眷属神の花嫁〜四当主の花嫁争奪譚〜神縁の行方

雨香

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第二章  お見合い編

央柱 類1

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「結衣、前にも言ったが……」

「はーい!他の人の前で涼風すずかぜご飯はしないよ!少食なのにみんなあげたくなっちゃうもんねぇ!」

「いや……そうじゃなくて……」

「四つ守さんと、レレさん達だけだよね?分かってる!」

「………………」

 なぜか呆れて黙った月宗様は窓を開け、ピューーーーーっと指笛を吹いた。

涼風すずかぜが不思議がって、自分もやろうと指をはむっとくわえたのを苦笑しておしぼりで拭いていると、黒いふわふわの塊がお部屋にバサバサバサっと飛び込んできた。

「月宗さまーー!!およびでしょうかーーー!」

「け、毛玉が喋った!!」

 黒いふわふわの毛玉。
着地に失敗して座布団に盛大にダイブしたあとニョキっと丸い羽根が出た。

「フクロウ?」

「ちがいます姫様!」

 涼風すずかぜがヒョイと持ち上げて滑り台から落とし、コロコロと転がり滑る毛玉を興味深そうに見ている。

「おやめください天衛てんえい殿!」

「あ~~~、類、お前は今日から結衣に付け」

「はいっっ!!!!!!!」

 元気いっぱいの黒いヒヨコ?が滑り台の下から私の元に向かって歩いてくる。鳥なのに、元気いっぱいに歩いてる。

るいは夜臣の弟だ」

「夜臣さんの…………?」

鳥だけれど…………………………。

「侍従として扱え。割となんでもできる」

「何でも言ってください!!」

鳥だけれど…………………………。

またヒョイと涼風すずかぜが類くんを持って行く。これは完全にボールだと思ってる。

天衛てんえい殿!ご無体な!!」

 武士みたいに喋るボール…………

花柳院かりゅういん結衣です。よろしくね?」

「姫様!お会いできて光栄です!!央柱おうばしら類と申します!!」

「類、そこの茶に何か感じるか」

「毒味ですか!!任せてください!!…………大丈夫です!何も入って無さそうです!!」

「そうか、お前が飲め。結衣が淹れた」

「なんと!宜しいのですか!御相伴に預かります!!!」

元気いっぱい武士だなぁ、可愛い。

「ムクドリ?」

八咫烏やたがらすです姫様!!」

カラス………………ってもっとシュッとしてるよね………………?

「カラスの子はまぁそんなもんだ。大人になると羽毛が生え変わる」

 あれ?人型じゃ無いのかな。
カラス型の八咫烏やたがらすは初めて会う。
なんとなく聞いちゃいけない話題な気がして口をつぐむ。

 丸い毛玉君はその場で少し浮き上がるとクルンとバク転した様に見えた。
するとその場にストンと降り立ったのは着物を着た可愛らしい黒髪の男の子。
おでこの出た短髪のツンツンした髪が子供らしい。

「姫様!頂きます!!」

「あ、うん、どうぞ?」

「美味しいです!ありがとうございます姫様!!」

しっかり正座をしてピシッと背筋が伸びたままお茶を飲む類くんを涼風すずかぜがツンツンと指でつつくというシュールな絵面。

「類、何か感じるか」

「美味しいです!!」

「そうか。良かったな」

月宗様はそう言って自分もお茶を飲んだ。

「本当に美味いな。誰に習った」

「母にだよ。お教室の生徒さんに出すお茶は、私の役目だったの」

 月宗様はへぇと小さく呟いた後、立ち上がって私を横抱きに抱き上げた。

「わわっ!何!?」

「類、今日この烏亭からすていで豆まきがあるってよ。涼風すずかぜ連れて行ってこい。板長率いる板前軍が鬼役だからこてんぱんにやってこい」

ぱぁぁあああっと笑顔になる類くんと、何のことやら分かってない涼風すずかぜが並び、お兄さんな類君が涼風すずかぜの手を握る。

「類と申します、涼風すずかぜ様、共に参りましょう!!!」

「ふふ、良かったねぇ涼風すずかぜ、類君と一緒にあそんでおいで?」

涼風すずかぜはテテテとかけていき、ポシェットを取るとまたかけて来て類君の手を握った。ワクワクしてるのわかっちゃうぞ!



◇◆◇



二人きりになって、月宗様はまたソファーに座る。
どんどん視界が暗くなって安心の匂いがする。

「俺の知らない結衣がたくさんあるな」

今日の月宗様の手は男じゃないのか、膝に抱いた私をガシッと抱きしめてくれている。
ずっとこのままならいいのに。

「お茶のこと?大したことじゃないし、大げさだよ」

「兄貴のことも、学府のことも」

「花嫁のことを調べるのは禁止なんでしょう?私だって、月宗様が優しかったあのお兄ちゃんって事しか知らなかったよ?」

「……………………そうだな」    

続き間は行燈あんどんの明かりしかなかったので、両羽根の間から月明かりが入る。

吐息が感じられる程に近く、あとほんの少し上を向けばキスになる距離。
お互い分かっているのにこの距離のままポツリポツリと話す。

数ミリの隙間がもどかしいと感じてしまう。
分かってほしくて首に擦り寄るけれど、一瞬ビクッとしただけで距離は縮まらない。

「月宗様…………」

体が熱くて、溶けてしまいそう。
月明かりに浮かぶ彼の夕陽色の瞳から目が離せない。

もどかしくて切なくて焦がれそうで、ギュッと握った彼のシャツをほんのちょっとだけ引き寄せた。

——スリと上唇をかすめるだけのキス

刹那みたいなその一瞬で月宗様がぐいと私を引き寄せて、深い深いキスに変わった。

首の後ろから撫でるように髪の中に手を添えて、キスの瞬間に指先にそっと力を込めて私を優しく引き寄せる。

「ん………………ふ……」

何度も繰り返される大人なキスに、彼にしがみつく事しかできない。
余裕なんてないのに、このままずっと続けばいいなとぼんやりと思ってしまう。

「俺は、お前が大切すぎて爆発しそうだ」

「ん、もっと……やめないで」

「キスだけで、妖力がどんどん入ってくる。自覚はあるのか」

「何…………?」

「麻薬かよこれ」

おしゃべりの時間がもどかしいのに、驚いた顔の月宗様はキスをやめてしまう。

「う~~~~~~~~~、もっと、して」

「これは俺ダメになるやつ…………」

羽根がしまわれ、部屋の明かりが戻ってくる。
大人なキスはおわったけれど、触れるだけのキスが沢山降ってきて心地よい。
まぶた、おでこ、頬に首、髪にも沢山。

「ん……何……」

「俺はカラスだぞ。カラスの愛情表現だよ」

「私も、してい?」

「…………………………………………また今度な。暴走カラスを止める自信がねぇ」

「??」

私もしたいのに。
抗議を込め頬にチュッとキスした所でスパァーーーンと気持ちいいぐらいの勢いで部屋の襖が開いた。

「月宗さまーーーーーーーーっ!!!」

「……………………類、そこになおれ」




















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