嬉しい。
「涼風をそろそろ自由に遊ばせてやりたいしな」
そう言ってどこかに電話をかけた。
長い指がスマホにかかるのを見るだけでドキドキする。
「さぁいくか」
ふわっと片手に抱かれて首にしがみつくと、反対側にいたトートバッグ涼風と思わず顔がコツンとぶつかってクスクスと笑う。涼風もぴょこぴょこしていて嬉しそう。
「何やってんだ、おまえら」
頭上から呆れた様な、でも優しい声が降ってくる。
——「「「「「お待ちしておりました」」」」」
また、いらっしゃいませじゃないんだなぁとぼんやり思いながら目を開けると、そこは大きな料亭の様だった。
お店までのアプローチにざっと左右に並んだ着物の人達。
「月宗、お前がここに女の子連れてくる日が来るとは……」
「夜臣、結衣が怖がるだろ、紹介する前に話しかけてんじゃねぇよ」
夜臣と呼ばれた人だけスーツ姿。
月宗様と砕けて話す人は初めてなのでびっくりする。
「結衣、まずは中に入るぞ、冷えただろ」
女将らしき人が先導し、私達の後に夜臣さんがつづく。
歩くたびに視界が黒くなって、月宗様の羽根に包まれていく。
「あの…………羽根っ……」
みんなに見られて平気なんだろうか。
術はかけたんだろうか。
「いいんだよ」
月宗様は上機嫌だ。
羽根の中で涼風が嬉しそうに揺れて、またおでこをくっつけて2人で遊んだ。
「おーおー隠してくれちゃって」
後ろから夜臣さんの声がするけど、幸せで、嬉しくて、涼風と手を繋いで月宗様に体を預けた。
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